静かな公園
夕方、買い物を済ませた帰り道。
子供達も家に帰って行った後の、静かな公園。
その中学生くらいの少女は、揺らす事もなくブランコに座っていた。
1日目は声をかけなかった。
誰かを待っているだけだろうと思ったから。
2日目は少し様子を見ていたけど、結局声をかけなかった。
急に声をかけられては、少女も怖いだろうと思ったから。
そして3日目の今日……
「あなた、いつもここに座っていますよね?」
遂に声をかけてみた。
虚ろな目で私の方を見てきた少女は、ただお辞儀だけをして私の横を通って行った。
もしかしたらもういないかもしれないと思った4日目、少女はまたブランコに座っていた。
「あの、余計なお節介かもしれないですけれど、何か悩みがあるのなら聞きますよ? 赤の他人だからこそ、話せる事というのもありますから」
「赤の、他人……」
「はい」
「言い得て妙ですね……」
少女が少し笑った気がした。
何が面白かったのか、私には分からない。
「お姉さんは、この辺の人ですか?」
「そうです。最近引っ越してきました」
「……でしょうね」
それは自分に話しかける人なんていないからという事だろうか?
私はまだ越してきて日が浅いから知らなかったけど、いつもここにいて当たり前の少女として、近所では有名だった?
「いつもここで何をしているんですか?」
「……時間潰しです」
「家に帰らないんですか?」
「……」
「帰れないんですか?」
「……」
「時間潰しなら、ここでなくともいいのでは?」
「……」
「私の家に来ます?」
「……お姉さんの、家に?」
「はい。同棲している彼氏がいるのですが、帰りはいつも遅いので……」
「……帰ります」
「そうですか……じゃあ、送りますね」
全然何も話してくれない少女に、自分がお節介な事をしているという自覚はあったけど、家までついていく事にした。




