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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編

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覚悟

凛緒視点です。

「邪魔するぞ」

「フク!」


 叔父様が葵さんに会ったという連絡をくれた次の日、全然連絡して来なかったフクが部屋に来た。


「随分と久しぶりね」

「そうか?」


 私と全然会っていなかった事をあまり気にしていないみたいだ。

 その様子に何故か少し胸が締め付けられるような感じはしたけど、今はそれを気にしている場合じゃない。

 フクが来たということは、状況が何か変わったという事だ。

 蔵の問題も早く解決してほしい。


「何か進展があったの?」

「まぁな……」


 妙に歯切れの悪いフク……

 私に伝える事を躊躇っているような……


「凛緒、いいか? これから状況は一気に変わる。お前には覚悟があるか?」

「え、覚悟?」

「現実を受け止める覚悟だよ」


 今までは私の事になんて興味がないような、仕事だからと仕方なく相手をしているような、やる気のない目をしていた……

 でも今日は、私を真っ直ぐに見つめてくる……


「現実を受け止めるって……」

「蔵は開くぞ」

「えっ!」

「だが、お前は苦しむ事になる」

「な、何故?」

「それが嫌なら、ずっとここに監禁されているといい」

「話が見えないのだけれど?」


 何故蔵が開く事で、私が苦しむ事になるのかしら?

 スノーフレークで働かせてもらえたりと、これだけ自由に過ごさせてもらっているのに、監禁されているだなんて……

 フクは一体、何を言いたいのだろう?


「その場に見えているものだけを見ていては、見えていなかったものが明るみになった時、必ず驚く」

「え、えぇ……」

「お前は、裏側を何も知らないんだ」

「裏側……?」

「それを知る覚悟をしろ」

「……それを知ると、私は苦しむの?」

「まぁ、そうだろうな。だが、そこからどう行動するのかは、お前次第だ」


 フクは真剣な表情で私を見てくれている。

 私が苦しむ事になるという心配をしてくれているようだけど、その視線からは優しさは感じない。

 最初から苦しむ覚悟をさせる気しかないような、厳しさがある……


「わ、分かったわ」

「本当に、いいんだな?」

「えぇ」


 何がどう変わるのかというのは分からないけど、私は苦しむ覚悟をしなければいけないんだ……

 少し恐怖はある。

 でも、怯えていては何も変わらない。

 そんなのは、私の憧れる奏海さんからは程遠い行動だ。


「よし、ならお前に頼みがある」

「な、なに?」


 いよいよ私自身で立ち向かわなければいけないのかと身構えていると、


「携帯を、預からせてほしい」


と、フクはいってきた……


「え? 携帯?」

「あぁ……」

「いいけど、叔父様と連絡が取れなくなってしまうわ」

「そうだな。だから無理にとは言わない。あくまでもお前の判断に任せる」


 覚悟を決めろだの、私の判断だの……

 今日のフクは何処か違う感じがする……

 あんな上から目線で何でも勝手に決めてしまう人だったのに?


「フクは、私の携帯を預かりたいのよね?」

「あぁ」

「最初に携帯を奪ったりしないって言ってなかった?」

「だから確認してるんだろ」

「まぁいいわ。はい、どうぞ」

「いいのか?」

「私の依頼解決のために必要なんでしょ?」

「なら遠慮なく、預からせてもらう」


 私が携帯を差し出すと、フクは受け取ろうとはせず、閉じ口のついた透明の袋を出してきた。


「ここに入れてくれ」

「……分かったわ」


 何か証拠品でもとられたような気分だけれど、それを指摘する必要はないように思う。


「一応、早ければ3日くらいで返せるはずだから」

「意外と早いのね」

「早ければ、だぞ? 遅けりゃ1年以上……」

「そんなに遅いの?」

「……出来るだけ、早く返す」

「期待してるわ」


 一体何に使うつもりなのか……

 まぁ、それを気にしていてもしょうがないか。


「それで、私は何をすればいいの?」

「あ? 今まで通りでいいさ。エリンと一緒に、スノーフレークで適当に働いてろ」

「何よそれ……」

「じゃあな」


 少ししおらしかったかと思えばそうでもなかった。

 それに、覚悟をしろだなんて言っておいて、今まで通りでいいだなんて……


 何かが変わるという事は間違いない。

 でもそれはまだ私が関わる事ではないのでしょう。

 私が下手に動いて、フクの邪魔になってしまう訳にはいかない。

 私はフクを信じて、解決を待つ事しか出来ないから……


 歯痒さはあるけれど、今日もスノーフレークの仕事を頑張るとしましょうか!

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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