同級生
由佳さん視点です。
紅葉さんが慌てて帰っていかれた日から、3日経った。
あの週刊誌のせいで、今はどこもあの話題で持ちきりだ。
私が全然知らなかっただけで、あのレンという人は相当に人気な人だったんだな……
スノーフレークの方からは、何の説明もないらしい。
否定も肯定も何もないからこそ、あちこちで色んな憶測が飛びかっている。
高校生なのに桜野グループの会長とまでなっている奏海さんが謎が多い人だからこそ、あの地位にいられるのは体を売ったからだというような事まで言われている。
次はレンをターゲットにしたんだとか、レンは被害者で奏海さんが加害者だとか……
ただの熱愛発覚というだけなのに、まるで奏海さんが犯罪者かのような言われようだ。
本当にお付き合いしているのなら、そう言えばいいだけだろうし、違うのなら否定すればいいのに、どうしてスノーフレークは何も言わないんだろう?
紅葉さんがあんなに慌てていたというのも心配だし……
これは単なるスキャンダルじゃなくて、何か裏で陰謀的なものが渦巻いているんじゃ……
「緊急特番! 今巷を騒がせているあの話題についてー!」
つけっぱなしになっていたテレビが、急に特番に変わった。
しかも、タイムリーな事に奏海さんのニュースだ。
「我々取材班はなんと、奏海さんの小学生の頃の同級生だという方を発見致しました!」
小学生の頃の同級生……
顔はモザイク、声も変えられていて、誰なのかは全く分からない人がテレビに出ている。
「奏海さんは、本当に幼い頃から酷かったですよ。何でもお金で解決出来ると思っていたんでしょうね。格好いいと思った先輩や先生には、皆にお金を渡していました」
「えっと、小学生の頃の話ですよね?」
「そうです。小学生でしたが、少し大人びていて……同級生の私達の事は子供だとバカにしているような方でした。私達からしても、逆らった怖いお姉さんという印象で……」
なんだろう、このモザイクの人。
奏海さんを悪く言ってばかり……
「あら、奏海さんのニュースを見ているの?」
「お義母さん……」
「大丈夫よ、きっと大丈夫。紅葉ちゃん達の事だもの」
「そうですよね」
お義母さんは強い方だ。
紅葉さんだから絶対に大丈夫だと信じているんだろう。
私も大丈夫だとは思いたいけど、やっぱり不安がある……
こんなテレビでまで、奏海さんを悪く言っていては……
「中学生になってからも特に変わらずで……」
「ですが、その頃に桜野グループの会長の話や、スノーフレークの話もあったのではありませんか?」
「そういう事に関しては、私は詳しくありません。そもそも同級生だったあのお金持ちのお嬢様が奏海さんだと知ったのは、あのオークションのニュースを見た時でしたから」
「それまでは知らなかったんですね」
「はい。でも。いまにして思えば納得です。あんな、何でもお金で解決させていた人だったからこそ、スノーフレークを立ち上げたんでしょうから。それに今回のレンさんの事だって、お金で有名人と付き合えると思ったからこそでしょうね」
「やっぱりレンは被害者ですね」
「スノーフレークに助けられたという人は多いですけどね」
「その分お金を払ってますから」
「社員を囮にしていたとかも言われていましたし」
モザイクの人だけでなく、番組の出演者達までもが皆して奏海さんを悪く言っている……
正直、見ていられない。
「この人、嘘を言ってるわね」
「やっぱりそうですか?」
「紅葉ちゃんは奏海さんと中学生の頃からの同級生らしいからね。紅葉ちゃんから聞いている奏海さんの話からしても、そんなお金ばかりの人ではないわ」
「でも、私達がそれを言ったところで、世間には広まりませんよね」
「大丈夫よ!」
「……はい」
ピンポーン!
「あら? はーい、まぁ! 紅葉ちゃん!」
私の不安な気持ち蹴散らすような明るいお義母さんの声……?
紅葉さんが、来てくれた?
「先日はすみませんでしたー。お詫びも兼ねて、ドーナツをどうぞ~」
「あら、よかったのに」
「いえいえ、私が食べたかっただけですから!」
いつもと変わらない、明るく優しい紅葉さん……
「それで奏海さんはー」
「あ、ごめんなさい。消しますね」
「奏海のニュースをご覧だったんですね」
「すみません……」
「えっ! 謝るような事じゃないですよー」
「その……聞いていいのか分からないんですけど、これって……」
「あ、はいっ! もう解決しました!」
これからもっと騒がれていく事になるんじゃないかと心配していたけど、紅葉さんは解決したと仰った。
それならこれから落ち着いていくって事だろう。
嬉しそうにドーナツを頬張る可愛らしい紅葉さん……
その様子に本当に解決したんだと安心できた。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




