スーツ学生
犯人視点です。
婆さん家の2階で旦那を人質にしながら、仕掛けたカメラの映像を確認する。
婆さんが電話で呼び出して、すぐにスノーフレークの女は来た。
確か婆さんが紅葉ちゃんとか呼んでいたが、その来た女を見て驚いた。
そいつはスーツこそ着ているものの、まだ学生だろ? ってぐらい若かった。
婆さんの話し相手、なんて仕事をしてるくらいだし、40代くらいのおばさんだと思ってたが……
まさかのまだ10代なんじゃないか? って感じだ。
まぁ、さすがに学生はないだろうし、20代前半くらいなんだろうが……
スーツ着たての学生にしか見えないし、スーツ学生でいいや。
「今日はお孫さんが来る日じゃありませんでした? 良かったんですか? 私がお邪魔してしまって」
「えぇ……その、ね……陸君は来られなくなって……息子の浩一だけ来たんだけど……」
「どうかしました?」
「紅葉ちゃん、その……お金を貸してもらえないかしら? えっと……浩一がね、起業に失敗しちゃったみたいで……」
おぉ、婆さんなかなか上手く言うじゃねぇか。
にしてもスーツ学生、ちゃんと婆さんの孫が来る日とか覚えてんだな……
「それは大変でしたね。息子さんは今どこに?」
「あ……ゆ、友人とか他に誰か頼れる人はいないか、探しに行ったわ」
「そうですか……それで、おいくらほど必要何ですか?」
「ご、5千万円……その、今日中になんだけど……」
「5千万ですか……それはまた、なかなかですね」
「い、今すぐは無理だけど、必ず……必ず返すからっ! その……貸してもらえない?」
いい感じだ。
これならスーツ学生も誘拐だなんて全然思わないだろう。
婆さんが多少おどおどしてるが、急に息子に金をたかられて困ってる親って感じで丁度いい。
「うーんと、スノーフレークにお金の依頼という事にになると、結構手続きとか色々ありまして……それに確実に返してもらうために、生活にも制限させて頂くことになっちゃうんですよ」
と、スーツ学生がいった。
さすが、何でも屋スノーフレーク。
金貸しもやってるみたいだな。
なんかややこしい事を言い出したな。
貸した金を絶対に返してもらう仕組みって訳か。
どうするか……
「そ、そうなの? じゃあ……やっぱり無理?」
「いえ、他ならぬ美代子さんからのお願いですからね! 大丈夫です。私がなんとかしましょう」
え? まじか、なんとかなるのか?
「え? なんとかなるの? 5千万円なんて……」
婆さんと、同じ事を思っちまった。
「ええ、なんとか交渉してみます!」
よし! やっぱりな、思った通りだ。
スノーフレークは今、イメージダウン中だからな。
客、1人1人を大事にしないとな。
にしても上手い事を言うな、スーツ学生。
他ならぬ美代子さんからのお願いだぁ?
まるで"あなただけ特別です"って感じだな。
「その……頼んでおいて申し訳ないけど、紅葉ちゃんのスノーフレークでの立場とかに影響しない? 大丈夫?」
「美代子さんは心配性ですね。大丈夫ですよ」
余計な事言ってんじゃねぇよ。
スーツ学生のスノーフレークでの立場とか、どうでもいいだろ……と、俺は思ったが、次のスーツ学生の発言で驚いた。
「とりあえず15時までは奏海も会議があるはずなので、15時になったら電話してみます」
は? 奏海に電話って……
奏海ってアレだよな? スノーフレークの社長の……
このスーツ学生、社長に直接頼もうとしてんのか?
なるほどな、だからか。
婆さんがスーツ学生のスノーフレークでの立場を気にしたのは。
このスーツ学生、スノーフレークでは結構偉いやつなんだな。
なにしろあの社長と直接話せるんだからな。
つまり俺達はとんでもねぇ金脈堀当てたって事か!
ラッキーにもほどがあるぜ!
どうやら今、社長の奏海は会議中らしい……
連絡するのは15時からって事になった。
ブブーッ、ブブーッ
っと、俺の携帯だな。
「おい、どうした?」
「監禁場所に到着したぜ」
「お、りょうかーい」
「なら、こっからはずっと携帯は繋ぎっぱなしでいくぞ」
「おう、何かあったらお互い連絡な」
「人質、2重にしといてよかったな」
「おう。あとな、スノーフレークの金の交渉は15時からになったぜ」
「おー、順調か?」
「今んとこな」
俺が仲間達と連絡をとってると、
「……由佳と陸の……声を、声を聞かせてくれないか? せめて声を聞いてちゃんと2人とも生きてるか確認したいんだ……」
と、旦那が言ってきた。
「おい、人質と電話代われるか?」
「いや、まだ気絶中だ。スタンガンで眠らせたからな」
「まだ気絶してて、電話は代われないってよ。どうする? 無理矢理起こしてやってもいいが」
「いや、やめてくれ。乱暴はしないでくれ……」
「そうかよ」
「なんで……なんで家だったんだ?」
急に人質と電話代われだの、質問だの……
この旦那、自分も人質だって自覚ねぇのか。
「たまたまだよ。たまたま、あの婆さんがスノーフレークと知り合いって知ったんでな。まぁ、恨むんなら俺らじゃなくて、スノーフレークを恨んどけよ」
「あんた達の狙いは最初からスノーフレークって事か?」
「そうだな」
まさか、社長に直談判できるほどの大物だとは思わなかったが。
てか、それなら1億とかいけたんじゃね?
まぁあまり欲出してもな……
今回上手く行けば、2回目も狙えるし、折角見つけた金脈だ。
これからも有効活用していくとしよう。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




