強行突破
葵視点です。
「た、ただいまー」
「お邪魔します」
「おじゃましまーす!」
明日香の家へと入れてもらった。
声をかけても返事が帰ってくる事はない……
「お母さんは、仕事で今はいないですけど、えっと……」
「お父さんの部屋は?」
「あ、こっちです」
明日香について歩き、階段を登って2階へ。
扉の前に食器の乗ったトレイが置かれている部屋があった。
「あそこです……」
「そう……」
皿の半分程度の量が食べられた状態で置かれている食器。
食欲はないみたいだけど、食べようとする意思はあるみたいだ。
「お父さん、ただいま」
「……あ、明日香? 明日香なのか? この時間はまだ学校のはずじゃ……」
扉越しに聞こえるとても弱々しい声。
とりあえずこれで、生存の確認は出来た。
「その、まだ学校だったんだけど、早退してきたの」
「早退? 体調、悪いのか?」
「ううん、そうじゃないんだけど……」
「失礼。私はスノーフレークのものです」
「な、え? スノーフレーク?」
「はい。お話を聞かせていただきたく、明日香さんを早退させてきました」
「早退、させた?」
「はい。私が無理やりに」
「なっ!」
「え、あ、葵さん?」
混乱している明日香の肩を、渚が支えてくれている。
「スノーフレークって、確か何でも屋でしたよね? 明日香があなたに私の事を相談したのでしょうか?」
「そうですね」
「お帰りください」
「それはできません」
「明日香も、早く学校に戻りなさい」
「お父さん……」
「少しでいいので、お話を聞かせてもらえませんか?」
「……」
黙ってしまったか。
まぁ想定内の反応だ。
「あなたは、何故そこから出てこようとされないのですか?」
「……」
「何にそんなにも怯えておられるのですか?」
「……」
「何を知りたくないのですか?」
「……」
「最近のニュースですと、そうですね……」
「止めてくれっ!」
ガンッ!
壁を殴ったような音……
相手が見えていない状態でのこれ以上の会話は危険だ。
「失礼致しました」
「……帰って下さい」
「明日香、行きましょう」
「え、はい……」
1階に降りて、外へ出る。
あの部屋の位置から考えて、あそこか……
「あの、葵さん。無理を言って来ていただいたのに、申し訳ありませんでした。でも、その、また……」
「明日香、何諦めてるの?」
「え?」
「明日香ちゃん。葵はね、諦めた訳じゃないよ?」
「じゃ、じゃあ……」
「明日香。悪いけどあの窓、壊すわね」
「はい?」
登りやすい壁で良かった。
これならすぐに行ける。
「って、えぇぇええー!」
私が壁を足場にしながら家の屋根の上へと登り終わると、下から明日香の声が聞こえた。
窓を壊す許可だけじゃなくて、屋根の上に登る許可も必要だったかもしれないな。
でもまぁ、緊急事態だし。
屋根の上で少し助走をつけながら、さっきの窓の位置に向かって飛び降りる。
スノーフレーク開発のこの靴なら、この程度のガラスは造作もないから。
ガシャンッ! ガラガラガラ……
「はっ! え、はぁ!?」
「どうも、あらためまして、スノーフレークです」
これでやっと会えた。
やっぱり話す時は、ちゃんと相手を見ながら話さないと。
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




