雑談
美代子さん視点です。
お金が貸してもらえるということからの安心と、紅葉ちゃんを騙しているという罪悪感。
自分の感情がぐちゃぐちゃで混乱しそう。
「大丈夫ですか? 美代子さん?」
「え、えぇ……ごめんなさい、こんなに紅葉ちゃんに迷惑かけてるのに……その、お金を貸してもらえるのが本当にありがたくて……その、ね……」
「いっぱい考えすぎて、混乱中なんですね。そういう時は、深呼吸ですよ」
「え?」
自分でも何を言ってるのかよく分からなくなってる私に、紅葉ちゃんは相変わらず優しい言葉をかけてくれる。
庭のガラス戸を開けて、外の空気を入れてくれた。
「悩んだりして、頭がいっぱいになった時とかは外の空気吸うといいんですよ。さぁ、深呼吸しましょう」
紅葉ちゃんと一緒に深呼吸。
確かに大分落ち着いたかも……
落ち着いたからって、罪悪感が消えるわけではないけれど……
「どうですか?」
「大分スッキリできたわ」
「外の風が入った方がリフレッシュできますし、開けておきますね。網戸しておきます」
「ありがとう」
「じゃあ気分転換に私の話、聞いて下さいます?」
「えぇ」
「ただの愚痴みたいなものなので、聞き流して頂いてもいいんですが……」
「そんなことないわ。紅葉の話はいつも興味深いわ」
紅葉ちゃんは本当に気遣いのできる子ね。
多分私が家族の事で悩んでる時に、家族の話をしない方がいいと察して、話題を変えてくれたのね。
「実は今度、姉が彼氏を紹介したいと言ってまして……」
てっきりいつも通り、スノーフレークの話かと思ったら、お姉さんの話だった。
紅葉ちゃんってお姉さんいたのね、知らなかったわ。
「まぁ、それはそれは。どんな方なの?」
「分からないんですよね」
「でも、紅葉ちゃんのお姉さんが選んだ方だものね。きっと素敵な方よ」
「だといいんですけど……姉、抜けてるところがあるので」
これだけしっかりした紅葉ちゃんのお姉さん。
凄くしっかりした人のイメージしかないわ。
「そうなの? 抜けてるって、お姉さんはどういう感じの方?」
「1つの事に集中すると、回りが見えなくなっちゃう感じの人ですね。この前もずっとパソコンばっかり見てて、ご飯も食べるの忘れてましたし」
「あらあら、それは少し心配ね」
「そうなんですよ。そんな姉が選んだ人というか、そんな姉を選んだ人ですよ? どんな人なんですかね?」
お姉さんが抜けてるから、紅葉ちゃんがこんなにしっかりした子になったのかしら?
「紅葉ちゃんはどんな人だったいいの?」
「姉が幸せになってくれるなら、どんな人でも構いませんよ。さすがに年が離れすぎていたり、無謀な夢を追いかけてるような方だったら、反対すると思いますが」
「もし反対したとして、お姉さんは紅葉ちゃんの意見をちゃんと聞いてくれる?」
「はい、もちろんです。仮に私が別れた方がいいと言ったからといって、本当に別れるかどうかは姉が決める事ですが、私の意見は無下にせず参考にしてくれるはずです。昔から姉は、何かあると私に意見を求めて来ましたからね。だから今回も両親に紹介する前に、私に会って欲しいって言ってるんだと思います」
「そう、流石紅葉ちゃんね。お姉さんからも信頼されてるのね」
両親に紹介する前に妹に会って欲しいなんて……
両親に反対されないよう、紅葉ちゃんに協力して欲しいとか?
「そういえば、紅葉ちゃんのご両親の話って聞いた事がなかったけど、厳しい方々だった?」
「え? 親ですか? 物凄くのほほーんとした人達ですよ。最近会ってないですけどね」
「あら? 紅葉ちゃん1人暮らしだった?」
「いいえ、姉と住んでますよ。私の実家は田舎の方なんですよ。姉がこっちの大学に通いたいから、こっちに来て1人暮らしすると言い出したんですが、何分抜けてる姉ですので心配で……だから私が姉をサポートするために、一緒にこっちの学校に進学したんです」
「お姉さんに合わせてこっちに来たの?」
「そうです」
紅葉ちゃんと出会ってもう結構経つのに、全然知らなかった。
紅葉ちゃんの家族の話とかしたことなかったものね。
今までどれだけ私が、自分の話を聞いてもらっているだけだったのかがよく分かるわ。
紅葉ちゃん、田舎出身だったのね。
どおりで私が時々する、都会の子じゃ分からないような話も理解してくれたのね。
「お姉さんとはいくつ離れてるの?」
「6歳差です」
あら? そうだとすると、お姉さんが大学に進学した時って、紅葉ちゃん中学生じゃない?
「それは紅葉ちゃんが中学生の時の話?」
「そうですよ。私が中学に入学する時にこっちに来て、そのまま姉とずっと住んでます」
大学生になる姉を心配して、中学生になる妹を一緒に行かせるって……
どう考えてもおかしい事なのに、何故か紅葉ちゃんなら納得できた。
でも、小学校のお友達もいたでしょうに、そんな多感な時期に急に知り合いも誰もいない中学校に通うなんて……
「紅葉ちゃん、大変だったのね」
「そうでもないですよ? それに、そのお陰で新しい出会いがありましたから。私はこっちに来て本当に良かったと思ってます」
「そう? それなら良かったわ」
「こうして美代子さんとも出会えましたからね!」
「ありがとう」
そんな風に言ってもらえて、私は幸せ者ね。
今、紅葉ちゃんを騙してお金を貰おうとしているというのに……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




