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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode9 スキャンダルからの帰省編

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予期せぬ客

秋崎稔(あきざきみのる)さん視点です。

「秋﨑! 本当にお前は我社の救世主だよ!」

「そんな、たまたまですよ。運が良かっただけで」


 そう、俺は本当に運が良かっただけだ。

 たまたま大人気タレントのレンを追っかけていたら、レンがスノーフレークの社長である桜野奏海と会ったんだ。

 そこを写真に収められたのは運だとしか言いようがない。


 2人共それなりの変装はしていたが、よく見れば普通に分かる程度のものだった。

 レンも芸能人とはいえ、まだ出たてだからだろう。

 奏海の方も、まさか自分がそこまで知られているとは思っていなかったんだろうな。

 ずっと素性を隠していた割には、迂闊な奴だ。

 やっぱりまだ社会に慣れていない高校生なんだろうな。


 俺が撮ったあの写真の記事のお蔭で、この会社は一気に有名になった。

 だから社長にも凄い感謝されている。

 こうして有名になった事はいいことだが、最近の世間の話題が全部このレンと奏海のスキャンダルについてばかりになってしまっているのは、流石に申し訳なく思う……


 俺が見ていた限り、2人は本当の恋人のようだった。

 世間で言われているような、奏海が金でレンを誘ってるなんていう関係じゃないと思う。

 仲睦まじい関係だと思えた。


 だがレンも奏海も、世間の話題を全く否定する事はなく静観している。

 既にあの記事からは5日経っているというのに。

 本当に恋人ならそう言えばいいし、違うのなら否定すればいいだけのはずだ……

 それなのに何にもしないから、将来有望な2人の若者の未来を俺が壊してしまったようで、あんまり素直に喜べないんだよなぁ……


「何っ! 本当か! おい、秋崎! 今日の夕方、レンと奏海が記者会見を開くらしい!」

「本当ですか! やっと……」


 あれだけ沈黙を決め込んでいたのに、遂に開く事にしたのか!

 それは期待して見なければ……と、意気込んでいたのが1時間前の事……

 今、俺は……この現実を受け入れられずにいる。


 何故、何故あの桜野奏海が、俺の目の前にいるんだ……?


「突然の訪問、大変失礼致します。秋崎稔さんですね?」

「あ、あぁ……」


 今日、この高校生は記者会見のはずだろ?

 何で俺になんて会いに来てるんだ?

 それもこんな堂々と……

 あの記事を書いた俺に、何か報復でもするつもりなのか?


「本日、お時間をいただきたいのですが?」

「い、いきなりそんな事を言われても、む、無理だ!」

「秋崎さんが抜ける事で業務に支障が出るとの事でしたら、当社の社員を使っていただいて構いませんので。どうか、本日1日のお時間をちょうだい出来ませんか?」

「……」


 随分と下手に出てきている……

 報復するつもりがあるようには見えないが……


「ど、どうぞどうぞ、秋崎にご用事なのですよね? どうぞ連れていって下さい」

「へ、編集長!」

「秋崎、相手はあの桜野奏海本人なんだぞ! これはスクープを掴むチャンスでもあるんだ」

「それはそうですけど、流石に怖いですって……」

「高校生相手にびびってどうする!? お前なら大丈夫だ! 安心しろ、骨は拾ってやるから!」

「あ、安心出来ねぇ……」


 若干編集長に売られた感もありつつ、俺は奏海に同行するかたちで、奏海の車に乗ることになってしまった。


「で、俺は何処に連れて行かれるんだ?」

「着いてからのお楽しみです」

「はぁ?」


 世間で言われているような冷たい印象とは違う。

 その辺にいる生意気な女子高生と変わらない印象だ。


「まだまだ時間がかかりますので、寝ていただいても構いませんよ? 軽食でしたらご用意出来ますし、お飲み物もそちらからご自由にお取り下さいね」

「……」

「私は仕事がありますので、有事の際にお声をお掛け下さい」

「……それは、小事で声を掛けるなという事か?」

「ご理解に感謝致します」


 やけに厚待遇かと思えば、俺に興味はないとでもいうように仕事を始めやがった。

 本当に今の状況に理解できない……


「あっ、なぁ? 今日1日とか言ってやがったよな? 帰りは何時くらいになるんだ?」

「未定ですね」

「は?」

「ですから、未定です」

「そんなふざけた話があるか! 俺にだって家庭があるんだ! 19時には帰る!」

「それはちょっと厳しいかと……」

「だったらお前に付き合わねぇ」

「それは困りますね」

「そこで止めてくれ。俺は降りる」

「……」

「おい、運転手!」

「……」

「彼は私の部下です。私の指示にしか従いません」

「なら止めるように言ってもらおうか?」

「お断り致します」


 一応俺の言葉に反論はしてくるが、奏海はずっとパソコンでカタカタとやっている。

 冗談半分で、適当な返事をしているようにしか思えない。


「秋崎さんのご家族には、当社の者が連絡に行っておりますのでご安心下さい」

「はぁ?」

「奥様にも娘様にも、ご不便なく過ごしていただけるよう、当社の者が担当しておりますので」

「それは脅迫か?」

「まぁっ! そんな風に聞こえてしまいましたか?」

「俺が逆らわなければいいってことか?」

「逆らわず、大人しくついてきて頂けると助かります」


 俺の家族も全部調べられてるって事か……

 こんな空気の中で落ち着ける訳はない。


 でも、とりあえずは従うしかないからな……

 ったく、俺は仕事でスキャンダルを撮っただけなのに、どうしてこんな目にあわないといけないんだ……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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