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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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変な家

創太視点です。

 急に閉じ込められた変な家。

 漫画を読めとか言ってくる変な人、一応仮名でななさん。

 正直、どうしたらいいのか分からないし、他にやることもないので渡された漫画を読んでいる。


「へぇー、創太は□□高校の3年ねー。おっ、生年月日11月11日ね、ゾロ目じゃない」


 ななさんは僕の荷物から僕の学生証を見つけたようで、そんなことを呟いていた。

 自分の事は教えてくれない癖に、人の個人情報は簡単に知っていく……

 別にいいけど。


 数分経って、僕の荷物漁りに飽きたのか、ななさんはパソコンをやり始めた。

 特に話しかけても来ないし、そのまま僕も漫画を読み続けた。


 漫画なんて読んだこともなかったから、最初はよく分からなかったけど、段々と続きは気になってきた。

 1巻読み終えた時には自然に2巻に手がのびていて、3巻、4巻へとどんどん読んでいってしまった。

 8巻まで読み終えた時、


「それ、まだ続きあるからね」


そう言ってななさんが追加の漫画を持ってきた。

 さっきまでは夢中で読んでいたけど、そのななさんの声で少し冷静になれた。


 時計を見てみるともう11時30分だった。

 今僕、こんなことしてていいのか?

 そもそも何でななさんは、僕に漫画を読ませてくるんだ?


「あの、ななさんは僕に学校へ行けとか言わないんですか?」


 少し疑問に思っていたことを聞いてみた。

 助手にすると言った割には何の仕事もないし、ただ漫画を読まされているだけだし……

 普通なら、どうして学校に行かないのか? とか、何で自殺しようとしてたのか? とか、聞いてくるもんじゃないのか?


「行きたくないところには、行かなければいいのよ」

「え?」

「でもね、行かなければいけないところには、行きなさい」


 ななさんからの答えはよく分からない事だった。

 もともと変な人ではあるけど。


「行かなければいけない所ですか?」

「そう。それは創太が決めるのよ。創太にとって学校は何? 行かなければいけない場所なの?」

「それはそうですよ。親にも行けって言われるし……」

「それは親の意見でしょ。私が聞いているのは創太にとってはどうなのかって事よ」


 僕にとってとか言われても……

 学校は行きたくない場所でしかないけど……でも、


「僕も学校へは行かないとダメだとは思いますよ。勉強できないし……」

「そんなことはないわ。勉強なんて学校じゃなくったってできる。独学でだって何とでもなるんだから」

「でも、専門の教科書とか……」

「そんなものは図書館で借りれるわ」

「体育とかで計画的に体を鍛えたりとか……」

「それこそ、家でだって出来るわ」


 僕の意見を悉く潰してくる。

 何で学校に行きたくない僕が、学校に行くべきだと言っていて、行けと言うべきななさんが、行かなくていいみたいな事を言ってるんだろう……


 他にも学校へ行くべき理由を考えはしたけど、友達を作るためとか、集団生活で社会性を学ぶためとかしか思い付かなかった。

 そんな理由は学校で友達もいなくて、社会性もない僕がななさんに否定される前に否定できてしまう。


「じゃあ、ななさんは学校に行く必要性はないと言うんですか?」

「だから、そうやって私に意見を求めないの。それは創太が自分で決める事なんだって言ったでしょ?」

「そんなの分かんないですよ……」

「なら、今はそんなこと考えてないで、早くその本を読み終わりなさい」


 そうしてこの議論は打ち切られた。

 僕も漫画の続きが気になってるからいいけど。


 漫画をどんどんと読んでいって、ふと時計を見た。

 13時……もう昼過ぎだ……昼か……

 そういえば、今日はもう飛ぶと決めてたから、部屋に遺書も置いてきたんだった。

 こんなところで漫画を読んでる場合じゃない。

 早くしないと……


「あの、ななさん。僕こんなことしてる場合じゃないんですけど」

「何かあるの?」

「昼頃、婆ちゃんが部屋の掃除に来てくれるから……」

「あら、優しいお婆様ね」

「それで、机に遺書……置いといたから……そろそろ見ると思うし……だから、早く死んでニュースとかにならないと、婆ちゃんも安心出来ないし……」

「それこそ安心できないでしょっ!」


 僕にそう強く言ったななさんは、自分のパソコンを閉じてこっちに来た。


「ほら、電話!」

「は?」

「電話かけて、お婆様に」

「僕、話したくないんですけど」

「私が話してあげるから」

「何を話すんですか?」

「いいから、ほらっ」


 滅茶苦茶に急かされて、僕は婆ちゃんの携帯に電話をかけた。

 それをななさんがスピーカーに切り替える。


♪♪♪♪♪


 呼び出し音が鳴っている。

 婆ちゃんは普段あんまり携帯見ないからな……

 それにもう掃除を始めてたら、掃除音で聞こえないかも……

 僕がそんな事を考えていると、


「はい、創ちゃん? この時間学校じゃないの?」


婆ちゃんの声がした。

 ななさんは1度、僕の方を見てから、


「初めまして、青島創太君のお婆様でお間違いないですか?」


と、スピーカーをそのままに、婆ちゃんと話し始めた。


「えっ、ええ……どちら様ですか?」

「現在、創太君をお預かりしているものです」

「はい?」

「失礼ですが、お婆様。今どちらにいらっしゃいますか?」

「今ですか? 家におりますが……?」

「創太君のお部屋へは行かれてませんか?」

「そろそろ、掃除をしに行こうかと思ってましたが?」

「でしたら、今向かっていただいて、机の上をご覧になって頂けますか?」

「はぁ、分かりました」


 歩いてる感じの音がする。

 携帯を持ったまま、僕の部屋に向かっているんだろう。


「は? 遺書……何これっ! あのっ、あの……」

「あー、ご覧になられました?」

「そ、創ちゃんは?」

「先ほども申しましたが、現在私が預かっております」

「ぶ、無事なんですね……よかった……あ、あの……電話、創ちゃんに代わって頂く事は出来ませんか?」

「少々お待ち下さいね」


 婆ちゃんにそう言って、僕の方を見て、


「創太、電話出る?」


と、聞いてきた。

 僕は無言で首を振った。

 それだけでななさんは僕の方を見るのをやめて、また電話に戻った。


「申し訳ございません。まだ話したくないようでして……」

「そ、そうですか……」

「また何かありましたら、ご連絡致しますので、失礼しますね」

「えっ……はい。すみません、お願いします……」


 婆ちゃんへの電話はそうして終わった。

 ななさんはその電話を終えると、またパソコンの方に戻って行った。

 特に僕に声もかけてこない。

 僕も別に言うことないし、漫画を読むのに戻る。


 それにしてもななさん……

 最初から忙しいお姉さんだとか言ってたから、忙しいんだろうけど、婆ちゃんと平然と話すし、何の説明もなしにいきなり僕の遺書を見つけさせるとか……

 確かに説明するよりそれが1番早いだろうけど……


 僕は本当に、変な人の変な家に閉じ込められてしまったんだな……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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