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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode2 友人の宝誘拐編

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優しい言葉

美代子さん視点です。

 2階からした音は、犯人の男が箱を落とした音だった。

 浩一が何かされたとかではなくて安心したけれど、私の不用意な行動で犯人を刺激してしまった。

 もっと気を付けないと皆が……


「美代子さん、さっきの音は大丈夫でした?」


 階段を降りると紅葉ちゃんが心配してくれた。


「ええ、ごめんなさいね……ちょっとバランス悪く積んでた荷物が倒れただけだったわ……」

「でも美代子さん、顔色悪いですよ? 大事な物でした?」

「いいえ、大丈夫……大丈夫だから……あの、ほら階段上って疲れただけよ」

「そうですか?」

「ええ、戻ってケーキの続き食べましょう。そしたら私も復活するから」

「はい」


 もう絶対に犯人に怪しまれることはしない。

 ここだと、犯人のカメラに写らなくて怪しまれてしまう……

 私は紅葉ちゃんと、リビングのテーブルまで戻った。


「そういえば、これよ。最近の陸君の写真」

「わ~、可愛いですね。こうして並べてみると、成長がよく分かりますね」

「そうなのよ」


 紅葉ちゃんは私の携帯の写真と、リビングに飾ってある写真を見比べながら、そう言ってくれた。


「こっちの写真はまだ陸君が生まれる前ですか?」

「ええ、これはあの人の生前ね。まだ陸君が生まれる前で、浩一と由佳ちゃんが結婚したときの写真よ」

「じゃあ、この方が息子さん?」

「ええ、こっちが由佳ちゃん。由佳ちゃんもね本当に浩一には勿体ないくらい良い子なのよ」


 飾ってある別の写真を見ながら紅葉ちゃんが聞いてくれる。

 由佳ちゃん、陸君……

 お願いだから、無事でいて……


「はぁー」

「美代子さん?」

「あぁ、ごめんなさいね」


 思わずため息をついてしまっていた。


「大丈夫ですよ。その借金を返したらまたやり直せばいいんですよ。スノーフレークに返すのはいつでも大丈夫ですから。そんなに気を落とさないで下さい」

「え、えぇ……ありがとう紅葉ちゃん」


 紅葉ちゃんは私の不安を気にして、優しい言葉をかけてくれる。

 浩一が起業に失敗したという、私の嘘を信じてくれてる。

 違うのよ、私はあなたを騙してる。

 本当にごめんなさい……


「あっ! 15時になりましたね。ちょっと電話してみますね」


 そう言って、紅葉ちゃんは自分の携帯を取り出して電話をかけ始めた。

 もうそんな時間になってたのね……

 大丈夫かしら? ちゃんとお金、貸してもらえるかしら?

 そんな、紅葉ちゃんからお金を騙し取れるかを心配している私は、本当に最低だ……


「ああ、神園さん。四之宮です。奏海に繋いでもらえますか?」


 紅葉ちゃんは電話をしてる。

 神園さん……

 確か前に紅葉ちゃんから聞いたことがある。

 桜野家の執事長だったわね。


「奏海? ごめん、ちょっとお願いがあって……ちょっと、5千万円ほど貸してほしいんだよね」


 奏海さんに代わったみたいね。

 紅葉ちゃん、結構直球で頼むのね。

 何に使うとかも言ってないし、そういう感じで貸してもらえるものなのかしら?


「それは、私もそうだとは思うけど……」


 どうしたのかしら?

 急にだから無理とか言われたのかしら?


「うん、ごめん……」


 謝ってる……

 紅葉ちゃんは何も悪くないのに……

 本当にごめんなさい……


「うん。……そうだね、早い方がいいっていうか、今すぐだね。……うん、今度ちゃんと話すよ。……はーい」


 大丈夫なのかしら?

 電話相手の声は聞こえないから、余計に心配……

 紅葉ちゃんが怒られてなければいいけど……


「りょーかーい。待ってるね、また連絡して」


 最後にそう言って、紅葉ちゃんは電話を切った。


「ど、どうだった? 大丈夫だった?」

「あ、はい、もちろんです。とりあえず用意出来たらまた連絡くれるそうなので、もう少しお待ち頂けますか?」

「あ、ありがとうっ! ありがとう紅葉ちゃん!」


 無事にお金は用意してもらえるみたい。

 本当に良かった。

 あとは皆が無事に帰ってきてくれさえすれば……


「なんか、謝ってたみたいだけど、怒られたりしたの? 本当にごめんなさい……」

「いえ、全然大丈夫ですよ。急だったのでビックリされただけです」

「そう? 本当にごめんなさいね……」

「本当に大丈夫ですから。安心して下さいね」


 紅葉ちゃんは変わらず私に優しい言葉をかけてくれる。

 紅葉ちゃん……私にはそんな資格なんてないわ。

 いくら家族の為だからといって、あなたを巻き込み騙しているのだから……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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