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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode2 友人の宝誘拐編

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急転直下

由佳さん視点です。

 私と陸は、急に知らない2人組の男達に無理やり車に乗せられた。

 そのあとすぐに気絶させられてしまい、気が付いたら薄暗い部屋にいた。

 私も陸も手はロープで縛られ、壁のパイプと繋がれていて、口にはガムテープがされていた。

 足は動けるけれど、男達がずっとこっちを見ているので動けなかった。

 怖くて、何がなんだかわからないけど、陸だけは絶対に守らないと……


 私が起きたことに気が付いた男達はスピーカーにした携帯を私の前においてきて、私の口のガムテープをとった。

 結構痛かったけど、電話からは浩一さんの声。

 何も分からないこの現状で、浩一さんの声を聞けた事が本当に安心できた。


 浩一さんの話だと、私と陸は誘拐されたみたい。

 身代金は5千万円。

 浩一さんはお金は何とか用意してもらえたって言ってたけど、私達にもお義母さんにもそんなお金はない……

 本当に大丈夫なのかしら……

 そもそも、なんで……私達なの?


 あれからどれくらい時間がたったんだろう……?

 男1人はずっと電話、もう1人は私達を睨んでくる……

 時計もないし、どれだけ時間がたったのか分からないけど、凄く長い時間に思えた。


 陸が目を覚ました。

 浩一さんからの電話のあと、私の口にはもう一度ガムテープが貼られてしまったので陸に事情も話せない。

 できるだけ陸の近くに行くけど、手が繋がれていて限界がある。


 陸が震えてる……ごめんね、陸……

 本当は抱き締めてあげたいけど、手が使えない。

 誰か……誰でもいいから、助けて!


 急に男達はネズミに騒ぎだした。

 ネズミを見に行った1人は帰って来なくなり、もう1人も急に倒れた。

 そして何処からか現れた高校生くらいの男の子が、さっきの男と同じ声で電話に出ながら、スケッチブックを見せてくれた。


助けに来ました。

ですが、まだ旦那さんが捕まっていますので、あなた方も捕まっていると犯人に思わせたいです。

声を出さず、音を立てず、静かにあのお姉さんのところに行って下さい。


 スケッチブックにはそう書いてあった。

 助けに……来てくれた?

 浩一さんも捕まってるんだ……


 扉の方で手を振ってる女の子がいた。

 男の子と同じ年頃の女の子……

 あの子の所へ行けばいいのかな?


 男の子が手のロープを外してくれたので、私は陸を抱えて手を振ってくれている女の子の所に向かった。


「こっちですよ」


 小声で話ながら案内してくれる。

 この女の子は、大きな楽器とかが入っていそうな鞄を背負っていて、ペンギン柄のパーカーを着ている。

 頭がペンギンになっているフードも被っているので、まるでペンギンの着ぐるみのようで、とても可愛い。

 さっきまで捕まってたとか忘れさせてくれるような、ほのぼのとした感じだった。


「ここならもう、喋っても大丈夫ですよ。ちょっと痛いかもですが、ガムテープとりましょうか?」


 私は陸を抱えているので手が使えない。

 女の子が私の口のガムテープを取ってくれた。


「いたっ……いたい……」


 私のガムテープを取っているのを見て、取っていいと思ったようで、陸も自分で自分のガムテープを取っていた。


「陸、大丈夫?」

「おかーさん……ぼく、あるける……」

「そう? 偉いわね」


 陸は少し泣きそうになりながらも、自分で歩けると言ってくれた。

 もう5歳の陸は結構重い……

 ずっと抱いていたので、少し疲れた……


「口回り赤いですね……今、コレしかなくて申し訳ないんですが、冷やすのに使ってください」

「ありがとうございます」

「陸、ほら冷やして」

「うん……」


 女の子が新品の冷たいペットボトルのお茶をくれたので、陸の口回りを冷やしておく。

 赤くなってしまっていて、可哀想だ……

 痛かっただろうに……


 陸の手を引いて、少しだけ会話をしつつさらに進んでいくと、さっきまで私達を睨んでいた男が倒れていた。


「あ、ちょっとすみません。ネズミ取り返さないと……」


 女の子は倒れてる男の手に握られていた、ネズミのおもちゃをとっていた……


「あの……死んでるんですか?」

「寝てるだけですよ。ついでなんで、縛っておきましょうか」

「あ、コレ使いますか?」

「ありがとうございます」


 私達がさっきまで縛られていたロープを、私が持ってきてしまっていたので、それを使ってもらって寝てる男を縛った。

 そして、女の子はネズミのおもちゃも回収してた。

 というか、そもそもこの子達は何者なんだろう?


「いいなー。ぼくもそれほしいー」


 急に陸がネズミのおもちゃを指差して言った。


「ダーメ。これは私のネズミだから」

「えー」

「こら、陸。これはお姉さんのだから、ダメでしょ」

「うぅ」

「そうそう、これは私のなのー」


 わざわざ回収してるんだし、きっと大切なネズミなんだろう。


「ったく、お前は何子供いじめてんだよっ」


 私がそう思っていると、背後から急に声がした。

 振り返るとさっきの男の子が歩いてきた。

 さっきとは違う声……

 やっぱりさっきのは、あの男と同じ声を出していたのかな?


「ほら、見とけ……ここに1枚のコインがあるだろ?」


 そう言って男の子は陸の目の前にコインを見せた。


「これをこうすると……ほらなくなった」

「すごい!」


 マジックだ。

 陸も喜んでる。


「で、これをこうするとまたコインが出てくる」

「おー!」

「でもこのコイン、さっきのコインより大きくなってるだろ?」

「うんっ」

「だから、またこうすると消えて、こうするとさっきより大きいのに変わるんだよ」

「おぉー!」

「で、これを繰り返すと……ほらっ、金メダルだぜ!」

「すごーい」

「これは君にプレゼントだ。怖かったのに、よく頑張ったな」

「うんっ、ありがとーう」

「あの、ありがとうございます」


 男の子は陸に金メダルをくれた。


「犯人との電話は?」

「向こうからとりあえず切るってさ」

「そう」

「あの、浩一さ……主人は大丈夫なんでしょうか?」

「大丈夫ですよ。帰る頃に丁度解決してると思います。安心してくださいね」


 男の子はそう言ってくれた。


「とりあえず俺は警察来るまでここにいるから、お前は2人をよろしくな」

「りょーかい」


 女の子に案内されるまま広いところに出ると、丁度車がたくさん来た。


「お疲れ様です。犯人は?」

「中」

「了解です! 後日、事情聴取お願いします」

「中のくー君に言っといて」

「はい、失礼します」


 若い男の人が女の子に挨拶をして、私達が捕まっていた方へ向かって行った。


「じゃ、帰りましょうか。この車に乗ってくださいね」

「あの? さっきのは?」

「あぁ、刑事さんですよ」


 陸と案内された車に乗る。

 運転手さんが車のドアを開けてくれた。

 すごいセレブ感……


 それにしてもさっきのが刑事さん?

 ってことは、この子達も?

 車内で質問してみた。


「あの、あなた方も刑事さん? ですか?」

「いいえ、私達はスノーフレーク。何でも屋です」


 スノーフレークって……

 この間赤い羊捕まえたとかいう、あの?

 あと、お義母さんの話し相手をしてるとかっていう……

 誰かが……お義母さんか、浩一さんがスノーフレークに私達の救出依頼をした?


「あの、おいくらくらいですか?」

「何がですか?」

「私達の救出料は?」

「そんなのないですよ」

「ないんですか?」

「逆に何故あると? そんなのにお金もらうわけないじゃないですか」


 少し笑いながら言われてしまった……

 本当になくていいんだ……


♪♪♪♪♪


 女の子の携帯がなった。


「はーい、……うん。……分かったー。あ、仕事になりました。ごめんなさい、私降ります。あとお願いしますね」

「かしこまりました」


 運転手さんと話してる。


「すみません、私はここで離れます」

「あ、あの……ありがとうございましたっ」

「ペンギンおねぇちゃん、ありがとー!」

「いえいえ、どういたしまして」


 女の子はまた大きな鞄を抱えて降りていった。


 お義母さんの家に着くと、丁度犯人が警察に連行されていくところだった。

 皆無事で本当に良かった。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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