大切な友人
美代子さん視点です。
浩一達もこれから一緒に住むことになり、紅葉ちゃんも今まで通り来てくれることになった。
それでも紅葉ちゃんは変わらず私達を心配してくれている。
「もうこんな事二度とあってほしくないですけど、本当に悪い人にいつ目をつけられるかわかりません。だからもしまたこんな事があれば迷わず私を頼ってくださいね」
「ええ、頼りにしてるわ」
「どんな些細なことでも、絶対に異変に気付いてみせますからね。"美代子さんの大切な友人"であるという私のプライドにかけて!」
大切な友人だと笑顔で言ってくれる……
私との友人であるということに、そこまでプライドまでもってくれてるのね……
「うっうっ……」
「美代子さん?」
涙が込み上げてくる……
全部が解決したからこその安堵から、冷静になれて、自分の感情もよく分かる。
この感情は、後悔と罪悪感ね……
私は、こんな私の事を友人だといってくれるこの子を、騙したんだから。
「紅葉ちゃん……本当にごめんなさい……私は紅葉ちゃんを騙したわ……どんな理由であれ、こんなに私を大切に思ってくれる友人を騙した事が……」
「美代子さん、あなたは私を騙してなんていませんよ。だって私、騙されてなんていませんから」
「え?」
「騙すという行為は、騙した側と騙された側がいて、初めて成立するものです。私が騙されてなかった以上、美代子は私を騙してはいません」
泣きながら謝る私の背を撫でながら、紅葉ちゃんはそう言ってくれた。
何か屁理屈のような気もするけど……
「本当にありがとうね」
「そもそも騙したとか言っても、あの息子さんの起業失敗発言とかですよね。あんな分かりやすいの、嘘の内にも入りませんよ」
「そんなに私の台詞、嘘っぽかった?」
「嘘っぽいといいますか……もし仮に、本当に息子さんが起業失敗していたとしたら美代子さんどうしてました?」
「そうね……とりあえず売れる物は売れるだけ売って、今からでも働けるような所を探すかしら……?」
もちろん浩一がそんなことするはずないんだけど。
「そういう事ですよ」
「え? どういう事?」
「今の選択肢にスノーフレークから借りるなんてありませんでしたよね」
「……そうね」
「つまり美代子さんが私に、というかスノーフレークにお金を借りて解決させようなんて、思いつく訳ないんです。だからそんな事を言ってくる時点で嘘だって分かるんですよ」
「それは……そうかしら?」
確かに、スノーフレークや紅葉ちゃんに借りるとかは思いつかなかったけど……
「今回だって犯人に言われたんじゃありませんか? スノーフレークの知り合いに連絡しろって」
「ええ……」
「そう言われる前に、私に連絡しようと思っていましたか?」
「いいえ……」
「美代子さんはそういう、誰かを巻き込みたくないからって全部自分で抱え込んじゃうタイプですからね。それはそれでよくないんですが……」
そういえば最初、金持ちの知り合いって言われても誰の事か分からなかったわ。
本当に紅葉ちゃんって、私より私の事を分かってくれてるのね。
「まぁでも、これからは安心ですね。浩一さんも由佳さんも陸君もいるんですから。美代子さん、1人で抱え込まずにいつでも相談して下さいね」
「そうですね。母さん、いつでも頼ってくれよ」
「私にもですよ」
「ぼくもー」
「もちろん私もいつでも大歓迎ですよ」
私にはこんなに暖かい家族がいる、こんな私を大切にしてくれる友人がいる。
本当に私は幸せ者ね。
「さて、全部解決したし、今日はこれから御馳走だな」
「そうね。紅葉ちゃんも一緒に食べていってくれる?」
「いえ、それは遠慮します」
「あら、家族水入らずを邪魔できないとか思ってる? 全然いいのよ」
「そうですよ。むしろ一緒にお話したいですし、是非ご一緒に」
「ありがとうございます。でもすみません……お腹を空かせた同僚が会社で待っていますので、今日は帰ります」
お腹を空かせた同僚?
スノーフレークって仕事中は飲食厳禁とかなのかしら?
ともかく、その同僚さんにも悪いし、無理に誘うのは良くないわね。
「あら、じゃあ残念だけど仕方ないわね」
「また来ますね」
「ええ、ありがとう。また今度はちゃんと紅葉ちゃんが本当にあいている時に誘うからね。必ずまた来てちょうだいね」
「はい、ありがとうございます。では」
紅葉ちゃんは帰っていった。
もう少し一緒に話をしていたかったけど、また来てくれるから大丈夫。
今日は嫌なことのあった日だけど、そんな事も忘れれるくらいに豪華な夜ご飯を皆で賑やかに食べるとしましょう。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




