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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編

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代理人

凛緒視点です。

「あの、財前さん。財前さんが知っているななさんの事、もっとたくさん教えてもらえませんか? ななさんはあんまり自分の事を話してくれないんです」

「ちょっと創太、何言ってるのよ。凛緒も言わなくていいからね」

「んー、そうですね。ななさんの論文は本当にどれも素晴らしいのですが、私が一番感銘を受けたのは記憶に関する論文ですね。あれで私はななさんの大ファンになりました」

「それって、僕も読めます?」

「今度お持ちしますね」

「ちょ、ちょっと……」


 私のこれからの職場となったマンションの一室。

 そこで上司となった実梨さん、もといななさんと、その助手の創太さん。

 創太さんはななさんの事が好きなようで、ななさんの事を知りたがっている。

 応援してあげたくなる感じだし、私の知る限りは教えてあげようと思う。

 当のななさんは、若干狼狽えておられるけど。


「でもやっぱり何よりも驚きなのは、その論文を発表されたのが15歳の時という事ですよね。当時は奏海さんの事も知りませんでしたので、こんな方がいるのかと驚きましたが、今にして思えば、奏海さんと繋がりがある方だったという事に納得です」

「ちょっと待って下さい。ななさんって、大学で論文を発表してたんですよね? それなのに15歳?」

「確か、中学生になる時に海外へと行かれて、そこから飛び級をされて、高校も流れるように卒業されたはずです。だから15歳の時は既に大学生で……」

「凛緒? 少し黙りましょうか」

「それならななさんって、今いくつなんですか?」

「8月が誕生日だったはずなので、今は17歳ですよね?」

「はぁ、そうよ……まさか初日でこうも上司の言うことを聞かない新人だとはね……」


 呆れたようにため息をつかれてはしまったけど、ななさんに怒っている様子はない。

 それに、本当にななさんが怒っておられるのであれば、創太さんも話を続けようとはしないだろう。


「ななさんって、僕より歳下だったんですね」

「そうよ」

「なんか、開きなおってます?」

「知らないわ」

「僕はななさんが変な人だって分かってますし、今さら歳下だと知ろうと、実は宇宙人だと言われようと、驚きませんよ」

「あら創太。いつ私が宇宙人だって気づいたの?」

「え、本当に宇宙人だったんですか?」

「……驚いてるじゃない」

「やっぱり宇宙人だったんですね」

「そうね、この地球が宇宙空間に存在している以上、私も創太も宇宙人でしょ?」

「あぁ、そういう……」

「っていうか創太? やっぱりって何よ!」


 本当に仲がいいみたいだ。

 楽しい職場だし、今後も上手くやっていけそうだ。


♪♪♪♪♪


「あ、ちょっとごめんね」

「十分に馴染めそうですね。では、私はデータの確認をして帰りますので」

「はい、ありがとうございます」


 楽しく話をしているとななさんの携帯がなって、ななさんは席をたった。

 そして葵さんが私を気にかけてくれてから、ななさんのパソコンの方へと行った。


「あら乃々香? 何? どうしたの? もっと落ち着いて話しなさい」


 ななさんの電話をする声が聞こえてくる。

 電話相手は乃々香さんみたいだ、


「え? 送り間違えた? さっきのって……」


 乃々香さんが何かを送り間違えたという話が聞こえたと思ったら、


「アオイ、アイシテル!」


と、ななさんのパソコンから音声が聞こえた……


 ……ちょっと待って。

 今の、間違いなく彼の声だった……


「ごめん乃々香。時既に遅し」

「わぁぁぁああ!」


 スピーカーにしている訳ではないはずなのに、ななさんの携帯からは、叫び声のような悲鳴が聞こえてきた。

 乃々香さんに何かあったのかと思った矢先、今度は急に冷気を感じて、肌がピリピリと震えるような感覚に……


「私はここで失礼しますね。おいたをした悪ガキを、懲らしめなくてはいけませんので」


 そう言って、部屋から出ていかれた葵さん……

 なんというか、本当に怖かった……

 頭に角でも生えているのかと思うくらい、恐ろしい冷気を放っていて……


「乃々香さん、大丈夫ですかね?」

「大丈夫じゃないでしょーねー。自業自得よ」


 やっと失われていた体温が戻ってきたと私が安堵していると、ななさんと創太さんは平然と話していた。

 こういう事に慣れているという感じだ……

 話の雰囲気からして、さっきの彼の声は乃々香さんの悪戯だったという事なんだろう。

 副社長と秘書は仲が悪いらしいし……


「あっ! 葵行っちゃった。ついでにこの資料、持っていってもらおうと思ってたのに……そうだわ! 凛緒、あなたに初めての仕事を授けましょう」

「は、はい。何ですか?」

「スノーフレークの社長室へ、この資料を届けてくれる?」

「しゃ、社長室……」


 それって、奏海さんがおられる部屋なんじゃ……


「あー、凛緒は奏海のファンなんだっけ? でも、悪いんだけど、今日は奏海はいないわよ」

「そうなんですか……」

「代わりの人がいるから、その人に渡してくれればいいわ。はい、これが奥へ入るためのID。失くさないようにね!」

「分かりました。行ってきます!」

「行ってらっしゃ~い!」

「お気をつけて」


 ななさんと創太さんに見送られながら、マンションを出た。

 そしてスノーフレーク本社へと来ると、先に連絡が行っていたようで四之宮主任が奥への入り方を教えて下さった。

 でも仕事があるからと、社長室までは一緒に来ては下さらなかった。


 緊張しながらも、社長室の扉をノックする……


コンコンコンッ!


「失礼致します。資料をお持ち致しま……」


 私は言葉を最後まではっきりと言えなかった……

 社長室、そこにいた人物に驚いてしまったから……


「チッ、奏海の奴……」


 初めて会った時と同じように、心底面倒くさそうに舌打ちをした彼に対して、


「意外とすぐに、また会えたわね!」


と、私は笑いかけた。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

episode7は完結です。

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