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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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忍び事

創太の祖母視点です。

 夜中のあの電話の後、一応少しは寝れたけど、結局あまり寝れなかった。

 それは武も恵子さんも同じみたいで、朝から2人ともとても眠そうにしている。


 いつもなら、恵子さんが創ちゃんを起こしに行っている時間。

 創ちゃんを起こす恵子さんの声と、創ちゃんを怒る武の声。

 いつも騒がしい朝は、今日はとても静かだった。


「あの後も一応創太に電話したんだけどさ、電源切ってあるっぽくて繋がらなかった」


 不意に武がそう言った。


「そう……」


 私はそれ以上何も言えない……


「あの女が電源切ったんだろうな」

「そうやって決め付けるのは良くないんじゃない? それに、あの人はそんなに悪い人じゃないと思うの」

「はぁ? そもそもなんで母さんはあの女を庇ってんだよ? 誘拐犯だぞ!」

「そ、それは……ほら、警察と知り合いみたいだから……」

「ったく……」


 武と恵子さんに気付かれずに電話をかけてと言われているし、夜中の電話の話はしない方がいいわよね。


「私は話してないから分からないけど、どんな女なの?」

「人をバカにしたような態度で喋る、嫌な女だよ」

「そんな事はなかったわ。とても親切で、創ちゃんの事も私達の事も気遣ってくれていたわ」

「あなたとお義母様の意見が違いすぎるんだけど……2人いるの?」

「そうかも知れねぇな」


 朝はそんな会話をして、2人とも仕事に行った。

 片付けをして、少し落ち着いたくらいの時間……

 私は昨日かかってきた電話番号にかけた。


「はい」


 電話に出てくれたのはやっぱりあの女の人だった。

 周りの音が少し反響して聞こえるし、向こうはスピーカーにしてくれてるのかしら?

 創ちゃんにも私の声が聞こえるように……?


「えっと、すみません。創太の祖母です」

「お婆様、ご連絡ありがとうございます。創太、出る?」


 電話に出るかを創ちゃんに聞いてくれているようね。

 でも創ちゃんの声は、聞こえない……

 声に出して返事はしてないみたい……


「すみません、まだ出たくないみたいで」

「そうですか……」

「創太君もなかなか恥ずかしがり屋さんですよね」

「え? そ、そうですか?」


 私が創ちゃんが出てくれない事に落ち込んでいると、女の人は創ちゃんの事を恥ずかしがり屋さんだと言った。

 創ちゃん、恥ずかしがってるの? だから出てくれないの?

 いえ、さすがにそんな訳ないわよね。

 普通に気まずいだけでしょう。


「あ、あの……創ちゃんは元気にしてますか?」

「うーん……そうですね……あまり元気ではないかもしれないですね」


 元気じゃない……それはそう、当然よね……

 昨日自殺なんて事をしようとしてたのに、元気なわけがないわよね。

 私は何を当たり前の事を聞いてしまったんだろう……


と、私が反省していると、


「目が大分疲れているみたいですね、創太君」


という、とてもピンポイントでの元気じゃないと判断した理由を言われた。


「目ですか?」

「目が疲れすぎているようで、私の事が男だか女だかの区別もつかなかったみたいですから」

「えっと……」


 この女の人、そんなに男女が分かりにくい見た目をしているのかしら?

 それとも、どこからどう見ても女性なのに創ちゃんが悩んだのかしら?

 それだったら確かに、創ちゃんの目は大分疲れてるのかも知れないけど……大丈夫かしら?


「そういえばお婆様、昨日はちゃんと寝れましたか?」

「え、えぇ……」


 私が言葉に困り、言い淀んでいたら、今度は私の心配をしてくれた。


「やっぱり、あんまりお休みになられていないようですね」

「少しは寝ましたよ」

「少しだと体にもよくないですよ。しっかり休んで下さいね。創太君なんてとても早くに寝たのに、起きたのは8時半ですよ。お寝坊さんですよね」

「まぁ、創ちゃんが……」


 そんなに寝坊するなんて……とも思ったけど、少し嬉しかった。

 いつも無理矢理起こされて、とても嫌そうに学校に行く創ちゃんを見ていたから。

 ゆっくり寝れたみたいで安心した。


「あ、あの……あなたのお名前を教えてもらってもいいですか?」

「すみませんが、私名前は名乗らない主義でして。なので創太君に名前をつけてもらいまして、創太君からは"ななさん"って呼ばれてます。お婆様もよろしければ、そうお呼び下さいね」


 名前は名乗ってくれなかったけど、武が言うような失礼な感じの態度ではなかった。

 多分この人にも何か事情があって、名乗れないんだろう。

 それに創ちゃんが"なな"って名前をつけたって……

 という事は創ちゃんとも結構仲良く話してるのよね?


「あの……ななさん」

「はい?」

「創ちゃんの事を、よろしくお願い致します」

「はい、もちろんです」


 結局最後まで創ちゃんは電話に出てくれなかった。

 でもだからって、落ち込んでる場合じゃないわね。

 ななさんも言っていたけど、創ちゃんに私達家族との繋がりがちゃんとあるんだって事を、分かってもらう事が大切なんだものね。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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