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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode8 情報遮断見落とし編

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237/425

情報遮断

葵視点です。

 渚の後輩の明日香の悩みを聞くために、共に昼食を食べようと屋上へきた。

 でも私にはどうも威圧感があるようで、明日香はなかなか話そうとしない。

 あまり無駄な時間は過ごしたくないのだけど……


「明日香ちゃん、葵はただせっかちなだけだから。落ち着いて話してみて。なんなら、葵を見なければいいんだよ。この町並みを眺めながら、なんとなく呟けばいいよ~」

「……ありがとうございます」

「葵のお弁当美味しそう!」

「食べる?」

「食べる、食べる! 卵焼き!」

「だし巻き卵よ」

「わーい」


 渚と真衣が明るくしてくれたお蔭で場が和んだ。

 本当にこの2人にはいつも助けてもらってる。


「お気遣い、本当にありがとうございます……あの、ご相談したかったのは、私の父の事なんです……」

「お父さんがどうしたの?」

「その、私のお父さん……」


 やっと要件を言う気になった明日香は、


「私のお父さん、引きこもりになっちゃったんです!」


と、涙をながしながら言った……


「お父さんが、引きこもり?」

「はい……」


 引きこもり案件か。

 となると、担当は私じゃなくて紅葉や伊吹が適任だ。

 でもここで私がそれは自分の担当ではないからと、別の人を紹介するというのは、明日香からの信用を失う事に繋がりかねない。

 明日香は私を頼って来てくれているのだから、現状を見もせずに他人に任せるなんて事は出来ない。


「引きこもりになったのはいつから?」

「完全に引きこもっちゃったのは、1ヶ月前くらいからです……でも様子がおかしくなったのはもっと前で……」

「様子がおかしいというのは?」

「お父さん、本当にとても優しい人なんです。普段から怒ったりとか全然しなくて……それなのに、些細な事で凄く怒鳴ったりするようになって」

「些細な事の詳細は?」

「えっと、テレビをつけたり、お母さんと話してたりするだけで、"喧しいっ! 静かにしろっ!"って……」

「そりゃあ急激な変化だね」

「最高の上司ですって言ってくれてた部下の人達にも、同じような態度みたいで、皆も心配してくれてます」

「ってことは、前は相当尊敬されてる上司だったんだよね?」

「はい……」

「他に異変は?」

「あ、あとは……そのっ! 毎日読んでた新聞を、一切読まなくなっちゃって、新聞が視界に入っただけでも怒ってました……」


 テレビと新聞を拒絶……

 話していると喧しいと怒るのもおそらく、会話が自分に聞こえてしまうのを避けるため……

 つまり、果てしなく情報を遮断しているんだ。


「流石に急にそんな風になった訳ではないでしょ? もっと以前に、何かなかった?」

「それが、全く思いつかなくて……私もお母さんにも思い当たる事がありませんし、会社の皆さんにもないみたいで……本当に急に怒りっぽくなっちゃったんです……」

「携帯やパソコンは?」

「はい?」

「ネットは見てたの?」

「……いえ、携帯は電話にしか使っていませんでした。パソコンは分かりませんけど、仕事にしか使っていなかったと思うので、ネットとかは見ていないと思います」


 そこまでして、何かを知りたくなかったという事か。

 その何かが分からない限り、引きこもってしまったのを出てこさせる事は出来ない。

 でも、誰にも心あたりがないというのはな……本人に聞くしかない。


「ちょっと失礼するわね……」


 3人に断りを入れてから、電話をかける。


「紅葉、今日の代わって欲しいんだけど」

「りょー、何時終わり?」

「未定」

「なら空音にお願いしといてー」

「分かったわ」


 電話をきってから、


「空音っ!」


と、呼ぶと、


「おー」


と、すぐに声がした。

 まぁ、空音達はいつも屋上でお昼を食べているだから、いる事は分かっていたけど。


「なに? 俺も必要な感じ?」

「私の今日の、代わって」

「あ、そっちな」

「よろしく」

「おー」


 空音は軽く返事をして、また中道君達の方へと戻って行った。


「これで問題ないわ。明日香、これからあなたの家に行くから」

「は、はい!?」

「こらまた、急だね」

「私達も同行するよ!」


 明日香の様子からしても、事はかなりの緊急性を要している。

 その上現段階では解決策がない。


 まずは明日香のお父さんに会わない事には、どうする事も出来ないな。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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