効率的
葵視点です。
とりあえず、リビングテーブルの方へと移動してきた。
まだ完全には落ち着いていないだろうけど、話は出来そうだ。
「こちらをご覧下さい」
「これは……」
「先日行われた国際オークションの後の、記者会見映像です。この女性に見覚えはありませんか?」
「あ、あぁ……」
「あなたが知っている、九条麻里奈ですよね?」
私が九条麻里奈は生きていると言った所で、その言葉を絶対だと信用する事は難しい。
でも、こうして生きている映像、それもオークション期日が分かっており、見るからに九条麻里奈である人物が桜野奏海として呼ばれていたのなら、私の話に信憑性が生まれてくる。
「九条麻里奈というのは、スノーフレークで作り上げた存在。本来、そんな人物はいないんです」
「……」
「赤い羊を捕まえる為、学校やここにいる渚や真衣にも協力してもらっていたんです」
「そんな事を……」
赤い羊は私達の作戦通りに捕まえた。
だから事件は解決したように思えていた。
でも実際はそうじゃない……
こうして気づくことができなかった赤い羊の被害者がいた……
本当に情けないな……
「本当に申し訳ございませんでした」
「ですから、何故あなたが……」
「私達があなたの事に気づいていたら、あなたはこんな事にはなっていなかった」
「それは、あなた方のせいでは……」
「いえ、我々の落ち度です」
「……」
みーの助手をやっている子も、赤い羊をきっかけに死のうとしていた子らしい。
事件の犯人を捕まえようと、第2、第3の事件が起きてしまう事は分かっていたはずなのに、それを防ぐ手段がない。
それだけ赤い羊の影響力というのは大きいんだろう。
きっと私達が気づかないだけで、もっとこういう人達がいるのかもしれない。
「私が話せば良かったのに、ごめんなさい」
「明日香は何も悪くない! 私が明日香にもあんなに怒鳴ったから……」
「ううん……ねぇ? お父さんは、赤い羊に脅されてたの?」
「……」
「赤い羊は相手の弱みを掴んで、それを利用していました。プライバシーに関わる事ですし、それを無理に話せとはいいません」
「……指示に従わなければ、家族を殺すというものでした」
「そうですか」
赤い羊が捕まったというニュースを知らなかったのなら、報復も恐れていただろう。
本当にずっと怯えていたんだな。
「あなたが赤い羊に利用されてしまったのは、私があの学校に通っていたせいでもあります。私達スノーフレークが作戦に学校を組み込んだから……」
「それはっ! 葵さんが悪い訳じゃないですし、私達は皆誇ってますよ!」
「……赤い羊は、本当に捕まったんですね」
「そうだよ!」
「……そうか」
安堵したような呟きではあったけど、だからといって心からの安心ができている訳ではなさそうだ。
「まだ何か、心配事が?」
「これは、たまたま私の運が良かっただけだという事ですよね……」
「運?」
「たまたまあなた方スノーフレークの作戦だったというだけで、九条麻里奈さんの殺害に私が加担したという事実はかわらない。もしスノーフレークと関係がなかったら、九条麻里奈さんは死んでいたのですから……」
あーあ、変に責任感が強い人はこれだから……
自分は何も悪くなかった、やったー! で終わらせてくれればいいのに。
ま、それで終われる人じゃなかったから、こうして引きこもりなんて事になってしまったんでしょうけど。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




