そわそわ
高坂さん視点です。
ガシャンッ!
という、大きな音がして、リビングを見に行くと、知らない大人が何人もいて、いきなり捕まった……
そのまま気絶しちゃったみたいで、目が覚めたら詩苑君がいた。
「詩苑君!」
「高坂! 怪我はないか?」
「う、うん……」
詩苑君は私の心配をしてくれている。
周りにいるのはどう考えても桜野家の人じゃないし、私も詩苑君もこの人達に捕まっているんだと思う。
私達がこうして捕まっている事は、当然桜野家の人やスノーフレークの人達に伝っているはず……
それに家だって、あんな風にガラスを割られたら、防犯会社の人とかに伝わって、お父さんとお母さんも気付くはずだから、助けが全く来ないなんて事もあり得ない。
それでもやっぱり恐いな……
「おい、お前父親に連絡出きるよな? お坊ちゃんだし、携帯くらい持ってるよな?」
「ありますよ、はい」
「素直だな」
「断る事にメリットはなさそうですから」
詩苑君が恐い人から私を庇うようにしながら喋ってる……
「僕がこうして捕まったんですから、高坂はもう関係ないはずです。ちゃんと家に帰してあげて下さい」
「し、詩苑君……」
「そうはいかねぇな。だが安心していいぞ。奏海さえ捕まえたら、お前達は無事に帰してやる」
「お嬢様を?」
「それまではお前達をここに連れて来ている事を奏海に知られる訳には行かないからな。終わったらちゃんと帰してやるよ」
「そんな……」
私だけ帰されるとか、それはそれで恐いんだけど……って、詩苑君はそう言いながらもこの人を私に近づけさせないようにしてるみたいだから、今のは言っただけか……
よかった……
単にこの人達の狙いを知るための会話だったんだ。
恐い人は詩苑君の携帯を持って出ていった。
私達の事をみてる人はいなくなったけど、この部屋には窓もないし、外の様子も何も分からない……
「ごめんな、高坂。こんな事に巻き込んで……」
「だ、大丈夫だよ? 恐くないって言ったら嘘になるけど、詩苑君がいてくれるからね」
「あぁ、必ず無事に帰れるからな。ただ、ちょっと時間がかかると思う……」
「時間……?」
「今日、お嬢様出かけられてるから……」
奏海様さえ出掛けていなければ、すぐに解決していたみたいな言い方だ。
でも、時間がかかるってだけで助かる事は確信してるみたいだし、そんなに気にしなくてもいいのに……なんだろう?
なんか、変な感じに心がそわそわする。
そもそもあの恐い人達は奏海様を狙っているみたいだった。
だから巻き込まれたのは詩苑君もだし、詩苑君が謝るのも変だと思う。
「奏海様、いつ頃帰ってくるの?」
「結構遅いと思うぞ。それに、今日のお出掛けは連絡のつかないところだから、帰って来てから連絡を聞くことになると思うし、ここまで来てくれるのには時間がかかると思う……」
「そんなに遅いの? でも桜野家の人とか、スノーフレークの人って、凄く強いんだよね? だったら奏海様がいなくったって、他の人達が助けてくれないかな?」
「うーん……ちょっと厳しいと思う。さっきの奴等、変だから」
「変?」
「凄くバカだって事だよ」
そりゃこんな誘拐とかしてる悪い人達だし、普通じゃない人だって事は分かるけど、それをバカだなんて……
「どう言ったらいいか分からないけど、計画が杜撰過ぎるんだ」
「ずさん?」
「雑って事だよ。高坂を誘拐するなんて、騒ぎが大きくなるに決まってる。それなのにスノーフレークにバレないように行動してるし、連絡をしたかったのは僕の親だけみたいだし……」
「それが、雑なの?」
「うん。派手に動けば色んな人に介入される。だから狙いがお嬢様なら、最初から僕だけを狙っておいた方が良かったはずだ。それなのに高坂を巻き込んで……」
私には難しくてよく分からない……
でも、あの恐い人達がやってる事が無茶苦茶だっていうのは分かった。
「それに何より、日下部さんの事をしっていた……」
「へ?」
「これは僕の予想だから、間違ってるかもしれないけど、多分さっきの人達は捨て駒だ」
「捨て駒?」
「あの人達の裏にもっと頭のいい人がいて、その人が自分の作戦の為にあの人達を利用してるって事。スノーフレークの人はすぐにそれに気付くだろうし、日下部さんの事も含んで考えると、お嬢様に頼るのが一番安全だ。僕等を確実に助けるためにも……」
「う、うん……」
「だから本当にごめんな……お嬢様が来てくれるまで長いと思うけど、頑張ってくれ……」
詩苑君が言ってることを全部しっかりと理解出来た訳じゃない。
でも、奏海様の事を凄く信頼して、信じてるって事は良く分かった。
……この胸のざわめきは、本当になんなんだろう?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




