義理の弟
稔さん視点です。
「ただいま」
「お帰りなさい、あなた」
「パパー! お帰りー!」
20時半を過ぎたところで、俺は家に送ってもらった。
妻も娘も笑顔で迎えてくれた。
いつもよりも帰って来るのが遅くなってしまってはいたが、特に何とも思っていないみたいだ。
「その、色々あってだな……」
「えぇ、聞いたわ」
「聞いた?」
「あなたの弟さんからね」
「弟?」
今日のとんでもない出来事をどう説明すればいいのか悩みつつ話し出そうとすると、既に聞いたと言われた。
しかも俺に弟だって?
「スノーフレークから派遣されてきた人に、今日のあなたの帰りが遅くなるという話を聞かされてね。最初は驚いたのよ? あなたがあの記事を書いた事で、スノーフレークに変な風に目をつけられてしまったんじゃないかって……」
「あぁ、心配かけて悪かったな」
「でもその来てくれたスノーフレークの人がちゃんと説明してくれたの。だから大丈夫だったわ。家事もたくさん手伝ってくれてね、ほらピカピカでしょう」
「そうか……それで弟ってのは?」
「桜野奏海さんは、あなたの妹のような存在なのでしょう? だから奏海さんと将来結婚する自分は、あなたの義理の弟になるそうよ」
「はぁ?」
奏海と将来結婚する?
どこの誰だ? そんな奴は……いや、心当たりがあるな。
「今日来てくれてた人。柴崎空音君っていうの。奏海さんと恋人なんですって」
「それ、まだだぞ?」
「そうなの?」
「奏海は認めてない様子だったからな」
「あらあら、そうなのね! でも、既にあなたの事を"兄貴"って呼んでたわよ?」
「なんて奴だ……」
会ってない奴だから何とも言えねぇが、あの記者会見の時にも名前が出てた奴で、父さんと母さんも知ってるみたいだったな。
しかもあの奏海と結婚したいなんて思う奴なんだから、相当ヤバい奴でもある。
そんなのが家に来てたっていうのはなかなかだな。
「おにいちゃんが、マジックしてくれたんだよー」
「そうか」
「これもこれももらったの!」
「良かったな」
「うん!」
「とても優しい良い子に思えたけど、あなたも認めてあげないの?」
「俺が認めないも何も、奏海本人が認めてないんだからなぁ……だがまぁ、時間の問題だろうな。父さんもいつ挨拶に来るんだって言ってたし……」
「ふふっ」
挨拶、挨拶かぁ……
「なぁ、今度……」
「もちろん!」
「まだ言ってないぞ」
「わたしもじぃじとばぁばにあえるのたのしみー!」
「……そうか」
家族は変わらず受け入れてくれた。
今度は強引に連れて行かれるんじゃなくて、自分から帰ろう。
あの鈴蘭村へ……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




