動揺
創太の祖母視点です。
今日も朝から暗い顔で創ちゃんは家を出ていった。
きっと学校へ行きたくないのでしょうね。
でも今日はいつもより早く出ていったわね。
いつもなら、恵子さんに行け行けと急かされ、武に怒られてから行くのに……
私がもっと何かしてあげれるといいのだけれど……
今の私にできるのは精々、創ちゃんが快適に過ごせるように、部屋を掃除するくらいね……
そろそろ掃除をしようかと、創ちゃんの部屋へ向かおうとした時、
♪♪♪♪♪
何か鳴ってる音がした。
私の携帯だわ。
しかも創ちゃんからかかってきてる。
「はい、創ちゃん? この時間学校じゃないの?」
「初めまして、青島創太君のお婆様でお間違いないですか?」
創ちゃんだと思って電話に出たら、全然知らない女の人の声がした。
携帯の画面に表示されている番号を確認しても、やっぱり創ちゃんの携帯からかかってきてる。
創ちゃんが携帯を貸したって事?
「えっ、ええ……どちら様ですか?」
「現在、創太君をお預かりしているものです」
「はい?」
創ちゃんを預かってるって、どういう事?
そもそも創ちゃんは今学校にいるんじゃないの?
「失礼ですが、お婆様。今どちらにいらっしゃいますか?」
「今ですか? 家におりますが……?」
「創太君のお部屋へは行かれてませんか?」
「そろそろ、掃除をしに行こうかと思ってましたが?」
「でしたら、今向かっていただいて、机の上をご覧になって頂けますか?」
「はぁ、分かりました」
疑問には思いつつも、言われた通り創ちゃんの部屋へ行く。
たしか、机の上を見ろって……
「は? 遺書……何これっ! あのっ、あの……」
創ちゃんの机の上で見つけたのは、遺書とかかれた1枚のルーズリーフだった。
私は動揺も隠せず慌てて電話に戻った。
「あー、ご覧になられました?」
「そ、創ちゃんは?」
「先ほども申しましたが、現在私が預かっております」
預かってるって、そういう事だったのね……
つまり創ちゃんは今日、学校へは行かずに自殺しようとして、この女の人に保護されたのね……
「ぶ、無事なんですね……よかった……あ、あの……電話、創ちゃんに代わって頂く事は出来ませんか?」
「少々お待ち下さいね」
女の人が私にそう言うと、
「創太、電話出る?」
という声だけ聞こえた。
創ちゃんの声は聞こえない……
無事を確認したいし、せめて声だけでも……
「申し訳ございません。まだ話したくないようでして……」
「そ、そうですか……」
「また何かありましたら、ご連絡致しますので、失礼しますね」
「えっ……はい。すみません、お願いします……」
電話は切られてしまった。
聞きたいこととか山程あるけれどまとまってないし、もう一度かけるのも迷惑よね……
どのみち創ちゃんは出てくれないだろうから……
動揺が治まらない……
とりあえず武に連絡しないと……
♪♪♪♪♪
呼び出し音がずっと鳴ってるけど、なかなか出ない……
ど、どうしたら……
「なんだよ、母さん。仕事中に電話なんてしてきて。俺忙しいんだぞ」
「そ、そうね……ごめんなさい……」
武は出てくれたけど、少し怒ってる。
仕事中に電話してしまったものね……
武が仕事中だって事も考えれないくらい動揺していた。
「で? 何の用だよ」
「そ、創ちゃんの事なんだけど、今日学校に行かなかったみたいで……」
「は? で、あいつは何やってんだ?」
「それが、その……」
「だから忙しいんだって、早く言えよ」
「自殺しようとしてたところを、保護して下さった方から連絡が……」
「はぁ!? どういう事だ?」
「私も分からないんだけど、さっきそういう連絡があって……」
どういう事かなんて私が聞きたいわ。
確かに朝は暗かったけど、まさかそんな……
「で、創太は自殺してないんだな?」
「えぇ……」
「ったく、何やってんだアイツは! とりあえず仕事早めに切り上げて帰るから」
「そうね……お願いね……」
「恵子にも言っといてくれよ、じぁ」
そう言って武は電話を切ってしまった。
そのあと急いで恵子さんにも電話をかけたけど、恵子さんは出ない。
仕事中だから出られないのね。
もう何をどうしたらいいのかも分からないし、武が帰ってくるのを待つことにした。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




