強硬
詩苑君視点です。
「今日は本当にありがとう、ご馳走さまでした!」
「おう!」
「今度は邪魔しないように頑張るから、安心してね!」
「き、気にしなくていいって……」
「日下部さんも、ありがとうございました~!」
レストランの視察が終わって、家の近い順に将大、高坂、早瀬と家に送り終わった。
まぁ送ってくれたのは僕というよりは、運転手の日下部さんだけど。
「今日は奏海様もお帰りが早いそうだから、帰ったらすぐに報告出来るよ」
「そうですね」
「いいレストランだったんだよね?」
「総合的にはそう思いますよ。あくまでも、僕の意見ですけど」
「詩苑君がそう思ったのなら間違いないさ」
日下部さんとそんな楽しい話をしながら過ごしていると、車通りの少ない道に入ってすぐに、
ドンッ! ガガッ!
と、大きい音がして、車がガクッとなった。
「まさかここまで強硬してくるとはね……」
「なんとかなりそうですか?」
「……なんとかするさ」
おそらく撃たれたか何かで、車のタイヤがパンクさせられたんだろう。
このまま走っているのも危ないので、車を止めて降りた。
日下部さんも一緒だし、大丈夫だとは思うけど、やっぱりこういうのはちょっと怖いな……
「意外と素直に降りてきたな」
「あなた達ですか、こういう事をされたのは」
車を降りてすぐ、ざっと見ても30人くらいの人達に囲まれた。
日下部さんは僕を庇うように立って、この怖い人達と対峙してくれている。
「そのボクちゃんを渡してもらおうか?」
「お断りさせていただきます」
「お前にお断りする権利なんてないぞ? アラン」
「なっ!」
アラン……それは日下部さんの本名だ。
日下部っていうのは、仕事用としてお嬢様がつけた名前であって、本当はアランさんだから……
でもそれを知っている人なんて、お嬢様に信用されている極僅かな人だけなはずなのに……?
「詩苑君、これは想定外だ……」
「そうみたいですね……」
「申し訳ないけど、ちょっと乱暴させてもらっても?」
「僕は構いませんけど、いいんですか?」
「後で奏海様に怒られる事にするよ」
「はい」
僕の返事を聞いてすぐ、日下部さんは僕を肩に担ぐようにして、走り出した。
片手で襲って来た人達を倒しながら、走り抜けていく。
僕は重い方じゃないし、身長もそこまでないから、担ぎやすいだろうけど……
こういう時は本当に、なんとも情けないな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




