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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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お昼ご飯

創太視点です。

 漫画を15巻まで読み終えた。

 まだ続きがあるけど、ずっと同じ姿勢で読んでいたから足が痛くなってきた。

 それにお腹も空いてきた。

 時計を見ると15時を過ぎていた。


 ななさんは変わらずずっとパソコンに向かっている。

 何か文字を入力しているようで、ずっとカタカタと音が響いている。

 タイピング滅茶苦茶早いし、凄い集中力だ。


 ななさん方へ行き、パソコン画面を覗いてみる。

 沢山の数字とアルファベットが表示されていた。

 よく見ると見たことない形の文字もあるな……

 アルファベットかと思ったけど、そうでもないみたいだ。

 どこかの国の言語か?


「何? 創太、読み終わったの?」


 僕が来たから気づいたのか、最初から気づいていたのか分からないけど、ななさんはパソコンに文字を打ちながら話しかけてきた。


「15巻までは読みました」

「そう。感想は?」

「面白かったです」

「そういう抽象的なのじゃなくて具体的に。何巻の何ページのどこがどうだったから面白かったの?」

「は?」


 また面倒なことを言い出したな……


「そうですね、7巻の何ページとかは忘れましたけど、真ん中の辺りの連れ去られた仲間を助けに行く所とか、12巻位の敵にやられそうになってギリギリで倒す所とかの主人公が、かっこいいなって思いましたよ」


 僕がそう言うとななさんは文字を打つ手を止めて、目を閉じ、


「7巻の真ん中……あぁ、あそこか……12巻の……」


と、ぶつぶつ呟き出した。

 自分の記憶を思い出してるみたいだ。


「なるほどね、参考になったわ。ありがとう」

「ななさんはこの漫画、読んだ事あるんですか?」

「全ページ見たことあるわ」


 変な言い方。

 普通なら全巻読んだ事あるって言うだろうに……

 まぁ、この人普通じゃないけど。


「あの、何で僕に漫画読ませたんですか?」

「何でって、最初に言ったでしょ? それを読んだ感想を教えてって言われてるけど、忙しくて読んでる時間ないって」


 確かに言われた。

 でもその理由は、ななさんが読んだことないのなら分かるけど、自分で内容知ってるんなら僕にわざわざ読ませる必要はない。


「ななさん内容知ってるんですよね? なら自分の感想で十分じゃないですか」

「内容は知らないわよ」

「え? でも今、見たことあるって……」

「ええ、見たことはあるのよ」

「そうなんですか」


 意味分かんないけど、あんまり聞いてもどうせ適当に返事をされるだけだから、もう聞くのはやめた。

 と、それよりお腹空いたんだった。


「あの、ななさん。お腹すいたんですけど……」

「そう、よかったわね」

「は? 何がですか?」

「そこ等辺になんか食べ物落ちてるでしょ? 好きなの食べていいわよ」

「落ちてるって……」


 ななさんが指差した辺りに行くと、チャック袋に入った四角い物体が沢山落ちていた。

 ひとつ拾ってみると、チャック袋に手書きで"フカヒレスープ"と書いてあった。


「食べ物ってこれですか?」

「そう、好きなの選びなさい。ついでに私の分もね、なんでもいいから」


 他の袋も拾ってみると、"鯛雑炊"や"チーズリゾットトリュフ風味"とかあった。

 中身は全部違うみたいで、聞いたこともない"フィスクスッペ"とか"スコッチブロス"とかもある。


 好きなの選びなさいって言われても……

 よく分かんないのは食べたくないし、僕は鯛雑炊とかにしよう。

 ななさんのはこのスコッチブロスでいいや。

 で、これどうやって食べるんだ?


「ななさん、とりあえず持ってきましたけど、どうやって食べるんですか?」

「あの辺にお椀あるから適当に使って。お湯を注げばいいわ。ポットはそこね」


 言われた通りお湯を注いだら、四角い物体が溶けて解れていく。

 インスタントの味噌汁みたいだ。

 でもちゃんとした袋に入ってなかったし、文字も手書きだった。

 ということは、今作ってる試作品って事か?

 ななさんはインスタント食品会社の人なのか?


「ななさん、これってインスタント食品なんですね。でも見たことないやつなんですけど」

「ええ、ちょっと知り合いにフリーズドライの研究をしてるのがいてね。試作品をくれるのよ」


 なら、ななさん本人がインスタント食品会社の人ではないんだな。

 じゃあ結局何者なんだろう?

 それを考えても答えは出ないので、もう考えないことにする。


「そういえば、飲み物……」

「あそこに冷蔵庫があるから、好きなの飲みなさい」

「ななさんは?」

「なんでもいいわ」


 なんでもいいばっかりだな。

 変なの混ぜてやろうか。

 そんなことも考えつつ冷蔵庫を開けると、手前にはペットボトルに入った飲み物、奥には瓶に入った濃い液体が入っていた。

 ペットボトルもチャック袋の時と同様に、手書きで"紅茶"とか"リンゴ"とか書いてある。


「奥にあるのは濃縮液だから、ちゃんと希釈済みのを飲みなさいね」


 僕が冷蔵庫を物色していたら、ななさんにそう言われた。

 普通の家には濃縮した紅茶は置いてないと思うけどな。

 あ、そういえばここ、普通の家じゃなかったんだった……

 玄関、住んでる人、おまけに食べ物、飲み物まで普通じゃないとか……

 まともな物が何にもないな。


 自分用に紅茶、ななさん用にコーヒーをグラスに注いで持っていく。

 丁度さっきお湯をかけた鯛雑炊とスコッチ何とかも食べれそうな感じになっていた。


「ななさん、できましたよ」

「あら、ありがと。じゃあご飯にしましょうか」

「ななさんはお腹空いてなかったんですか?」

「気がつけば空いてるわね。創太が気付いてくれて良かったわ」


 そう言って僕に笑顔を向けてくる。

 無茶苦茶で、名前も何も分かんなくて、意味分かんない事ばかり言ってくる。

 そんな変な人と、変な家での、変なご飯。

 でも、鯛雑炊は今まで食べた何よりも美味しかった。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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