意外
稔さん視点です。
「では、質問を開始させていただきます」
「はい、なんなりとどうぞ。といっても、僕が皆さんの期待に答えられるかどうか、心配ではあるんですが……」
「大丈夫ですよ」
って、なんだこの茶番……
さっき奏海の部屋に入ってきた蓮也を見ているせいで、目の前のレンに対しての違和感が凄すぎる。
「レンさんは、スノーフレークの一員だったという事なんですよね?」
「そうです、僕と奏海ちゃんは幼馴染みですからね。奏海ちゃんがスノーフレークを起業した時に、僕を含む幼馴染み全員を雇ってくれたんですよ」
「では、スノーフレークには他にも幼馴染みの方がいらっしゃるんですよね?」
「先日の記者会見に一緒に出ていた葵ちゃんもそうですね」
「なるほど……」
そんなこんなで、既に聞いたような情報を聞かせてもらい終わった。
蓮也は無茶苦茶な奴に見えていたが、しっかりと切り替えの出来る奴みたいだ。
「では、以上となります。ありがとうございました」
「こちらこそです。ありがとうございました」
ピッ
そうして記録用のレコーダーを切ってすぐ、
「ううぇー、だるー」
と、蓮也はテーブルに足を上げ、ソファにだらしなくもたれた……
「変わりすぎだろ」
「だってなげぇんだもん」
「出きるだけ短くした方だ」
「一応言っとくけど、もっと短くしねぇと奏海に怒られるぞ。あいつは無駄な時間とか嫌いだし」
「めんどくせぇ奴等だな」
ここは桜野家の一室だ。
とりあえずレンの独占取材をと部屋を借りたが、このあとは奏海の取材もさせてもらう事になっている。
だが、今ので長いと言われたら、奏海に聞ける事なんて殆どなくなっちまう……
「お前は奏海と仲いいのか?」
「あ? そこそこー」
「それならお前が奏海の言いそうな事を教えてくれよ」
「はっ、そりゃ無理だ。俺に分かるのは奏海の言いそうな事だけだからな。"桜野奏海"の言いそうなことなんて知らねぇ」
「それは桜野奏海もまた、お前のレンと同じように演技だって事か?」
「あぁ、さっきの俺やあんたと話してる時の奏海が素だ。あいつだったら何質問してもめんどくせぇって答えるぞ」
「いや、答えねぇだろ?」
「答えませんよ」
「げっ、奏海……」
蓮也と話していると、奏海が部屋に入ってきた。
「なんなの、その足は?」
「あ?」
「そこは足をおく場所じゃないんだけど?」
「この方が楽だからな」
「折られたいの?」
「……ほら、喧嘩っ早い。こういう奴だ」
蓮也は仕方なしといった様子で足をおろした。
にしても、意外だな……
「なぁ、なんで蓮也はスノーフレークに入ったんだ?」
「どういう質問だ?」
「正直、お前が奏海に従ってるのが理解できない。久我の兄ちゃんの息子だってのもあるし、自分がトップをとりたいもんじゃねぇのか?」
「あぁ、そういう事か。別に俺は奏海に従ってる訳じゃねぇよ。ただ、その方が面白そうだからやってるだけだ」
「今、足を下ろしたのは?」
「ここで奏海の機嫌を損ねるのがめんどくせぇから」
「だったら最初から足を上げないで」
「へーへー」
どこからどうみても不良とお嬢様なのに、本当に仲のいい友達のようにも見える。
幼馴染みだとは言っても、あの久我の兄ちゃんの息子なのに。
それに葵って奴とは仲が悪いって言ってた……ん?
素行が悪いのを認めない葵とは仲が悪いのに、これだけ厳しそうな奏海とはそこそこに仲がいいと言えるって事は……もしかして奏海って、素行が悪いのか?
さっきも足を折るとか、喧嘩っ早いとか言ってたし、よくよく考えたら、あの家で記者会見を見ていた時も、まぁまぁ口が悪かった。
これは意外な事実の発覚だな。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




