表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode8 情報遮断見落とし編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

236/425

時間短縮

渚視点です。

「おはよー」

「はよーっす」

「うぃーっす」


 朝、皆が登校してきた。

 葵はまだ来ない……

 まぁ、いつもの事なんだけど……


キーン コーン カーン ガララッ! コーン!


「おはよ……」

「今日もギリギリだね」

「間に合えばいいのよ」

「昨日はどこにいってたの?」

「アフリカ」

「……そう、お疲れ」


 葵はいつもチャイムギリギリに登校してくる。

 大体前日に海外に行ってる事が多いから、ギリギリとはいえ間に合ってる方がおかしいと思えるレベルだ。


「葵、後で話いい?」

「ん? 分かったわ」


 来てすぐの葵に声をかけてから、朝のホームルームが終わった。

 そして短い休憩時間。

 次の授業のための短い休憩時間とはいえ、葵と話せるチャンスでもある。


「渚、何があったの?」

「部活の後輩がなんか悩んでるっぽくて、葵に頼みたいみたいなの。結構深刻気味」

「昼休み、案内して」

「ありがと」


 先に話があると言っておいたから、葵の方から聞きにきてくれた。

 しかも昼に時間を作ってくれるらしい。

 となると、いつも昼に葵がやってる書類整理みたいなのは、今日はやれない事になるけど……と、ちょっと心配していたけど、その心配は不要だった。

 不要というか、また別の心配事が増えたけど……


 葵は、授業中にいつも休み時間にやってる書類仕事をしている。

 それも、先生に見つからないように、隠して……

 授業中に隠れて早弁する奴とか、漫画雑誌を読んでる奴とかは見たことあったけど、書類仕事してる奴は初めて見たな。

 まぁ、授業をサボってるのは変わらないんだし、いくら凄かろうと同類って事かな、私の。


「同類ではないよ」

「あれ? 私、声に出してた?」

「いや、多分そんな事を考えてるんだろうなって思ってね。渚もよく隠れて早弁してるから」

「はは、大正解だ~」

「東城! 何を騒いでる! ちゃんと聞いていたのか?」

「あ、あははー」

「この問題、解いてみろ」

「無理ですー」

「ったく……」


 真衣と話していたら、私だけ先生に怒られた。

 大体こういうの、怒られるのはいつも私なんだよな~。

 別にいいけどね!


「渚、案内して」

「はーい、真衣も行こ」

「うん」


 昼休みになってすぐ、葵も私も真衣も、持ってきたお弁当を持って、1年生の明日香ちゃんの教室に向かった。

 上級生が一緒にご飯を食べるというのは明日香ちゃんが萎縮してしまうかもしれないけど、お昼ご飯を食べ終わってから行くよりは、こっちの方がたくさん話を聞けるから。

 そして、葵と私だけだよりは真衣がいてくれた方がいい。

 私は部活の先輩で怖いだろうし、葵はそもそも怖い雰囲気がある。

 それに比べて真衣はほわほわとしているから、明日香ちゃんも安心できるはずだ。


「あ、あれ! 葵さんだ!」

「本当だ!」

「なんでこっちに?」

「え、声かけていいかな?」

「ダメだよ、なんか急いでるって」

「格好いい……」

「憧れる……」


 1年生達のクラスの前の廊下では、葵を見た子達が騒いでいた。

 この学校では本当に有名人だからなー。


「明日香ちゃーん! いるー?」

「渚先輩? って、え! 葵さん!」

「葵、放課後は忙しいからね。今ならいいよー」

「ありがとうございますっ!」

「場所を変えましょうか」

「は、はい!」


 お弁当を持った明日香ちゃんも連れて、屋上へとやってきた。

 屋上で食べている人達は他にもいるけど、結構広いし、端の方なら周りに誰もいない状態で話が出来るから。

 見渡せるから、誰かが近づいてきてもすぐに分かるし。


「わ、私……屋上に来たの、初めてです」

「大体上級生のたまり場だからねー」

「元々は解放されてなかったんだけど、不良が勝手に使ってたから、不良のたまり場にするくらいならって葵が解放したんだよ。とはいえ、私達はあんまり来ないけど」

「別に1年生だからと立ち入り禁止という訳でもないし、危なくないようにしてあるから、安心してあなた達も来ていいのよ」

「はい、ありがとうございます」


 あ、これは多分来ないだろうなー。

 葵に進められた手前、一応お礼を言ったって感じだ。

 まだやっぱり、葵が怖いのか……


「それで? 私に何の用があったの?」

「あ、その……」

「葵、聞き方キツいって!」

「無駄な時間を過ごしたくはないから」

「そ、そうですよね……すみません……」

「謝らなくていいわ、そんな時間は無駄だから。早く要件を言いなさい」

「すみませんっ!」

「もー、葵ー」

「はぁ……」


 葵は本当に怒ってる訳じゃないんだけどな。

 口調が若干? キツいから……

 明日香ちゃんも完全に怖がってしまってる……


「明日香ちゃん、葵はただせっかちなだけだから。落ち着いて話してみて。なんなら、葵を見なければいいんだよ。この町並みを眺めながら、なんとなく呟けばいいよ~」

「……ありがとうございます」

「葵のお弁当美味しそう!」

「食べる?」

「食べる、食べる! 卵焼き!」

「だし巻き卵よ」

「わーい」


 葵のお弁当は、桜野家の料理長さんが作ってるらしいから、本当に美味しい。

 しかもくれるし!

 真衣の励ましと、私と葵の様子を見て、明日香ちゃんの緊張もだんだんと解れてきたみたいだ。


「お気遣い、本当にありがとうございます……あの、ご相談したかったのは、私の父の事なんです……」

「お父さんがどうしたの?」

「その、私のお父さん……」


 よほど言いたくないのか、明日香ちゃんはまた言葉を詰まらせて俯いてしまったけど、少し沈黙してから、意を決したように顔を上げて、


「私のお父さん、引きこもりになっちゃったんです!」


と、涙ながらに教えてくれた……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ