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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode10 少年誘拐被害者編

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約束破り

「おはようございます、高坂里香様」

「う、うぅん?」

「朝ですよ」

「……えっと?」

「おはようございます。昨日この桜野邸に泊まられたんですよ? 覚えていらっしゃいますか?」

「あ、あぁ……メイドさん?」

「はい。朝のお支度に参りました」

「え、そういうのはいらないです……」

「そうですか? では、扉の前に待機しておりますので、何かございましたお呼び下さい」

「そういうのもいらないんですけど……」


聞き慣れない声、見慣れない天井で目を覚ました事に気づくと、とんでもない現実が飛び込んできた。

そういえば昨日はこのとんでもない家に泊めてもらったんだった。


コンコンッ!


「え、はーい」

「高坂? 邪魔するぞ?」

「あ、詩苑君……って、ちょっと待って! 私今寝起き!」

「あぁ、うん。朝ご飯の案内に来ただけだから……」

「恥ずかしいからあんまりこっち見ないで」

「……食堂でお嬢様と食べるのと、ここで食べるの、どっちがいい?」

「その2択しかないの?」

「遅くなってもいいんなら、僕と食べるっていうのもあるけど?」

「じゃあそれで!」

「分かった」


詩苑君はそれだけ確認して部屋から出ていった。

コック服、着てたな……

今の私はこの桜野家のお客様という立ち位置だから、こういう扱いなんだろう。


「あの、このお屋敷内の見学とかってしてもいいんですか?」

「構いませんが、入室禁止の部屋もありますので、私がご案内致しますね」

「ありがとうございます。えっと……」

「私は楓です。神園楓」

「神園って事は、あの神園さんの娘さんですか?」

「ご明察ですね!」


神園さんの娘さんも、この家でメイドさんをやってたんだ。

使用人さん用の屋敷の方にはわりとお邪魔させてもらっていたけど、今まで会った事がなかったから知らなかった。


「こちらの部屋には骨董品が飾られています。興味はございますか?」

「あんまり……」

「こちらの部屋にはジュエリーが」

「おぉ! ピカピカですね!」

「着けてみますか?」

「け、結構です……」


朝ご飯は詩苑君を待つ事にして暇になったので、楓さんに桜野家内を案内してもらってるんだけど、凄い部屋が多すぎて言葉がなくなってしまう。

しかも楓さんはどこか楽しそうに私をからかっているようで……

この雰囲気は昨日の奏海様とそっくりだ。


「ん? ちびっちゃいの。久しぶりだな!」

「あ、くー兄!」

「詩苑に会いに来たのか? なんでこっちにいるんだ?」

「色々あって……」

「昨日の絡みか?」

「そうですよ、空音様。ですから歴としたお客様です」

「そうか」


昨日の奏海様の話を聞いてるから、くー兄が今までとちょっと違って見えてくる。

くー兄は基本的に子供っぽくて、私達とも楽しく遊んでくれるお兄さんって印象だったんだけどな。


「どうした? 俺の顔になんかついてるか?」

「ううん。そういうのじゃなくて……昨日、奏海様とたくさん話したから……」

「あ? 奏海?」

「その、くー兄って奏海さんと幼なじみなんだったよね?」

「そうだぞ?」

「奏海さんって、くー兄からするとどんな人?」

「は?」

「なんか、昨日奏海さんとたくさん話してたら、印象が結構変わっちゃって。怖い人だと思ってたけど、結構可愛いところもあるような……」

「奏海は昔っから可愛いぞ? 怖い時なんてあったか?」

「えっと……」

「まぁたまに怒ってる時とかはあるけど、それは相手を心配してるから怒ってるだけなんだよな。それに完璧主義の負けず嫌いだから、なんかちょっとでも失敗したりするとすっげぇ落ち込むし、人の話聞かねぇし、無茶ばっかりするし……」


なんか最初は褒めてるのかなって思ったのに、段々と文句ばっかりになってる……


「でも、初めて会った時からずっと優しい奴だよ」

「奏海さんの事、好き?」

「あぁ!」

「告白しないの?」

「してるさ」

「してるの?」

「毎日してる。なんならさっきもしてきた」

「で、奏海さんはなんて?」

「無視だった。照れてんだよな、可愛いなぁ」


昨日の奏海様の発言を聞いていなかったら、くー兄の事をただのバカだとしか思わなかったけど、違うんだ。

奏海様もバカだ。

好きな人が告白してくれてるっていうのに……


私が約束を破ったら、奏海様も破るかな?

内緒って言われた奏海様の気持ちを勝手に伝えたら……

でも、このままでいい訳がないっ!


「くー兄、聞いて! 奏海様はくー兄の事好きだよ! 大好きだよ!」


自分が凄く余計な事をしてるっていう自覚はあったけど、それでもちゃんと伝えておかないといけないと思った。

当事者どうしでは拗れてしまう問題も、第3者が介入する事で解決する場合もあるって知ってたから。


だけど、くー兄は、


「ありがとな、知ってるよ」


と、少し悲しそうに笑うだけだった……


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