解錠
凛緒視点です。
「はぁ……これで、全部よ」
「丁度30枚だな」
「ちょっと、関係ないあなたは退いてなさいな!」
「あんたも関係ねぇんだぞ?」
「私はこの家の!」
「あぁ、滅び行くこの家で、なんの力もないババアだろ?」
「な、なんですって!」
「喜和子さん、ちょっと静かにしてもらえます?」
「あ、凛緒ちゃん。ごめんなさいねぇ?」
フクに突っ掛かっていた喜和子さんは、私が声をかけるとすぐに態度を変えて、気持ちの悪い笑顔を向けてきた。
疲れてるんだから、こういうのは止めて欲しい。
いくら覚えているとはいっても、それを思い出して、現実のこの絵と照らし合わせるのは大変なんだから。
「それで、この30枚の絵をどうしたらいいの? まぁ、重ねるんでしょうけど」
「そうです。お察しの通り重ねます」
この絵は全て、黒の線や点だけしかかかれていない。
だから複数枚を重ねることで、文字か何かになる事は想像に容易い。
端にサインのような、マークのようなものがあるから、それ毎に重ねるのかと思って、脳内でそのマーク毎に分けて絵を重ねてみたものの、特に言葉にはならなかった。
「重ねる組み合わせがあるんです。その組み合わせの書は、私が持っています。少々お待ち下さいね」
七緒は、明らかにお祖父様の筆跡と分かる文字が沢山書かれた紙の束を取り出した。
そしてそこに書かれているマークの組み合わせ通りに絵を選んでいっている。
「えっと……これが、こっちとペアで……これは……あら、でも少し大きいわね。こっちかしら?」
同じマークが書かれているとはいっても、手書きだからこそ、少しずつ違う。
他にはないはねがあったり、少し大きかったりする。
それを見分けて組み合わせを作っていっているんだろうけど、遅い。
遅すぎる!
「貸してください」
「え、凛緒さん……」
七緒の持っていた書を受け取り、マークを覚える。
あとは照らし合わせるだけだ。
「これがこっちで、こういう組み合わせです。それとそっちのが一緒で……」
「おぉ、早いわね! 流石凛緒ちゃん!」
「……」
やかましい喜和子さんは無視しつつ、組み合わせを全て揃えると、とても長い文章が完成した。
もちろんそれは蔵の開け方で……
「こんなに面倒なものなの?」
「そのようですね。とりあえず蔵の方へ行きましょうか」
「さ、凛緒ちゃん、行きましょ行きましょ!」
蔵に来て、書いてある通りの面倒な手順を踏んでいく。
端の気を押すだの、斜め上の石をずらすだのという面倒な工程をいくつも繰り返して、ついに、蔵を開ける事が出来た……
「まぁ!」
大喜びの一番のりで蔵に入っていったのは、もちろん喜和子さんだ。
私は興味がなさすぎで、あまり入る気にはならなかった。
でも、七緒に背を押され、仕方なく入る……
蔵の中には、壺や絵といった、価値がありそうなものが沢山並んでいた。
売れるのかもよく分からない……
こんなもの、一体どうしたら……
「ねぇ、凛緒ちゃん。私の知り合いにいい鑑定氏がいるの。どうかしら? 全部私に預けて……」
「喜和子さんに預けるくらいなら、全て壊した方がましです」
「なっ!」
「私のものを散々壊しておいてなんですか? 私が私のものを壊す事に、何かご不満が?」
「うっ……」
でもこの私のものになった、私には必要のないガラクタを、どうすることもできない。
置いておくだけでは無用心だし……
でも、このガラクタのせいで散々苦しめられたんだと思うと、憎しみも湧いてくる……
本当に壊してしまおうか……
パタパタパタパタ
私がそんな事を考えていると、空からヘリコプターが近づいて来た……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




