携帯越しの音
犯人視点です。
スーツ学生はまだどうでもいい話をしてやがる。
最初は姉の彼氏の話とかだったが、だんだん両親の話や、地元の話に変わってきている。
もっと俺等に役立つ情報を話せばいいのに……
そんな事を考えていたら、
♪♪♪♪♪
スーツ学生の携帯がなった。
「あ、すみません。ちょっと失礼しますね」
奏海からか?
金が用意できたのか?
「奏海、お金準備してくれた? ……そう、ありがとう。私が取りに行った方がいい?」
どうやら用意できたみたいだな。
にしても、どうやって持ってくるつもりだ?
まさか奏海本人が持って来たりしないよな?
流石にそれはないよな?
「んー、なら私が取りに行くよ」
スーツ学生が取りに行くらしい。
あとは俺等がどうやって手に入れるかだな。
そのまま金だけ置いて、スーツ学生が帰ればいいんだが……
どうするか……
「じゃあ、そういう事でよろしくね。……すみません美代子さん。お金の準備できたみたいなんですけど、あっちも忙しいみたいなので、私が取りに行ってきますね」
「ごめんなさいね……」
「大丈夫ですよ。もう少しお待ちください。30分くらいで戻ってきますので」
「ありがとう」
スーツ学生は電話を切り、婆さんと話し始めた。
とりあえずあいつ等に知らせておくか……
「お前等、金が準備出来たみたいだぜ」
「おお! そうか」
「ん? おい、なんだ?」
「見てくる」
どうした?
電話の向こうの、あいつ等の様子がおかしい。
「何かあったのか?」
「いや、変な音がしたから見に行ってるだけだ」
変な音って何だ?
あそこに誰も来ない事は確認済みのはずだし……
「大丈夫か?」
「おーい! どうだー?」
うるさいな、携帯持ったまま叫ぶなよ。
俺の耳にダイレクトに叫び声が来るんだよ。
「で、どうなんだよ? 何かあったのか?」
「ネズミ? ああ、問題ない。ネズミがいたらしい」
「そうか」
なんだよ、ネズミか。
ネズミぐらいでギャーギャー言うなよ。
鼓膜が破れるかと思ったぜ。
さてと、スーツ学生の様子を確認する。
どうやら金を取りに行くために家から出てったようだ。
あとは俺達がどうやって5千万を持って帰るかと、人質をどうやって帰すかだな。
人質帰してすぐに警察に連絡でもされたらヤバイからな……
何より、俺はこいつらにバッチリ顔を見られてる訳だからな。
それにスーツ学生も金を置いてすぐ帰るとも限らない。
原因の息子に会わせて欲しいとか言われたら困るし……
「おーい、どうしたー? ネズミは捕まえたのかー?」
うるさっ! また耳もとで声。
あいつ等、まだネズミの事気にしてんのか?
ガチャンッ!
うわっ、何だ?
何か耳に凄い音が響いた。
「おい、なんの音だ? 何かあったか?」
「悪い、手が滑って落とした……こっちは問題ない。そっちは?」
「こっちも問題ねぇけどよ。気を付けろよ」
「ああ」
ったく、さっきから何なんだよ。
あいつ等は人質見てるだけだろうが、俺はスーツ学生や婆さんも見てないといけねぇんだぞ。
おまけに今、どうやったらスーツ学生がすぐ帰るかとか、どうやって人質帰してから警察に知らされねぇようにするかとか、あいつ等と違って色々考えてるっていうのに……
ん? カメラから婆さんが消えたな。
どこ行った?
「あ、あの……」
なんだ、こっちに来ただけか。
色々考えたいし、婆さんにスーツ学生を早く帰らせてもらわねぇとだしな。
「婆さんが上がってきたから一旦電話切るぞ」
「おー」
とりあえず警察に言わねぇように、婆さんに言っておくとするか。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




