無関心
犯人視点です。
とりあえず、金が用意できそうだな。
あとは受けとるだけ、しばらくは様子見だな。
今のうちにあいつ等に伝えておこう。
「おい、お前等。金の用意ができるみたいだぜ」
「マジか! すげぇな!」
「早いよな」
「あぁ、なんか軽い感じでOKだった」
本当に本の貸し借りくらいの感覚だったな。
「でもそれ大丈夫か? 何でそんな婆さんに金貸すのが、簡単にOKできるんだ?」
「ああ、なんか婆さんの知り合いのスノーフレークの奴が、社長の桜野奏海の友人だった」
「うぉっ! やったな!」
俺が仲間に連絡してたら、
「か、必ず2人を無事に帰してくれ……」
と、旦那がまた俺等の会話に割って入ってきた。
「あぁ、俺達は金さえもらえればちゃんと人質は返すさ。俺達の目的は金で、あんた等の命じゃねぇからな」
ちゃんと金さえ払えば、家族は帰ってくるんだって教えておかねぇとな。
そうすればまだ、2回目、3回目もつかえるからな。
折角見つけたスノーフレークの幹部との接点だ。
一応婆さんとスーツ学生の様子を確認する。
なにしてんだこいつら?
「悩んだりして、頭がいっぱいになった時とかは外の空気吸うといいんですよ。さぁ、深呼吸しましょう」
何かよく分かんねぇが、深呼吸をしてるようだ。
「どうですか?」
「大分スッキリできたわ。ありがとう」
「じゃあ気分転換に私の話、聞いて下さいます?」
「えぇ」
どうやら婆さんを落ち着かせるために、深呼吸をしていたみたいだな。
「実は今度、姉が彼氏を紹介したいと言ってまして……」
どうでもいい話しだしたな。
そんな話より、もっとスノーフレークの裏事情とか話せよ。
「お、おいっ」
「ん? どうした?」
「さっきまで気絶してた人質、目を覚ましたぞ」
「そうか」
スーツ学生のどうでもいい話は当分続きそうだし、スノーフレークの裏事情とかは話しそうにないしな。
旦那と話させてやるか……さっき話したがってたからな。
俺等の言う通りにすれば、ちゃんと自分達の要望も聞いてもらえるって思わせといた方がいいだろう。
「おい、お前の奥さん、目を覚ましたぞ。会話するか?」
「も、もちろん」
「分かってると思うが、でかい声は出すなよ。下に気が付かれないようにしろ」
「わ、分かってる」
「旦那が話してぇらしい。電話、渡してやれよ」
「おー」
俺は仲間と連絡してた携帯をスピーカーにして、旦那に渡した。
「も、もしもし? ……由佳?」
「こ、浩一さん?」
「由佳、無事か?」
「浩一さん、なんかよく分からないんだけど……知らない人がいて……ここも何処だか分からなくて……」
「陸は?」
「陸は隣にいるわよ……でも、まだ気がついてないみたいで……」
妻の方はいきなり気絶させて連れてったからな。
状況も何も説明してないし、何が何だか分からんだろうな。
「その、落ち着いて聞いてくれ。由佳達は誘拐されたんだ。身代金は5千万円」
「5千万円!? そんな大金、家には……」
「大丈夫、大丈夫だから……お金はなんとか用意してもらえた。だからもう少し頑張ってくれ」
「浩一さんは無事なの?」
「あぁ、大丈夫だ。こんな時に由佳と陸の側にいてやれなくてごめんな……」
「私の方こそ、何もできなくて……」
「いや、由佳は陸の側にいてやってくれ。陸が起きたらこの状況を怖がってしまうだろう……」
「そうね……」
「あと少しの辛抱だと思うから、頑張ってくれ」
何勝手にあと少しとか決めてんだ。
まぁでも、金が届いたら確実に帰ってくると信じてるんだろうな。
もちろん今後もこいつ等を活用するために、人質もちゃんと帰すつもりではいるが……
そういえば、もともとは金が入ったら人質は適当に放置していく予定だったから、帰す時の事なんて考えてなかったな。
どうやって帰そうか……
ん? 何か目の前を横切ったな? 何だ?
辺りを見渡したら、ハエが止まってた。こいつか?
まぁ別に放っておいてもいいか。
人ん家来てまでハエ退治してやることもねぇし。
「おいっ、もういいだろ。そろそろ返せっ!」
「きゃっ!」
「由佳っ!?」
「お前等、人質にあんま手荒なことすんなよ。大事な人質なんだから」
「ん? おう、分かってるって」
あいつ等が妻の方から携帯を取りあげたようだ。
俺も旦那から携帯を回収し、スピーカーを切った。
スーツ学生を確認すると、まだどうでもいい話してやがる。
さて、今のうちにどうやって人質を帰すか考えておくか。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




