週刊誌
episode9になります。
由佳さん視点です。
今日は久しぶりに紅葉さんが遊びに来てくれる日だ。
忙しい紅葉さんにはなかなか会えなくて、最近のお義母さんは少し寂しそうだったから、本当によかったと思う。
陸もお姉ちゃんに会えるって楽しみにしてて、可愛い。
こういう平和も全部、紅葉さん達スノーフレークのお蔭なんだと、改めて実感した。
「じゃあお義母さん、私は買い物に行って来ますね」
「本当に1人でいいの? 大丈夫?」
「大丈夫ですよ! 紅葉さんもそろそろみえると思いますし、お邪魔しちゃ悪いですから!」
「そんな、邪魔だなんて事はないけど……」
「出来るだけ早く帰って来ますので、また私もお話にまぜて下さいね!」
「えぇ。気を付けて、いってらっしゃい」
「はい、いってきます」
心配してくれるお義母さんに挨拶をして、買い物にとスーパーにやってきた。
もしかしたら紅葉さんも一緒に食べていってくれるかもしれないし、今日は奮発していいお肉を買おうかな? と、そんな事を考えて歩いていると、
「ね、流石になくない?」
「てか、社長といえど、まだ高校生だよね?」
「まぁレン君が何歳なのかは分かんないけどさぁ」
「でもショックー」
「まさかスノーフレークがねぇ……」
という、大きい声で話していた女子高生達とすれ違った。
スノーフレークの話題だったみたいだけど、なんかショックとか聞こえたし……
スノーフレークは私達にとってはとてもいい会社だけど、世の中の評判としては賛否両論だ。
だから悪い噂があるのも仕方のない事だとは分かってる。
分かってはいるけど、知り合いの会社が悪く言われているようで、あまり気分がいいものではないな。
少し気にはなったけど、私が気にしていてもしょうがないと、普通に買い物は済ませた。
そして帰り際、雑誌コーナーの表紙がたまたま目に止まった。
『大人気タレント、レン! スノーフレーク社長、桜野奏海と熱愛!』
と、大々的にかかれたその表紙……
気になって少し立ち読みすると、芸能人のレンという男性と、スノーフレークの社長である桜野奏海さんが、ホテルに入っていくところの写真と、2人で楽しそうに食事をしている写真が掲載されていた。
私は芸能人に詳しくはないので、このレンという男性が何者なのかは分からない。
それに奏海さんともお会いした事はないので、この写真の方が絶対に奏海さんだとも言えない……
ただ、紅葉さんがあれだけ迂闊な行動はしないようにと気を付けているというのに、その会社の社長がこんな写真を撮られるというのはどうも腑に落ちない。
スノーフレークは敵も多い会社だろうし、何かはめられたとか、そういう感じなんじゃ……
私は慌ててその週刊誌も買って、家に帰った。
「ただいまですー」
「あ、おかえりなさーい!」
「お邪魔してます」
帰ると、朗らかに笑う紅葉さんの姿。
変に不安だった気持ちも落ち着いていく……
紅葉さんがこんなに楽しそうって事は、やっぱり気にする必要なんてなかったんだ。
なんたってあのスノーフレークの皆さんなんだから!
「由佳さん? どうかされました?」
「あ、いえ……すみません。実はちょっと、こんなものを見てしまいましたので……」
「これは……」
私が週刊誌を渡すと、紅葉さんは少し驚いた顔をされてすぐ、
「すみません、ちょっと失礼しますね」
と、電話を取り出して、
「あー奏海? 今日の週刊誌の見た? ……うん、それ、すぐ見て! …………分かったすぐ行く」
と、話したかと思うと、
「美代子さん、由佳さんすみません。今日はもう帰りますね」
「あ、はい。お気をつけて」
「紅葉ちゃん、大丈夫?」
「はい、大丈夫です。では、失礼します。陸君もバイバイ」
「うん、ばいばーい」
と、かなり慌てた様子で帰っていかれてしまった。
それでもちゃんと陸にまで挨拶をしてくれるあたり、本当に優しい人だと思う。
「由佳ちゃん? 一体なんなの?」
「あ、これです……」
「え? あぁ、でも……」
「そうですよね、あの紅葉さんがあんなに慌てるなんて……」
紅葉さんの様子が心配ではあるけど、だからといって私達に何か出来る事があるという訳じゃない。
この問題が早く解決するようにと祈る事しか出来ないな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




