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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode2 友人の宝誘拐編

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唯々諾々

美代子さん視点です。

 紅葉ちゃんの家族や、実家の話をして結構時間が経った。

 時計を確認すると、もうすぐ16時。

 もう1時間近く話していた。


♪♪♪♪♪


 丁度話に一区切りついたところで、紅葉ちゃんの携帯がなった。


「あ、すみません。ちょっと失礼しますね」


 私にそう断って、紅葉ちゃんは電話に出た。

 奏海さんからかしら?

 お金を用意してくれたんだといいけれど……


「奏海、お金準備してくれた? ……そう、ありがとう。私が取りに行った方がいい?」


 どうやらお金は用意してもらえたみたい。

 でもどうやって持ってきてくれるのかしら?

 それに犯人達も、どうやって持って帰るつもり?


「んー、なら私が取りに行くよ」


 えっ、紅葉ちゃん行っちゃうの?

 今のって、そういう事よね?


「じゃあ、そういう事でよろしくね。……すみません美代子さん。お金の準備できたみたいなんですけど、あっちも忙しいみたいなので、私が取りに行ってきますね」

「ごめんなさいね……」

「大丈夫ですよ。もう少しお待ちください。30分くらいで戻ってきますので」

「ありがとう」


 30分か……短いようで長い時間ね。

 また犯人と私達だけになってしまうわね……

 紅葉ちゃんが居てくれてるだけで大分心強かったから、紅葉ちゃんが行っちゃうと分かったら急に不安が……


「大丈夫ですか?」

「ええ……」

「できるだけ、すぐに戻って来ますから」

「本当にごめんなさい……」

「そんなに気に病まないで下さい。では、急いで行ってきますね」


 紅葉ちゃんは急ぎながら出ていってしまった。

 どうしようかしら……

 とりあえず、2階の浩一が心配だわ。

 犯人は怖いけど、上に行きましょう。


「あ、あの……」


 上に上がると犯人の男は電話していた。

 浩一も無事そうで良かった。


「婆さんが上がってきたから一旦電話切るぞ」


 そう言って電話をきり、私の方に来た。


「いいか、俺等の事は警察にもスノーフレークにも話すなよ! 人質が帰ってきたからって警察に話したりしたら、また来るからな! その時は……」

「分かりました。絶対に言いませんから……」


 この犯人は顔を隠したりとか何もしてない。

 皆が無事に帰ってきてくれたら、警察や紅葉ちゃんにちゃんと事情を話して、犯人の特徴を言えば、きっと警察が捕まえてくれるはず……

 浩一も多分それを考えてる……


 でも、もし警察が捕まえれなかったら?

 また来るって……

 本当にどうしたらいいのかしら……

 冷静になろうとしてもなかなか考えられない……


 とにかく今は、皆が無事に帰ってきてくれる事だけ考えましょう。

 警察に話すとかはまたあとで考えて……


「おい、聞いてんのか?」

「は、はい……もちろんです」

「まぁ、別にお前等だってそんな困ることないだろ。人質もちゃんと戻ってくるんだし、金だってスノーフレークの奴が、返すのはいつでもいいって言ってんだからな」

「勝手なことばかり言うなっ!」

「お前はいい加減自分も人質だって自覚しろよ!」


 無茶苦茶を言う犯人に、浩一も我慢の限界みたい……


「こ、浩一も落ち着いて……」

「あ……ごめん、母さん……」


 あの人もそうだったけど、浩一もこういう事は絶対に許せない、正義感の強い子だから……

 それでもやっぱり、今は皆の命の方が大切だもの。

 犯人に協力しているようで嫌だけど、皆を無事に返してもらうためにも、紅葉ちゃんに気が付かれないように、お金を貸してもらわなくちゃいけないわ。


「ったく、それからな、アイツが金持ってきたらなるべく早く帰らせろよ」

「そんなっ、それは流石に無理です……」

「まぁ、そうだろうな。それをなんとか考えときな」


 お金を持ってきてもらって、後はもう帰ってもいいなんて……

 そんなことは言えない。

 いっそのこと、浩一が人見知りだからとか言おうかしら?

 流石におかしいわよね……


 皆が無事に帰って来るまでは、紅葉ちゃんにも誘拐を気付かれる訳にもいかないし……

 どうしたらいいのか考えていたら、


ピンポーン


と、玄関のチャイムがなった。

 急いで2階から降りて見に行くと、紅葉ちゃんがもう帰ってきてくれていた。


「お待たせしました~」


 相当急いで行ってくれたんでしょうね。

 紅葉ちゃんは30分と経たず帰ってきてくれた。

 まだ15分位しか経ってないんじゃないかしら?


「どうぞ、こちらです」


 紅葉ちゃんは奥のリビングにまで来てから、机の上にケースを置いてくれた。

 中にはお金が沢山入っていた。

 ここなら犯人にも見えているでしょう。


「本当に、本当にありがとうね、紅葉ちゃん。必ず、必ずお返しするから」

「はい。息子さんにすぐに連絡してあげてください」

「え、ええ……」


 でもどうしましょうか……

 紅葉ちゃんが浩一に挨拶したいっていうのは当たり前よね……

 私は今、どうするべきなのかしら……


「あと、ごめんなさい美代子さん……本当はちゃんと息子さんに挨拶したかったんですが、このあと仕事に戻らないといけなくなりまして……」

「えっ? そ、そうなの?」

「はい、なので申し訳ありませんが、私はここで失礼しますね。息子さんにもよろしくお伝え下さい」

「ええ……」

「では、またお話沢山しましょうね」

「本当にありがとうね」


 紅葉ちゃんはそう言うと、また急いで出ていってしまった。

 あんなに、どうやって紅葉ちゃんに帰ってもらうかを考えたのに、全然必要なかった。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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