檻
「はい、ここが今日からあなたの檻よ」
「随分と立派な檻ですね。監視は付くんですか?」
「さぁ? 付くんじゃないかしら? 私はそこまで知らないわ」
「あなた、名前なんだっけ?」
「"二番手"だそうですよ」
「ふーん、二番手ねぇ……」
赤い羊と呼ばれていた男、もとい二番手を部屋へと案内する。
一番手は乃々香ちゃんの事でしょうから、眼前の彼が二番手という名である事にはあまり違和感がない。
「あなたは一番手をご存知で?」
「えぇ、知っているわ。とはいえ、一番手は一番手という名ではないけれどね」
「罪人ではないという事ですか」
「そうね」
二番手は自分の仕事に誇りを持っている。
人の命をなんとも思わないクズではあるけど、スナイパーとしてのプライドがかなり高く、依頼を確実にこなしてきたという事を誇りに思っているのだから、使い道があると奏海ちゃんは判断したんだろう。
丁寧に喋るし、パッと見は好青年なので、どうにも相手にしづらいな……
「あなたの喋り方、どうにかならないの?」
「どうして欲しいのですか?」
「もっと粗雑でいいわ」
「分かった」
「素直ね」
「あんたを怒らせて何か特がある訳でもねぇし」
「そう」
こういう風でいてくれた方が話しやすい。
とはいえ、これは私に合わせてくれたという事でもあるのだから、私が誰だかは当然分かっているのだろう。
「知っていると思うけど、私は瀧沢よ」
「いいのか? 刑事が殺人犯をこんなところに野放しにして」




