表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode9 スキャンダルからの帰省編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

258/425

私達の夢

稔さん視点です。

 あの桜野奏海が何故俺の両親と家族のように過ごしているのか。

 その疑問を解決すべく奏海に聞くと、俺の両親が奏海の育ての親だと言ってきた。

 奏海は3歳の時、桜野グループ前会長である桜野秀紀に捨てられ、父さんに拾われたのだと……


 わざわざこんな嘘をつく必要はない。

 つまりこれは事実なんだろう。

 だが、それなら何故今は奏海が桜野グループ会長となり、桜野家の代表をしているのか?

 それが理解できない。


 自分を捨てた家に、恨みで復讐するというのなら分からなくもないが……


「お前は、なんで桜野家に戻ったんだ? そんなお前を捨てたような奴等、二度と会いたくないものなんじゃないのか?」

「桜野家に戻った理由、ですか……まぁ、単にお金の為ですね」

「金の為?」

「そうです。"私達の夢"を実現するにはお金がたくさん必要でしたから。自力で集められない事もなかったんですが、簡単に大金が手に入るのなら、それを利用した方が早いですからね」


 簡単に手に入る大金……

 桜野秀紀には、奏海を捨てたという弱味がある。

 それ理由に脅せば、確かに簡単に大金は手に入れられるだろうが、だったら投資家として利用すればいい。

 わざわざ奏海が桜野グループを継ぐ必要なんてない。


「その"私達の夢"っていうのはなんだ?」

「スノーフレークの事ですよ。アレは私達の夢を実現したものです」

「スノーフレークを作る資金が欲しかったって事だよな?」

「はい」

「それは、桜野家に戻らなくても手に入るだろ? それなのに戻ったというのは、その……復讐なのか? 自分を捨てた事に対する……」

「そう思えますか?」

「いや、思えねぇから聞いてんだよ」


 奏海が桜野グループ会長になってから、桜野家の全員がメディア出演をしなくなった。

 色んな噂は飛び交っているが、どれも確証のない話ばかりで、全く信憑性はない。

 だが奏海が捨て子であり、桜野家を良く思っていないという事実が加われば、奏海が桜野家の全員を追い出して桜野グループそのものを乗っ取ったという可能性も出てくる。

 金が必要だったとも言っているし、戻った理由としても捨てた復讐としか考えられないとは思うが……


 今日、俺の両親と過ごす奏海を見たからだろうが、どうもそれは違う気がする。

 こいつは桜野家に復讐なんてしていないような……?

 だからといって仲良く暮らしている訳もないよな……?


「確かに桜野家に戻らずとも、資金援助を得る事は可能です。ですがそれでは、限界値が小さいんです」

「限界値?」

「桜野家がスノーフレークへ援助できるお金の限界ですよ。例え総資産の9割を援助してもらう約束が出来たとしても、総資産が少なければ得られる金額は大したものにはなりません」

「だからまずは総資産を増やす為に自分が桜野家に入ったって事か?」

「ご理解が早いですね」


 こんだけイカれた奴なんだし、元手がそれなりにあれば金を相当な額に増やす事は可能だ。

 スノーフレークへ送れる金をより多くする為に桜野家に戻ったというのも分かる。

 だが、あれだけ父さん母さんと仲良く話してたんだ。

 どう考えても戻りたくなんてなかったろうに……


「稔さんが気にされているのは、前桜野グループ会長の行方ですか?」

「あ、あぁ……」

「桜野家の皆さんは今、海外で暮らしています。桜野グループが保有するダイヤモンド鉱山の管理を主な仕事としながら、家族4人で平和に暮らしていますよ」


 奏海は変わらず淡々と話してくる。

 家族4人というと、奏海の両親と姉と兄の事だろう。

 海外で平和に、か……

 自分を捨てた奴等に対して、何を思ってそうさせているんだろうか……


「前会長とは会わないのか?」

「もう5年程、直接はお会いしていません。ダイヤモンドの生産報告の際に秀紀さんと話す事はありますが」


 秀紀さん……

 実の父親を名前で呼ぶというのは、やはり親だとは思っていないからか?

 だが、親だと思っていると言った俺の両親の事も千蔵さん、翠さんと呼んでいたからな……


 いや、それよりも……


「待て、5年会ってないだと?」

「はい」

「お前が桜野グループ会長の座に就いたのは、去年だろう?」

「おや、よくご存知で」

「これでも一応記者なもんでな」


 奏海がスノーフレークを立ち上げたのは5年前、奏海が中学生になった年だ。

 そこから3年間でスノーフレークを大企業とした功績を認められ、奏海が高校生になった去年に桜野グループの会長も奏海になったんだと言われている。


 会長不在で会長の引き継ぎなんて出来る訳がない。

 だから奏海は去年、秀紀と会っているはずなんだ。

 それなのに会っていないとなると……


「鈴蘭村を出たのも5年前か?」

「そうですね」

「5年前、桜野家に戻ってきたお前は、桜野グループの全権限を乗っ取った。そしてスノーフレークを設立した……去年会長の座に就いたと世間に報せているだけで、実際は5年前からお前が会長だったんだな」

「そうです。これが一番手っ取り早くお金を得る方法でしたので」


 この言い方……

 本当に桜野家に対しては、金を簡単に手に入れられる場所としか考えていないみたいだな。

 桜野家に戻った事に深い理由なんてなく、ただスノーフレークという夢を実現させる為の最短ルートを選択しただけって事なんだろう。


 これも全部、奏海の……いや、()()()()()である、スノーフレークの為だったって事か……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ