思考
高坂さん視点です。
「ね、ねぇ……ナイフとフォークって、どれ使えばいいの?」
「愛依ちゃん、これは外側から使っていけばいいんだよ」
「お、おい詩苑……この水、飲んでいい奴か? それとも……」
「いい奴だ」
「しゃあっ!」
「ちょっと、そんなガブ飲みしないでよ! 恥ずかしいなぁ……」
とまぁ、そんなこんな問題はあったけど、私達はとても美味しいレストランの料理を食べ終わった。
詩苑君はこのレストランの評価をしないといけないからだろうけど、ずっとスマホに何かをメモしてる。
私達は正直、暇だ。
「詩苑君ってただの使用人じゃなくて、こういう仕事も任されるんだね」
「うん。前にもレストランの視察はあったよ。ここまで高級のじゃなかったけど」
「奏海お嬢様にそれだけ信頼されてるって事だよね! 凄いね!」
「確かに凄いけど……」
「どうしたの?」
「あ、ううん。なんでもないよ」
それだけ信頼されているからこそ、奏海お嬢様の情報を外で喋ったりしないのも当然だ。
だから詩苑君がレンの事を教えてくれなかったのも当たり前で、私が気にする事じゃないのに……
なんでかな?
さっき吹っ切れたはずなのに、まだ引っ掛かってる……
「でも、俺はアイツ苦手だな」
「え?」
「将大、お嬢様への侮辱は許さないぞ」
「ほらでた。なんであんな怖い奴を庇うのか、俺には理解出来ねぇよ。こうして上手いもん食えるのは、ありがたいと思うけどさ」
将大君がちょっと奏海お嬢様の事を悪く言っただけで、詩苑は凄く怒る。
詩苑君にとって奏海お嬢様がとても大切な人だというのは分かってるし、怒るのも当然だとは思うけど……何だろう?
まぁまぁよくある事なのに、今日はやけに気になっちゃうな?
「将大君は奏海お嬢様と会った事があるの? あ、里香も?」
「会った事があるっていうか、少しすれ違っただけというか……」
「いきなり現れて、"詩苑、おかえりなさい"ってな」
「それのどこが怖いの?」
「雰囲気」
「ふーん……」
これに関しては私も将大君と同意見だ。
詩苑君から聞いていたような優しさなんて一切感じない、とても冷たい人に見えた。
なんなら幽霊とか鬼とか、そういう存在だと言われた方が納得出来ちゃうくらいに怖かった……
でも、そのあとでプルルスが奏海お嬢様の肩に飛び乗っていたから、優しい人だというのも分かったけど。
「お嬢様の優しさは、あの桜野家にいないとなかなか分からないとは思う。でも、本当に優しいお方だから!」
「そうなんだー」
詩苑君がここまで奏海お嬢様を大切に思っているのには、きっかけになった話がある。
でもそれはずっと教えてくれない。
奏海お嬢様と詩苑君が出会ったのは、私と詩苑君が出会ったよりも後のはずなのに……
私の方が奏海お嬢様より詩苑君の事を知っていたはずなのに……
……って、なに考えてるんだろう?
なんかやっぱり、今日は思考が変なのかもしれない……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




