天国から地獄
犯人視点です。
「警察です! 武器を捨てて投降しなさい」
「は……?」
俺は呆気にとられているうちに捕まった。
いや、まて……まてまてまて、
「おい! 俺を捕まえても無駄だぞ。こっちには人質がいるんだからな! ガキと女を殺されたくなかったら、俺を放せ!」
「あぁ……刑事さん、その人の言う通りに……お願いします……じゃないと、じゃないと……」
急な展開で少し動揺したが、俺達は人質をとっていたんだ。
この際、金は諦めて逃げるしか……
「大丈夫ですよ、美代子さん。ほら」
そう言ったスーツ学生の指した方から、
「ばぁちゃーんっ!」
「陸君……?」
ガキが走ってきた。
女も遅れて後ろからついてくる……
どういうことだ?
ついさっきまで捕まえていたはずじゃ?
「何が……どうなってんだよ」
「混乱されてるようですね、現実を見て下さい。あなたが捕まっているんですよ」
スーツ学生が俺に向かって言ってきやがる……
「何でだ……? くそっ! おい、ババア! どうやって知らせやがった!?」
「わ、私は何も……」
「この期に及んでまだ美代子さんを苦しめるの、やめて頂けます? よくもまぁ、私の大切な友人を散々苦しめてくれましたね」
「はぁ? 何が友人だ! くだんねぇ話を永遠してるババアの話し相手して、金もらってる奴が何言ってんだよ!」
バシンッ!
ってぇ……くそっ……
ババアが急に俺をビンタしやがった。
「あんたっ! 失礼な事言うじゃないよ! 紅葉ちゃんはお金なんてとってないよ! こんな……こんな私を本当に友人だと言ってくれて、いつも話を聞いてくれる……本当に、本当にいい子なんだよ!」
「美代子さん、落ち着いて。手、冷やしましょう」
なんなんだよ、本当に……
どこでしくじったんだ……
「くそっ! 完璧な計画だったのに……どこで気付いたんだよ?」
「完璧? あれでですか?」
「何?」
スーツ学生は俺を小バカにしたように言ってくる。
「どこで気が付いたかといえば、最初から気が付いていましたよ」
「最初?」
「ええ、美代子さんから電話があった時からです。美代子の様子がおかしい事くらい、電話でも分かります。それも大切なお孫さんが来てくれる日に、私に連絡してくる……この時点で何かあった事は分かるじゃないですか」
「でもそれで誘拐とは限らねぇだろ」
そりゃ急に呼ばれれば何かあった事ぐらいは分かるだろうが、何で誘拐だと断定できた?
金を要求したからか?
それだって息子の企業失敗っていう、十分な理由がある。
「そうですね。ですからこの家に入った時から、おかしな事にすぐに気がつけるように注意してました。まぁ、注意して探すまでもなくおかしな事は沢山ありましたが……」
「おかしな事? 何だ? 何がおかしかったんだよっ!」
「さぁ? それを考えながら、よく反省してくださいね。では」
スーツ学生はそれだけいうと、警察の奴に合図を出した。
ついさっきまでは確かに俺の計画が順調に進んでたんだ!
なのに、なのにっ!
急すぎる展開に訳の分からないまま、俺は警察に連行された。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




