斉場主任
綾瀬久実視点です。
「捜索対象、発見しました。すぐに時間を辿ります」
「5千万円、準備完了しました!」
「金は瀧沢に渡しておけ」
「はいっ!」
どんどん進んで行きますね。
さすがです!
ぐぅ~
あ、お腹なっちゃっいました……
お恥ずかしい……
「なんだ? 腹へってんのか? コレでも食っとけ」
そう言って、斉場主任は菓子パンを投げてくれました。
地味に優しいですね。
「いいなー。主任ー、私にはー?」
「ねぇよ」
「えー、欲しかった」
「んなこと言ってねぇで、さっさとドローン向かわせろ!」
「分かってまーす。でもこのハエ型ドローン、速すぎて操作しにくいんですよ」
「早くなれろ」
「主任っ! 沢田さんのお孫さんと、そのお母さんと思われる2人を無理やり車に乗せている映像、発見しました。車追います」
「おう。おい、そこの受付」
「ん、はっはい」
菓子パン食べてたら急に呼ばれました。
ビックリ、ビックリ……喉に詰まるかと思いましたよ。
「お前は空音と乃々香に緊急召集」
「あ、はいっ!」
まさか私も使われるとは……
私もすぐに、柴崎さんと栗林さんに連絡します。
情報部は目まぐるしく動いています。
「主任っ! 犯人の潜伏場所、特定しました!」
「よし、受付! すぐにここに空音と乃々香を向かわせろ」
「はいっ!」
「ドローン、沢田家に到着です。これより室内に侵入します」
「室内の様子は?」
「1階には、四之宮主任と女性が1名です。おそらく沢田さんですね。現在、2階に向かっています」
「早くしろ」
斉場主任言い方キツいです。
私は普段、口調も丁寧でとても優しい紅葉主任と一緒にいるので、この感じには馴れませんね。
「しゅーにーんっ! 沢田さん家2階にて、犯人1名と人質になっていると思われる男性1名を発見しました。犯人は拳銃を所持しています。あと、1階の様子をパソコンで見てるみたいですね。あっ……こっちに気がつかれました」
「おいっ! なにやってんだ!」
「すみません、でもハエだと思ってもらえたようです」
「開発部に感謝しろ! で、反省は?」
「めっちゃしてます! でも、今ので操作のコツはつかみました! 次で挽回しますっ!」
「よし、それでいい」
それでいいんですね。
怖いのか優しいのかよく分からない人です。
「室内の様子ですが、他に犯人はいません。ですがこの犯人、ずっと携帯で仲間に連絡をとってるみたいですね」
「主任、他の映像等確認しましたが、犯人は3人グループで間違いありません。誘拐されたのは、お孫さんとそのお母さんのみです」
「そうか、連絡取り合ってるなら、先に孫達助けた方がいいな。空音達はまだか?」
「もうあと10分ほどで到着すると思われます」
「そうか」
私も一緒にドローンからの映像を見せてもらっています。
犯人の男は、1階仕掛けたカメラからの映像を、食い入るように確認していますね。
おそらく紅葉主任の話す内容から、スノーフレークの裏事情とかを知ろうとしてるんでしょうね。
「瀧沢さん達が、沢田さん宅の付近に到着しました。5千万も瀧沢が持ってます。どうしますか?」
「空音達が着いてからだな」
「2人とも、もうそろそろ着きますよ」
紅葉主任もそうですが、柴崎さんや栗林さんも自分達の居場所が分かるようにGPSを持っています。
なので情報部には今誰が何処にいるかがまる分かりです。
もちろん、オンオフできるのでプライバシーも大丈夫ですよ。
「柴崎さん達が現場に到着しました」
「よし、受付っ! 紅葉に連絡だ」
「はいっ!」
私は紅葉主任に電話をかけました。
「奏海、お金準備してくれた?」
「主任、5千万円の準備完了してます。近くに瀧沢さんが待機して下さってます」
「そう、ありがとう。私が取りに行った方がいい?」
お金を主任自身が取りに来た方がいいか……
つまり、沢田さん方を家に残して離れても大丈夫か? という質問ですね。
私には判断しかねるので、主任に判断してもらいましょう。
「現在の状況ですが、室内2階に犯人1名が、沢田さんの息子さんと思われる男性を人質にしています。また、お嫁さんとお孫さんは誘拐され監禁されていますが、そちらは現在、柴崎さんと栗林さんが丁度現場に到着したところです」
「んー、なら私が取りに行くよ」
「了解です」
「じゃあ、そういう事でよろしくね」
主任が家から抜けてきても、おそらく怪しまれないでしょう。
むしろずっと家の中に居座ってる方が、おかしいですし。
「おい、受付。お前はもう、通常業務に戻っていいぞ」
「はい。失礼します」
「あ、待て。お前名は?」
「綾瀬久実です」
なんででしょう?
急に名前聞かれました。
「あー、お前が紅葉のお気に入りの……なるほどな」
「え?」
斉場主任、今なんて言った?
よく聞こえなかったです。
「よかったですね、綾瀬さん。主任が名前を覚えるっていうのは、実力が評価されたからですよ!」
「まぁ、覚えてくれても呼ぶときは結局、おいとかお前とかですけどね……」
「そうそう、主任は基本的に人の名前覚えれませんもんねー」
「ああ、そうだな。んで、さっき偵察失敗したお前……名前はなんだったか?」
「ひどいっ! 忘れられたっ!」
なんかよく分からないですが、情報部って皆仲いいんですね。
「では、失礼します」
「おう」
さてと、時計を見ると15時57分……
休憩は潰れてしまいましたね……
月に1度のスペシャル定食……
ま、しょうがない、しょうがない。
仕事に戻るとしますか。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




