電話相手
綾瀬久実視点です。
私、綾瀬久実は今日も職場であるスノーフレーク本社、受付に出勤してきました。
「おはようございます」
「おはようございます、久実さん」
相変わらず紅葉主任は素敵な笑顔ですね!
受付の鏡ですよ!
「そういえば主任、今日は沢田さんの所行かないんでしたっけ?」
「そうですね、今日はお孫さんが遊びに来る日ですから。ということで、今日は私も1日中いるのでお昼休憩は順番に回します。私は最後の15時からでいいので、後は皆さんで好きに決めて下さいね」
「はーい」
やっぱり紅葉主任がいるのといないのとじゃ、皆のやる気も違いますね!
私の休憩は14時からになりました。
少し遅いですが、今日は食堂で月に1度のスペシャル定食の日ですからね、楽しみです。
遅くなった分だけ美味しさも増すはずです!
今日もいろんな依頼が来ます。
基本的にはお客様からの依頼を聞いて、その依頼の要点をまとめて情報部に送るのが私達、受付の仕事です。
情報送るだけの簡単な仕事……とかって思われがちですが、時折変な依頼も来ますので、お客様と直接話をする受付は結構重要なお仕事です。
ふぅー、やっとお客様が減ってきましたね。
時計を見ると13時半くらいですね。
後、30分程度でスペシャル定食です!
少し休憩していると……
♪♪♪♪♪
紅葉主任の携帯がなりました。
「はい、四之宮です。……えっ? はい、構いませんよ。……すぐに行きますね」
電話を終えた主任……
えっ? 今、すぐに行きますって言った?
「久実さん、ごめんなさい。ちょっと沢田さんの所行ってきます。休憩、15時に変更してもらってもいいですか?」
「はい、大丈夫ですけど……」
スペシャル定食……
いえ……も、問題ありません!
空腹は最高のスパイスですからねっ!
「あ、ごめんなさい……」
「いえっ! 大丈夫ですよ。沢田さん、何かあったんですか?」
「分かりませんが……とりあえず行ってくるので、後はよろしくお願いします」
「はい、お気をつけて」
紅葉主任出掛けていきました。
沢田さんは主任の大切なお友達です。
大丈夫でしょうか? 心配ですね……
15時……やっと休憩になりました。
少し遅くはなったけど、今日のスペシャル昼御飯!
食堂に向かおうとした時、
♪♪♪♪♪
私の携帯がなりました。
ん? 紅葉主任からですね。
「はい、綾瀬です」
「ああ、神園さん。四之宮です。奏海に繋いでもらえますか?」
私はもちろん神園さんではありません。
だからと言って、これが間違い電話であるはずもありません。
そもそも、紅葉主任は神園さんに繋いでもらわなくても、直接奏海さんに電話が出来ますからね。
つまり今、紅葉主任の電話を聞いている人間には、奏海さんに電話していると思わせているということです。
では、何故そんな事をする必要があるのか?
そんなのは、簡単ですね!
「至急、情報部に向かいます。次の会話の始まりを主任も身動きがとれない状態なら"頼み事"、主任は無事で沢田さん本人か、もしくはご家族に何かしらの事態が発生しているなら"お願い"、それ以外なら"要望"でお願いします」
と、電話口で言いつつ、情報部に向かい階段を掛け上がります。
「奏海? ごめん、ちょっとお願いがあって」
お願い……つまり、沢田さん家族がピンチということですね。
主任は無事のようです。
「ちょっと、5千万円ほど貸してほしいんだよね」
5千万円……お金の要求ですか……
そういえばお孫さんが遊びに来るって言ってましたね。
一番の可能性としては、身代金目的の誘拐辺りでしょうか?
「お金は、お孫さんが誘拐された身代金ということでしょうか?」
「それは、私もそうだとは思うけど……」
「まだ確定はできませんか?」
「うん、ごめん……」
と、情報部に到着しました。
「緊急です! 紅葉主任の現在地にて、身代金目的の誘拐と思われる事件が発生中です! 直ぐに調査をお願いします」
「了解。おい、直ぐに紅葉のGPSを」
「はい」
「金の金額は?」
「5千万円です」
「会計に金を依頼しておけ」
「はい!」
「お前は開発部に小型ドローンの依頼だ」
「はーい」
「瀧沢にも連絡しておけよ」
「了解っす」
情報部の斉場主任の指揮のもと、どんどんと皆さん動いて行きますね!
今の間、紅葉主任は適当な相づちを打ってくれていました。
「主任、小型ドローンで沢田さん家の室内を探ります。窓かどこかに室内に侵入できる隙間を作ってください。それと、沢田さん家族の写真を送ってください」
「りょーかーい。待ってるね、また連絡して」
とりあえず、主任との電話を切りました。
「小型ドローン、借りて来ました! "ハエタイプ"です」
「よし、すぐに現場に迎え」
「はーい」
すごいですね、情報部の皆さん。
物凄い早さでデータが交錯していきますね。
今借りてきたばかりの、本当にハエに見える小型ドローンも操ってます。
ピロン
と、メールですね。
紅葉主任から沢田さん家族の写真と、お孫さんと思われる男の子の写真、それと庭側のガラス戸を少し開けておくとの連絡でした。
てか、送ってくるの早すぎませんか?
これはおそらく、最初から用意してましたね。
さすが、紅葉主任です!
「捜索対象の写真です。それと、庭側からの侵入をお願いします」
「了解」
「すぐに顔認証システムで探せ、ドローンは?」
「今向かってます」
斉場主任は紅葉主任と違って、口調も厳しいし、なんか全然優しくなさそうですけど、やっぱり情報部の人達から凄く信頼されてるのは分かりますね。
まだ若いのに……
っていうか、まだ高校生ですよね? 紅葉主任と同い年のはずですからね。
本当にこの人達は恐ろしいです……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




