巻き込まれ
高坂さん視点です。
「高坂さん。本当に、申し訳ございません」
「え、もういいですって。さっきから何度も謝り過ぎですよ!」
「いえ、今のは謝罪の先渡しです」
「え?」
ボロボロの建物から出て少し歩いたところで、とって豪華な車に乗せてもらった。
運転手は執事の神園さんで、後ろの席の奏海様の隣に私、その反対の隣に詩苑君という形で座っている。
そして奏海様はまたしても私に謝ってこられている。
でも謝罪の先渡しってなんだろう?
私はこのあとも何かに巻き込まれるって事なのかな?
「お嬢様。高坂は家に返してやっても……」
「襲われた家に返すつもり?」
「あ、その……せめてホテルに……」
「時間を無駄にしたくないの」
「はい、すみません……」
「え、え? どういう?」
「高坂さんには大変申し訳ないのですが、これから桜野家に一緒に来ていただきます。本日は泊まって下さいね」
「はい……ありがとうございます?」
私からするとあんな豪華なお屋敷に泊めてもらえるのなんてありがたい事だけど、詩苑君はかなり嫌そうだ。
どうしてだろう?
何か私に来られたら困ることでも?
そんな事を考えてもんもんとしていると、あっという間に時間は過ぎて、ついに桜野家に着いてしまった。
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「ただいま」
「詩苑君とお友達も無事だったんだね。良かったよ」
「ご心配おかけしました」
「あの、ありがとうございます」
桜野家の使用人の皆さんが迎えてくれる。
詩苑君が一緒にいてくれたからそこまで怖かった訳じゃないけど、安全な場所に帰って来れたんだという安心感がある。
「お嬢、詩苑、帰ったか」
「帰ったか、じゃないでしょ? なんなのあれ?」
「あれってなんだよ」
「ソンノイミディエイトの事!」
「何が問題だった?」
「分かりやすすぎるの! もっと捻りなさい」
「そんな必要もねぇ雑魚だってよく分かっただろ?」
「まぁね……」
奥から出てきた初めて見る男の人……
奏海様とかなり気さくに話しているし、この雰囲気……
「詩苑君のお父さんですか?」
「あ、あぁ……いつも詩苑が世話になってんな」
「いえいえ」
奏海様に対してもぶっきらぼうな感じだったけど、優しく笑いかけてくれた。
この人が詩苑君の憧れの人なんだな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




