表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

216/425

女装男

財前雄治郎視点です。

 始めて聞く男の声に振り返ると、見覚えのある女が立っていた。

 見覚えはあるが、知り合いではない女が……


「ねぇ? どこに行っちゃうんだよ? "また後で"なんて言って、どうせ来てくれないんでしょ? そんなの寂しいよ~」


 目の前の女が何を言っているのかが分からない。

 いや、そもそもこの声……

 こんなに低く、男らしい声が、目の前にいるブロンドヘアの綺麗な外国人女性から発せられている事が、理解できない。


「エ、エリンさん……?」


 凛緒ちゃんも混乱しているみたいだ……

 自分の知っているエリンの声とは違うからだろう。


「ボ、ボス……そいつ、男です……」

「は?」

「服脱がそうとしたら……その……」

「変態どもがっ! 汚ねぇ手で僕に触れてんじゃねぇよ!」


ドガッ!


「あがっ……」


 殴られたのか、蹴られたのか……

 腹を押さえながら出てきた男に、追い撃ちをかけるように手刀を首へと振り下ろしている……

 低身長で、ひ弱そうな見た目をしているが、相当に強いみたいだ……


「さて、次はあんた達の番だ。さっきまた後でって約束した君は、僕と遊んでくれるんだよね?」

「な……え、は?」

「あぁ、混乱してるみたいだから一応言っておくけど、僕はエリンじゃないよ? 人違いさ」


 人違い……?

 一体これは、どういう事なんだ?


「ちょっとエリンのふりして歩いてただけ。エリンはちゃんと女の子だから。女の子? いや、おばさんかな?」

「おばさんは怒られるだろ」

「え、そーお? でも僕からしたら、副社長はおっさんだからね?」

「なら、支配人もおっさんか?」

「もちろん!」

「ならまぁ、そうか」


 いつの間にか私の車のボンネットに座っていた、スノーフレーク副社長が、エリンの振りをしていたという男と喋っている。

 全くもって状況が理解出来ないが、ただ私に不利な状況であるという事だけは間違いない。


「おい、どうしたんだ? 顔色が悪いぞ?」

「状況がよく分からなくて困っていたのです。どうしてあなたがここにいらっしゃるのですか?」

「そりゃ決まってるだろ? あんたに捕まった凛緒とエリンもどきを助けに来たんだよ」

「もどき言うな」

「もどきだろ? いくら見目がよくても、声が酷い。せめてもう少し可愛いかったらなぁ?」

「僕は空音じゃないんだ。声はどうしようもないよ」


 私に話しかけて来ているし、逃がすつもりはないという様子だ。

 だがその割には女装男と楽しそうに話していて……

 ……まるで、この私をバカにしてきているみたいじゃないかっ!


「叔父様? フク? どういう事?」

「凛緒、お前は叔父様に誘拐されてたんだよ」

「な、何を言うのですか! 私は誘拐された凛緒ちゃんを助けに来たのですよ!」

「そ、そうよ? 叔父様は私を助けてくれたわ」

「でもさー、凛緒ちゃん? さっき僕に水をかけて、また会う約束までしたのは、そこにいる叔父さんの友人のおっさんなんだよ?」

「え、えっと……あなたは、エリンさんで……?」


 凛緒ちゃんはかなり混乱している。

 どう考えても私に不利な状況で、彼等は勝ち誇ったような顔をしている。

 だが、この場で真実になるのは真に勝った者だ。

 つまり、凛緒ちゃんが信じた者が勝者なんだ!


「この誘拐は、あなた方の自作自演だったという事だったのですか?」

「あ?」

「凛緒ちゃんと共に誘拐されて被害者を装い、私を呼び出して罪を擦り付ける。それがあなた達の計画だということですよ!」

「変な事言うねー? 僕と凛緒ちゃんを拐って、僕にしょうもない拷問をしてたのは、そこの君の秘書でしょ?」

「彼はそのような事をしません!」

「さっきこいつも、ボスって呼んでたじゃん」

「あなた方が呼ばさせただけでしょう。現にこれ以上ボロを出させないためにと気絶させた!」

「何のために、俺達がそんなおかしな事をしなければいけないんだ?」

「そんなのは、金のためでしょう? 身代金として私から奪ったお金も手に入れているはずですからね!」

「なるほど? くくっ、面白い。おい凛緒、お前はどう思う?」


 副社長は凛緒ちゃんへと問いかけた。

 彼等も凛緒ちゃんの見解次第では、自分達が不利になることが分かったみたいだ。


「凛緒ちゃん、騙されてはダメだ! 彼等は財前家を狙って凛緒ちゃんを騙そうとこんな事までしてきたんだ」

「お、叔父様……その、そちらの方は、本当に叔父様の秘書さんなのね? フク達ではなくて、彼が叔父様を騙しているという事は……?」

「いや、それはない! 彼は私とずっといてくれた。おかしな事を言っているのは間違いなく彼等なんだ!」


 私が力強く副社長達を指差して言うと、


「そう、そうなのね……」


と、これまでこの状況に混乱し、震えていた凛緒ちゃんは、何故か私の方を見て笑ってきた……


読んでいただきありがとうございます(*^^*)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ