料理面接
「こんな横暴! 許されると思ってるのか!」
遂に我慢の限界に達したみたいで、父さんがお嬢様を怒鳴ったんだ。
こうなった父さんを止められるのは母さんしかいないけど、あの日も母さんはいなかったから、僕はどうしたらいいのか分からなくて狼狽えてた。
でもそんな僕とは対象的なお嬢様は、
「あなたは確か、料理長さんでしたね。そんなにこの家で働きたいのですか?」
「この家云々がどうだとかいう話じゃなくて、横暴だっつってんだ!」
「横暴? 解雇後の1年保証では足らないと?」
「そうじゃねぇ! この家で自分の仕事に誇をもって働いている奴が何人いると思ってんだ。それをぽっと出のガキに有能かどうかを勝手に決められ、いきなりクビにされるんだぞ! そんな事が認められる訳ねぇだろうがっ!」
と、父さんと喧嘩を初めてしまったんだ。
互いに全く萎縮する事なく、堂々とした態度での言い合いだったよ。
そして僕にとってはどっちも恐かった
父さんはいつも通りに恐かったけど、お嬢様はなんかこう、ただの恐さじゃない何かがあって……
「そ、そうだ! そうだ!」
「横暴以外のなんでもない!」
「流石柾谷さん!」
父さんの言葉を受けて、他の皆さんの士気は高まっていた。
一致団結して、お嬢様と戦おうという感じにね。
だけどお嬢様は、その程度の意見で自分の考えを変えられるような方じゃない。
まぁ分かるとは思うけど。
「それだけ誇りを持てる仕事なのであれば、私に有能だと思わせる事も容易だと思うのですが?」
「あ?」
「有能なのですよね? でしたらそんなにクビにされる事に怯える必要はありません」
「誰が怯えるか! 俺はただ、横暴だっていってんだよ!」
「横暴……でしょうかねぇ? 会社が新体制になり、人の所属部署が変わる。中には新会社には不必要となる部署が出来たことで、クビとなるものも現れる。しかしいきなりの解雇では困るだろうと1年分の保証を……そう横暴には思えないのですが?」
「くっ……」
「落ち着いて、冷静に考えて見て下さい。これは本当に横暴ですか? あなた達は単に、いきなり現れたぽっと出のガキに驚いているだけなのでは?」




