部活中
episode8になります。
渚視点です。
「じゃあ、また明日ね」
「今日も帰っちゃうの?」
「今日も明日も明後日も」
「ちょっとは休まないとダメだよ?」
「休んでるから問題ないわ。渚も部活、頑張ってね。試合の日は応援に行くから」
「本当だろうね? 言質とったからね」
「えぇ、約束するわ」
放課後、今日も葵は忙しそうに帰っていった。
スノーフレークのお偉いさんだから忙しいって事は分かってるけど、あのバーベキューの日以来全く遊べていない。
でも、試合に来てくれるつもりがあるようで、嬉しく思う。
「俺等も帰ろーぜー」
「おう」
「カラオケでも行くか」
「いいな」
少し離れた席で、男子共が楽しそうに盛り上がっているのが聞こえた。
ちょっとイラッとする……
「葵はあんなに忙しそうなのに、暇そうで何よりだね」
「なんだよ東城、前にも言ったろ? 俺はフリーなんだよ」
「はいはい、分かってますよ」
葵と同じスノーフレークのお偉いさんである柴崎君は、割といつも暇そうに見える。
それは彼がフリーという立ち位置で、急な仕事に対応するための要員だからだそうだ。
つまり、どんな仕事だとしても相応に対応出来てしまう凄い人、という事になる。
それは一応分かってるんだけど、私達は葵と全然遊べないのに、柴崎君達はいつも楽しそうなのはズルいと思ってしまう……
「お前等も一緒に来るか? 空音の生体模写カラオケ、面白いぞ」
「いや私、部活あるから」
「私もパス。じゃあ渚、図書室で待ってるね」
「うん!」
教室で真衣と別れて、着替えるために部室へと向かう。
真衣は部活に入っていないから、私の部活中はだいたい図書室で勉強をしながら待っていてくれる。
体育会系の私と、文化系の真衣は好み等も正反対ではあるんだけど、なんか意気投合するし、本当に最高の親友だ。
文武両道の葵も合わせた私達3人は、自他共に認める仲良しトリオなんだけどなー。
ホント、葵ともう少し一緒にいられたら……
「渚ー!」
「はーい! からのシュートッ!」
「おぉ~、流石」
「ナイスー!」
今日も気持ちよくゴールが決められた。
あまり他事ばかり考えてたら、バスケにも集中出来ないし、葵も試合を見に来てくれるって言ってたんだ!
気合いを入れ直さないと!
「皆ー! 私の友達の葵、知ってるよね?」
「もちろん!」
「この学校で知らない人はいませんよ」
「あの何でも屋、スノーフレークの社長秘書様なんだから」
「うんうん! それでね、その社長秘書様が、今度の試合の応援に来てくれるって」
「えー!」
「マジですか!?」
「気合い入れ直して行くよー!」
「「「「「おー!」」」」」
皆の気合いも入れ直したところで練習再開っと……ん? なんか浮かない顔をしてる子がいる?
あれは確か、1年生の明日香ちゃん。
何か悩みでもあるんだろうか?
「明日香ちゃん? どうかした?」
「あ、いえ……」
「何か悩み事があるのなら、相談にのるよ?」
「その……」
「あっ! もしかしてさっきの、プレッシャーになっちゃったかな? あのね、葵がくるって言ってもそんなに緊張しなくていいからね!」
「そうではなくて……」
余程言いにくい事なのかな?
無理に聞くのも悪いか、と思っていると、
「その、渚先輩から葵さんに連絡をとっていただきたいっていうのは、烏滸がましいですよね?」
と、明日香ちゃんは少し震えながら聞いてきた。
「スノーフレークに何か依頼したい事があるの?」
「は、はい……す、すみませんっ!」
「謝る事ないよ。明日聞いてみるね」
「ありがとうございます!」
これだけ必死なんだ。
余程の悩みなんだろう。
明日、葵に少しでも時間があるといいけどな……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




