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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode9 スキャンダルからの帰省編

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260/425

兄妹

稔さん視点です。

 俺からの質問に一区切りがついたからか、


「どうですか? いい記事は書けそうですか?」


と、奏海は聞いてきた。


「こんなの記事にしねーよ。お前は記事にされたいのか?」

「あまりしてほしくはないですよ。でもそれが稔さんの役に立つのなら、記事にして頂いても構いませんよ」


 奏海は元々、俺の事は信用してなかったんだ。

 だから今これだけ俺に自分の素性を話したのも、俺が誰にも言わないと思ったからではなく、話されても構わないからという事だったんだろう。

 してほしくはないと言いながら、構わないと思っているだなんて……


「俺は、家族の嫌がる事はしない」

「確かに千蔵さんも翠さんも、嫌がられるでしょうね。でも、これはなかなかのビッグニュースですよ? 鈴蘭村や秋崎家の事を書かずに桜野グループの事、主に桜野秀紀の事を書けば……」

「だから、家族の嫌がる事はしないって言ってんだろ! 俺は親だけじゃなくて、妹の嫌がる事もしたくねぇんだ!」

「……」

「……何か言えよ」

「……」

「お前にとって秋崎夫婦が親なら、お前は俺の妹って事だろうが!」

「……まぁ、稔さんがそう思って下さるならそうですね」


 若干の変な沈黙はあったが、奏海は俺の妹である事を認めた。

 その沈黙がなんだったのかが気にはなるが、俺を兄として認めたからには言わせてもらう。


「奏海、これはお前の兄としての意見だ」

「はい、何ですか?」

「今すぐに寝ろっ!」

「えっ……」

「朝からずっと寝てないだろ! なんなら朝も寝てないんだろ? 今すぐ、さっさと寝ろ!」


 俺はここね来る時に寝ていたが、奏海は全く寝ていない。

 そしてこいつのこの忙しさから考えれば、普段からあまり寝ていないであろう事も想像出来る。

 いくら奏海が超人とはいえ、そんな不健康な生活を続けさせる訳にはいかない。


「私はまだ仕事がありますので」

「そんなもん、後にしろ」

「眠いのでしたら、稔さんは寝ていただいて構いませんよ」

「俺はお前に寝ろと言ってるんだ」

「ですから……」

「奏海。妹ってのは、兄に逆らわないものだ」

「それはどこでの常識ですか? 私は兄というのが妹に逆らえないものだと認識しているのですが?」

「一緒だろ?」

「はい?」

「兄は妹に逆らえないのもあるし、妹は兄に逆らわないのもある。この2つは両立出来る」

「……なるほど?」


 逆らえないのと逆らわないのは違う。

 そして今のに納得した奏海は、俺の意見で論破できる。


「俺は散々お前に従って、する予定のなかった里帰りをさせられたんだ。妹には逆らえなかったからな。そんな兄の意見に、お前は逆らわないよな?」

「……分かりましたよ。では少し、仮眠させてもらいますね」

「あぁ」

「おやすみなさい、稔兄さん」

「……ばか。早く寝ろ」


 車内に置かれていたクッションを枕にし、目を閉じた奏海。

 心なしか、若干口角も上がっているように見えて、穏やかな印象を受ける。


 目の前にらあの桜野奏海が寝ているという異様な光景。

 もちろん目を瞑ってるだけで、まだ起きているんだろうが、それだけでもずっと起きてるよりは休まるだろう。

 さっきまでは騒がしかった車内が、急に静かになったように感じるな……


 そうして静かに車が走り続けて5分程たった時、


「稔様、ありがとうございます」


と、運転手の神園さんが小声で話しかけてきた。

 俺も寝ているかもしれない奏海に気遣い、一応小声で、


「何がですか?」


と返した。


「お嬢様を寝かせて下さった事ですよ。今、ご就寝されました」

「分かるんですか?」

「ええ、お嬢様の気配が変わりましたから。先程までは気を張っておられましたが、現在は落ち着いておられます」

「そうなんですか……」


 気配で寝たかが分かるとか、凄すぎるだろ……

 でもこの神園さんなら本当に何でもできるだろうからな、そこまで驚きはしない。


「わたくし共も、お嬢様には寝て下さいとよくお願いをするのですが、なかなか寝て下さらないのですよ。稔様のように、お嬢様に"寝ろ"等とは言えませんからね。本当にありがとうございます」

「俺もまさかあの桜野奏海に"寝ろ"なんて言う日が来るとは思ってませんでしたよ」


 本当に、一体どうやったら予想できたっていうんだ。

 自分とは全く無関係の芸能人と金持ちのスキャンダル撮ったら、いきなり自分に妹ができるなんて事を。


 だがまぁ、これもなかなか悪くないと思えてるんだから、不思議だよな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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