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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode10 少年誘拐被害者編

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リアルタイム

 アラン・スミシーに下された次の命令は、桜野奏海を殺す事。

 当然アラン・スミシーはそれを実行しようとする。

 そこに違和感を持つ事もなく、今まで通りに……


 だが、アラン・スミシーはこの命令を実行する事が出来なかった。

 それは桜野奏海が生きているという事実から誰もが分かる事だが、何がどうあってそうなったのかは分からない。

 桜野奏海が命令に順ずる傀儡を作る為の研究所を破壊した事や、アラン・スミシーだった男が"日下部"として桜野家で働いている事から、アラン・スミシーが桜野奏海の手駒となった事は分かるが、何故そんな事が桜野奏海に出来たのか?


 そもそもアラン・スミシーはただの傀儡だ。

 命令に順ずる以外の事を出来ない傀儡に、殺しにきたところを説得したとて、その説得を理解する事はない。

 となれば、答えは1つ。

 桜野奏海もまた、傀儡を利用したんだ。


 元の洗脳を上書きする程の洗脳によって、桜野奏海はアラン・スミシーだったものを、日下部へと塗り替えた。

 高校生の少女にそんな事が可能なのかという疑問は、桜野奏海だからというその一言で片付けられてしまう。

 何しろ、あれだけの組織を一夜にして潰した、スノーフレークという化け物の集まりの代表なのだから。


コツコツコツ……


 革靴で歩く音が近づいてくる。


「こんばんは、いい夜ですね」

「あぁ、本当にいい夜だ」


 紺のスーツを着た長身の男性。

 これだけスーツを着こなしている男をまだ成人前だとは、誰も思わないだろうな。

 特に、スーツから少し見えている白いシャツに、赤い液体が飛んでいるあたりが、なんとも子供らしさを奪っている。


「逃げないのですか?」

「特に逃げる必要はないと思っている」

「何故です?」

「君では私を捕まえられないからだよ、()()()君」


 私に名を呼ばれた事で、朝桐真の顔が少し歪んだ。

 常に本名を隠しているからこそ、何故私に本名を知られているのかと疑問に思ったのだろう。


「俺達の事、随分と調べたみたいですね」

「当然だろう? 何しろ一度負けているのだから」

「もう負けないようにと? 残念ですが、今度もそちらの負けですよ? それもただの負けじゃなく、惨敗です」

「惨敗か……それは困ったな。私も逃がさないという事か」

「そうですね。前回はあなたに逃げられてしまいましたから」


 前回逃げれたのは、ある種奇跡だったといえる。

 そしてそんな奇跡はもう起こらないんだろう。

 だからこそ、スノーフレークを徹底的に調べたんだ。


「私が今回も逃げられると思っている一番の理由は、桜野奏海氏と栗林乃々香氏がいないからだ」

「確かに乃々香はいませんが、ボスは帰ってきますよ。なんならもう帰ってきて、あなたが起こした迷惑への対応を終えている頃です」

「そうだろうね、そしてそろそろ……」

「そろそろ、なんです?」


 警戒しつつも近づいて来た朝桐真に、私は映像を見せた。

 それは、日下部だった男が、アラン・スミシーに戻るという、リアルタイム映像だ。


「なっ……」


 朝桐真の驚いた顔……


 桜野奏海がアラン・スミシーにどんな洗脳を上掛けした野かは分からない。

 しかしそれが洗脳なのだと分かっていれば、更なる洗脳の上掛けは可能だ。


 あの傀儡は、日下部だろうがアラン・スミシーだろうが、所詮は傀儡に過ぎないのだから。

 

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