出生
凛緒視点です。
あの七緒と対面で話しているという事には、正直違和感しかない。
でも、私の知っている七緒とは別人だとも思えるので、嫌悪感は少ないと思う……
「あなたを授かる事が出来たとはいえ、私が財前の家に迎えていただくという事は難しい事でした……もちろん正宗さんは迎えようとされていたのですよ? ですが、後継の問題やあの蔵の事もありますし、正宗さんが認めて下さっていたからといって、私が財前家で歓迎される存在ではないのは明らかでした」
あの迷惑な蔵の事もあるし、財前家は下手に親族を増やす事は出来ない。
ましてや当主たるお祖父様の妻と娘なんて存在は、疎まれる事は間違いない。
「私は正宗さんとは離れて、1人であなたを育てる覚悟をしました。正宗さんも影から支えてくれると……ですが、正宗さんのような目立つ方にそんな事は不可能ですからね、お断りしたんです……でも、正宗さんも諦めては下さらなくて……それに、財前家の支援なしで、私1人であなたを育てるとなると、幸せにしてあげられるかという自信もなくて……」
「はぁ……そうですか……」
「そんな困っていた時に、聡一郎君が助けてくれたのよ」
聡一郎……それは、私がずっと父親だと思っていた人の名前だ。
私が生まれてすぐに亡くなってしまったから、お会いした事はもちろんないけど……
「聡一郎君は、奥さんの環さんが、自分達の子とする事を提案して下さった。それならば、あなたは財前の血筋としても認められるし、不当な扱いを受ける事はないから……」
「……そういう事ですか」
「私も正宗さんも、本当にあの2人に感謝したわ。それからは環さんが少しずつお腹に詰めものを多くしたりして、私があなたを産んだ時、その子を環さんの子として財前家に紹介したのよ」
「その事を知っていたのは?」
「私達4人だけのはずだったわ」
それなら、叔父様は知らなかったという事になる……
「聡一郎さんと環さんが、あんな事故にさえ合わなければ、あなたは2人の子供として、財前家で幸せに暮らしているはずだったのに……」
「そうですね。あなたとも一切関わる事なんてなく」
「……そうね」
とても悲しそうに見える……
今までの事があったとはいえ、あまり冷たく接するのも可哀想に思えてきた。
「あの、それで……どうしてあなたは今、ここにいるんですか? 財前家の財産狙いできたという訳ではないのでしょう?」
「それはもちろん、あなたを守るためよ!」
「……」
何を言ってるんだろうか?
私にはこの人に守ってもらった覚えなんてないけど……
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




