待望
沢田美代子さん視点です。
今日は息子夫婦が遊びに来る日。
浩一に、由佳ちゃん、そして陸君。
旦那が亡くなってからは、ずっと1人暮らしだからかしら?
こういう賑やかな日はとても楽しみね。
まぁ、1人が寂しいからってスノーフレークに依頼して、紅葉ちゃんが定期的に話し相手になってくれてはいるけど……
やっぱり息子ももちろんだけど、孫が遊びに来てくれるっていうのは嬉しいわ。
紅葉ちゃんにも今日は孫の来る日って言ってあるから、今度紅葉ちゃんが来てくれた日には、陸君の話をたくさん聞いてもらいましょう。
ピンポーン
あら、来てくれたのかしら?
「はーい」
「ばぁちゃーん、あそびにきたよー」
「すみません、お邪魔します」
「母さん、久しぶり」
「はい、いらっしゃい。ゆっくりしていってね」
陸君、大きくなったわねぇ。
子供の成長はやっぱり早いのね。
由佳ちゃんもますます綺麗になって……
子育ても大変でしょうに、さすがだわ。
浩一は、あまり変わってない? いえ、少し老けたかしら?
あの人に少し似てきた気がする……
「そうそう、陸君にプレゼントを買ったのよ」
「わー、なになに?」
「鉄道のおもちゃ」
「わーい、いまあそんでいい?」
「ええ、もちろん!」
「ありがとうございます。陸、良かったね」
「うんっ!」
リビングのラグの上で遊ぶ陸君。
本当に可愛い。
鉄道のおもちゃも買っておいてよかった。
「さてと、そろそろお昼ご飯作るわね」
「母さんの料理、久しぶりだな。楽しみだよ」
「あ、私も手伝いますよ」
「あら、ありがとう」
本当に良い子だわ。
浩一のお嫁さんが由佳ちゃんで本当に良かった。
「母さんの料理といえば、やっぱり肉じゃがだな。久しぶりに食べたいな」
「ぼくもばぁちゃんのにくじゃがたべたい」
「私も是非、作り方教えて欲しいです」
「あらあら、まぁ嬉しいこと言ってくれるわね」
期待してくれて嬉しかったし、折角だったから肉じゃがを作りましょう。
由佳ちゃんも手伝ってくれて、思いの外早くお昼御飯が出来たわ。
「うん。由佳のも旨いけど、母さんの肉じゃがは味がしみてて美味しいな」
「おいしーい」
「ふふっ、ありがとう」
「肉じゃがは、先に炒めるのがコツなんですね」
「そうね。あとは煮た後、1度冷ましてからもう1度煮ると、味がよくしみ込んで美味しいわよ」
「なるほど、ありがとうございます」
浩一はこの味で育ててきたものね。
久しぶりに出したけど、ちゃんと味を覚えてくれているようで嬉しいわ。
由佳ちゃんも陸君も喜んでくれて良かった。
「よるごはんもばぁちゃんとがいいー!」
「そう? 嬉しいわ。あ、でも……夕方には帰っちゃうと思ってたから材料がないわ……」
「でしたら私が買ってきますよ。そんなに遠いわけでもないですし、スーパー行ってきます」
「それなら……陸、お母さんと一緒に食べたいもの買ってきていいぞ」
「わーい」
「いいの? ごめんなさいね」
「いえいえ」
夜ご飯も食べていってくれるなんて!
腕によりをかけて作らなきゃね。
「あ、片付けも手伝いますよ」
「大丈夫よ。この食器洗い乾燥機を使ってるから」
「おぉ、すごいじゃん。母さん昔から機械苦手なのに」
「そうよ、すごいでしょ? 私もちゃんと機械を使いこなしてるのよ」
「へぇー、自分で説明書読んだの?」
「それは恥ずかしい話だけど、教えてもらったのよ。それに、こっちの方が水道代とかもお得になるって教えてもらってね」
「そうなんですね」
紅葉ちゃんに使い方を教わったし、私1人でも使えてるわ。
機械とかは苦手だったけど、ちゃんと自分で使えると、便利だし案外楽しいものね。
片付けも終わって他愛ない話をして、少し時間がたった時、
「じゃあそろそろ夜ご飯の材料、買いに行ってきますね」
「いってきまーす」
「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね」
由佳ちゃんと陸君は買い物に出かけて行った。
そこまで遅くはならないだろうし、帰ってきたらおやつ用に買っておいたケーキを出しましょう。
きっと喜んでくれるわ。
「母さん、ちょっと話いいかな?」
「何? どうしたの?」
「この間の事なんだけど……」
急に浩一が真剣に話し始めるから、何かと思ったらまたこの話。
私は大丈夫って言ってるのに……
「またそれ? 本当に大丈夫よ。浩一、あなたも折角なんだから由佳ちゃんと陸君といたいでしょ? 私がいても邪魔じゃないの」
「そんなことないって。それに父さんが亡くなったんだし、母さん1人だし……やっぱり俺等も一緒に住もうと思うんだよ。何かと危ないしさ」
私だって1人よりは賑やかに皆と住みたいわ。
でも、由佳ちゃんは間違いなく気を使うし……
まだ陸君だって5歳なんだし、浩一も由佳ちゃんも、家族3人で過ごしたい時期でしょうに、邪魔はしたくないわ。
私のせいで皆が変に気を使ってしまうのなんて嫌だもの。
こうやって時折、会いに来てくれるだけで十分。
「私はまだ大丈夫! 言ったでしょ? 話し相手の子がいるからって」
「だからそれだってさ……」
ピンポーン
あら、チャイム?
由佳ちゃん達は鍵を持っていったはずよね?
誰かしら?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




