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創太視点です。
♪♪♪♪♪
また僕の携帯が鳴ってる。
一応誰からか確認……今度は母さんからだった。
もちろん出る気はない。
ななさんはずっとパソコンでカタカタやってる。
僕の携帯が鳴っているのに、気づいているのかいないのかは分からないけど、こっちを見もしない。
無表情で、単純に興味がないって感じだ。
もう大分日も落ちて暗くなってきた。
僕の携帯が鳴りやんだところで、ななさんに声をかけてみた。
「あの、夜ご飯は食べなくていいんですか?」
「ん? そうね、そろそろ食べましょうか」
僕が話しかけたら普通に顔を上げて、僕の方を見て会話してくれる。
「さっきと同じ要領でよろしくね」
「またあの辺に落ちてるやつですか?」
「そうそう」
もう一度チャック袋が落ちている辺りへ行き、物色する。
さっきの美味しかった鯛雑炊はもう見当たらなかった。
その代わりに蟹雑炊を見つけたので、僕はそれにする。
ななさんのは適当に拾ったらミネストローネだったので、それにした。
さっきと同じ要領で作って、飲み物も持っていく。
「ななさん、夜ご飯ですよ」
「ありがとう」
今回の蟹雑炊も滅茶苦茶美味しかった。
なんでこんなに美味しいんだろう?
商品化したら絶対買うな。
食器とかを片付けて、漫画の続きを読みに戻って来たら、
「創太、そろそろお風呂掃除して、沸かして来てくれる?」
と言われた。
「やり方、分かるかしら?」
「分かると思いますけど、掃除はあるものを適当に使っていいんですか?」
「ええ、よろしくね」
さっきまで僕の仕事は漫画を読んで、感想を具体的に伝えるだけだった。
ご飯も頼まれたんじゃなくて、僕から要求したし、やっと助手らしい仕事を頼まれた。
……助手らしいか?
「ななさん、お風呂沸けましたよ」
「そう……なら創太、入ってきなさい」
「え?」
「1番は掃除した人の特権だもの」
お風呂準備もできたし、ななさんを呼びに行ったら、先に入るように言われた。
そうは言われても、僕はここに無理矢理連れてこられたから、着替えも何もないし……
「あの、でも……」
「ああ、着替えとか気にしてるの? 着替えはあの辺の引き出しのを好きに使っていいし、洗面所に新品の歯ブラシとかもあると思うから、好きなように使いなさい」
言われた引き出しを開けると、男物の服とか沢山入ってた。
古着もあるし、新品もある……
洗面所の引き出しも適当に開けると、新品の歯ブラシや石鹸、シャンプーとかまで沢山おいてあった。
ホテルかここは?
本当に何のためのどういう家なんだろう?
今見た様子からだと、誰が来てもそれなりに生活出来る家って感じだろうか。
最初にななさんにここはあなたの家ですかって聞いた時に、ちょっと違うけど、そんな感じだと言っていた。
つまり、ななさんの家という訳ではないんだろうけど、ななさんがよく使ってる家って事だろう。
男物の服とかななさんに必用ないだろうし……
お風呂に入ろうとして、ふとななさんを見て思った。
ななさんって女だよな?
最初に自分でお姉さんって言ってたし、喋り方とか声とかで女性だと思ってたけど、よくよく考えたら女性が見ず知らずの男をいきなり部屋に入れるわけないよな?
それに、名前の時も太郎でもいいって言ってたし……
もしかしてななさんって男?
どうやって確認しようか?
いや、まぁ、別に確認しなくてもいいんだけど……
そうは思いつつ、ななさんの胸を遠くから見る。
うーん……胸、無いよな……
やっぱり男なんじゃ……
「創太? なに見てるの?」
「えっ……あー……」
洗面所からななさんを見ていた事に気付かれた。
どうしよう……なんて言えばいいんだろ?
「あ、あの……ななさんって女性ですよね?」
悩みすぎて、ど直球で聞いてしまった。
「おいこら創太。お前、どこ見たらそんな疑問が出てくんだ?」
「あーいやーそのー」
「創太……私だって泣きたい時はあるんだよ……」
「女性でした。間違いなく、女性でした。すみません、違うんです。あの……ごめんなさい……」
「謝らないでよ……私が惨めじゃない……」
僕はどうやらななさんを傷つけてしまったみたいだ。
ななさんは女で間違いなかった。
ごめんなさい……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




