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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode3 少年誘拐加害者編

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偶然の出会い

episode3になります。

青島創太(あおしまそうた)視点です。

 もう生きてる意味も分からない。

 僕はこの世界に必要ない。

 朝起きて、家を出て、それだけを考えながら学校に向かう。

 これが僕の日課だ。


 でも今日は少し違う。

 今日僕は、飛び立つ事を決めていた。


 いつも前を通る10階建てくらいのマンション。

 そのマンションのエントランスから、たまたま人が出てきた。

 オートロックの入り口だけど、人が出てきたタイミングなら入れる。

 僕はエントランスが空いている内に、勝手にそのマンションに侵入した。


 もちろん走って入ったから、出てきた人は僕を怪しんだかもしれない。

 でも僕は高校の制服を着ているし、忘れ物をして走って帰ってきたようにしか思われないだろう。


 思わず入ってしまったけど、別にこのマンションに用事があった訳じゃない。

 廃ビルでもマンションでも、都合のいい建物ならどこでもよかったんだ。

 適当に入ったマンション。

 適当に7階あたりまで階段で登ったところで、一応下を見ておく。

 これなら屋上まで行く必要もないな。


 7階でも結構な高さだった。

 でも恐怖とかは特になかった。

 ここから飛べば、僕は楽になれる。

 それだけは知っていたから。


 階段の手すりに足をかけて、登ったところで、


「痛いと思うなー」


急に声がした。


 振り返って見ると知らない女の人が立っていた。

 でも正直どうでもいい。

 僕はその人を無視して飛ぼうとした……けど、


「そーれっ」


ドサッ ガッ


急に腕を引っ張られ、階段側に落ちた。

 手すりの高さから落ちただけだけど、強く引っ張られたのもあって足をぶつけて痛かった。


「痛った……」

「ほらね。たったこんだけの高さから落ちただけで痛いもんなのよ。だから、あそこから落ちたらもっと痛かったんだから」


 僕が思わず痛いと言ってしまったのを揚げ足をとるように、女の人はそういった。

 この人が引っ張らなければ、こんな痛い思いもしないで楽になれたはずだったのに。


「たしかに少し痛いかも知れないけど、きっと楽になれた」


 僕は女の人に反論した。

 けど、


「なれる訳なかろーがっ!」

「は?」


と、よく分からない口調で怒られた。


「君さ、私についてきなさい」

「はい?」

「いいじゃない。あそこから落ちて遊ぶくらい暇なんでしょ?」

「別に遊んでたわけじゃ……」

「いいからっ! 黙ってついてくる!」


 勝手に僕の荷物を持ったなと思っていると、腕を無理矢理に引っ張られて、僕は連れていかれた。


「はい、到着」

「ここは? あなたの家?」

「ちょっと違うけど、まぁそんな感じかしらね」


 連れてこられたのはこのマンションの7階の一室だった。

 そもそもなんで連れてこられたんだ?

 全く知り合いでもない人なのに……


 あー、あれか……

 僕が自殺しようとしてたのなんて丸わかりだし、自殺なんてしちゃダメだとか、そういう長い説教でも始めようって事か。


「はい、これを読みなさい」


 何だろう?

 急に10冊くらいの本を渡された。

 ありがたい道徳の教材本とかか?


「って、これ……」


 何かと思ってみたら、漫画だった。

 僕は読んだことないから知らないけど、クラスの男子達が好きな少年漫画だ。


「暇でしょ? それ、全部読んで感想を私に教えなさい」


 ちょいちょい命令系で言ってくる。

 まぁ、別に命令されるのなんて慣れてるけど。


「何でですか?」

「それを読んだ感想を教えてって言われてるんだけどね、私忙しくて読んでる時間無いのよ」

「そんなこと僕に関係ありませんので。帰ります」

「帰るって、あなた。どうやって?」

「どうやってって、別に普通に歩いて……」

「そうじゃなくて、どうやってこの部屋から出るつもり?」

「は?」


 玄関に戻ってみたら、見たこともない変なカギがしてあった。

 ロック番号がないと開かないみたいだ。


「どうなってんだ?」

「この部屋は特別な部屋でね。そのロック番号を知ってる人しか出入りできないの」

「は? なら今すぐ開けて……」

「嫌よ」

「なんで?」

「なんでって、折角見つけた助手をそんな簡単に手放す訳ないでしょ?」


 本当に変な人だ。

 急に漫画読めとか、助手だとか……


「助手って……なんで僕が?」

「別にいいじゃない。あそこから落ちて棺に閉じ込められるか、落ちずにここで閉じ込められるかの差よ。どっちも閉じ込められてるんだから一緒でしょ?」


 訳の分からない屁理屈まで言ってくる。


「一緒な訳ないじゃないですか!」

「そうね。あなたは今、生きてるんだから。一緒じゃないわね」

「もう……なんなんですかあなたはっ!」

「さぁ? 忙しいお姉さんかな」


 まともな会話にもならない。

 僕が強く言ってもヘラヘラと返してくる。


「そういえば少年、名前を聞いていなかったわね。あなたの名前は?」

「青島創太です。あなたは?」

「私は忙しいお姉さんだって」

「人に名前聞いておいて、自分は名乗らないんですね」


 嫌みをこめていったみた。


「ごめんなさいね。私、名乗らないようにしてるの。お詫びに私のこと、好きな呼び方していいから」


 一応僕に名乗らない事を悪いと思っているのか、少し申し訳なさそうな感じで言ってきた。


「好きな呼び方って……」

「何でもいいわ。あなたの好きなように呼びなさい。太郎でも花子でもちゃんと返事をするから」

「太郎って……」

「早く決めてちょうだいよ。名無しの権兵衛とかでもいいから」

「じゃ、じゃあ……名無しの権兵衛の名無しからとって"なな"で……"ななさん"でいいですか?」

「ええ」


 僕は何者なのかも全く分からない、ななさんの助手を始めることになってしまった。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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