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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode2 友人の宝誘拐編

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29/292

電話

犯人視点です。

 カメラを仕掛けたテーブルに戻ってきてすぐ、


「そういえば、これよ。最近の陸君の写真」


と、婆さんが自分の携帯をスーツ学生に渡した。

 もちろんカメラに画面を見せながらだ。

 ちゃんと分かってるじゃないか。


「わ~、可愛いですね。こうして並べてみると、成長がよく分かりますね」

「そうなのよ」


 リビングの別の写真と比べてるのか、スーツ学生は婆さんが喜びそうな事を言う。

 流石は普段から年寄りとのお話なんて仕事をしてるだけはある。


「こっちの写真はまだ陸君が生まれる前ですか?」

「ええ、これはあの人の生前ね。まだ陸君が生まれる前で、浩一と由佳ちゃんが結婚したときの写真よ」

「じゃあ、この方が息子さん?」

「ええ、こっちが由佳ちゃん。由佳ちゃんもね本当に浩一には勿体ないくらい良い子なのよ」


 他人の家族の事なんてどうでもいいだろうに。

 スーツ学生はまるで本当に興味ありげに、婆さんとの会話を広げていた。


「はぁー」

「美代子さん?」

「あぁ、ごめんなさいね」


 急に婆さんがため息をつきやがった。

 まぁでも、丁度俺らが捕まえてる家族の話をしてたかな。

 泣くとかじゃないだけましか。


「大丈夫ですよ。その借金を返したらまたやり直せばいいんですよ。スノーフレークに返すのはいつでも大丈夫ですから。そんなに気を落とさないで下さい」

「え、えぇ……ありがとう紅葉ちゃん」


 変なタイミングでのため息だったし、怪しまれたかと思ったが、スーツ学生は借金返済を気にしてのため息だと思ったようで、婆さんを励ましている。

 スノーフレークに返すのはいつでもいいらしい。


 やっぱり元々金持ちが道楽で始めた会社だからだろう。

 5千万程度の金が減る事なんて、何とも思ってないんだろうな。

 スノーフレークの普通の社員とかなら違ったかも知れねぇが、このスーツ学生は社長の桜野奏美の友人みたいだし。

 金持ちもその友人も、金銭感覚狂ってるんだろう。


「あっ! 15時になりましたね。ちょっと電話してみますね」


 そう言って、スーツ学生は電話をかけ始めた。

 もうそんな時間になってたか。

 さて、ここからが成功か失敗かの瀬戸際だ。


「ああ、神園さん。四之宮です。奏海に繋いでもらえますか?」


 スーツ学生は電話相手にそう言った。

 神園さん? 誰だ? 友人なのに社長に直接かけるんじゃないんだな。


 いや、神園って聞いたことがあるな……

 たしか前にテレビで外国のデカい執事の大会で、10連覇して殿堂入りした凄腕執事が日本人で、桜野家の執事をしてるって言ってたな……

 それが神園だったはずだ。


 友人でも、社長と電話するのには執事を通さないたいけないのか。

 面倒くせぇな、金持ちって。

 あーあれか、電話に代わりに出て、ご主人様のところまで受話器を持ってくるのも、執事の仕事って事か。

 でも、芸能人とかもマネージャーが携帯に出たりするって聞いたことあるし、そういうもんなのかもしれねぇな。

 俺等とは無縁の世界だ。


「奏海? ごめん、ちょっとお願いがあって……ちょっと、5千万円ほど貸してほしいんだよね」


 おっ! 奏海に変わったようだ。

 スーツ学生は友達に本でも借りるような感じで、5千万貸して欲しいと言った。

 そんなんで貸してくれるのか?

 せめて何に使いたいとか言えよ。


「それは、私もそうだとは思うけど……うん、ごめん……」


 なんだ? 無理とでも言われたか?

 少し雲行きが怪しくなってきたな……


「うん。……そうだね、早い方がいいっていうか、今すぐだね。……うん、今度ちゃんと話すよ。……はーい」


 何話してんのか滅茶苦茶気になる。

 桜野奏海の声が聞こえればいいのにな。

 桜野奏海と言えば、メディア嫌いで有名で、ずっと人前に姿を現さなかったのに、この間の赤い羊を捕まえた件でついにニュースに顔が流れた。

 でもまだ、顔が公表されただけでどんな奴なのかは結局、なにも分かってない。


 今ここであの桜野奏海と電話してる奴を知れるなんて、本当にラッキーだ。

 スーツ学生の話し方で、桜野奏海がどんな奴か分かればいいが……

 スノーフレークがどんな会社か分かってれば、また別の作戦で金をとることもできるからな。


「りょーかーい。待ってるね、また連絡して」


 終始、友人から本を借りるノリのスーツ学生は、電話を切った。

 すぐに婆さんが駆け寄って聞いた。


「ど、どうだった? 大丈夫だった?」

「あ、はい、もちろんです。とりあえず用意出来たらまた連絡くれるそうなので、もう少しお待ち頂けますか?」

「あ、ありがとうっ! ありがとう紅葉ちゃん!」


 どうやら成功したようだ。

 にしても思った通り、金持ちは金銭感覚が狂ってるんだな。

 あんな短い電話で、本貸して、いいよみたいなノリで5千万が貸せるもんだなんてな。


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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