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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編

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210/425

告白

葵視点です。

「葵~、お客さんだよー!」

「今行くわ」

「お、またか」

「今週だけでも何人目だぁ?」


 昼休み、昼食を終えて教室の奥にいた私は、渚に呼ばれて廊下へ出た。

 道中空音達に若干からかわれたけれど、それは無視。


「あ、あの……刀川先輩……」


 出た先で男の子が1人、少し震えながら声をかけてきた。

 先輩って呼んでるし、ネクタイの色からしても1年生だ。


「私に何の用?」

「えっと……その……あの……」

「私も暇ではないのだけれど?」

「それはもちろん! もちろん、存じ上げております!」

「あらそう、で?」

「……す、す、すす、すっ、好きです!」

「ありがとう」


 自意識過剰と言われるかもしれないけど、まぁ告白だろうとは思っていた。

 本当に毎日みたいに誰かしらくるから。


「僕と、お付き合いしていただけませんか?」

「残念だけど、無理ね」

「何故、でしょうか?」

「忙しいから」

「僕、放ったらかしにされても、全然大丈夫です! 刀川先輩のご都合の良い時にさえ連絡していただければ……」

「そういう関係を築きたいとは思わないわ」

「そ、それならせめて、これを……」


 とても綺麗に梱包された、小さな箱。

 きっと私を思い、私のために買ってくれたものなんだろう。

 でも……


「悪いけど、受けとれないわ」

「どうしてですか!」

「贈り物も受け取らない主義なの」

「そ、そんなぁ……」


 落ち込む男の子を見て、少し罪悪感を抱く。

 でもこれは仕方のないことだ。

 敵か味方かも分からない、赤の他人から物をもらうなんていう危ない事をするほど、私の危機管理意識は低くない。


「もう用は済んだわよね? 自分のクラスに戻りなさい」

「……はい」


 肩を落とした男の子は、とぼとぼと歩いていく。

 私にとっては他の人と同じような見慣れた光景だけれど、あの子にとったら、とても勇気をもって来たことになる。

 だからせめて、見えなくなるまでは見送ろう。

 見飽きた光景だとして目を反らすのは、あの子の誠意に応えない対応となってしまうから。


「また受け取らなかったの?」

「当然でしょ」

「受け取らないから、勝手に鞄に捩じ込まれたりするんだよ」

「身に覚えのない荷物があれば、本来の持ち主を特定して、捩じ込み直しに行くから問題ないわ」

「ははっ、あったね。そんな事も」


 あの赤い羊捕獲作戦以降、私がスノーフレークの社員であるという事が世の中に知られた。

 それもただの社員ではなく、社長である奏海にかなり近い社員だという事がバレている。

 もちろん敢えてバラした事ではあるんだけど、その関係で連日誰かしらに何かを言われる事になった。


 さっきのような後輩からの告白だけならまだ可愛いものだ。

 校門の前で話を聞かせてくれと屯しているマスメディア、スノーフレーク及び桜野グループに恨みを持つ人達からの攻撃等、本当に迷惑だった。

 先にこうなる事は校長にも話していたとはいえ、やはりかなりの迷惑をかけてしまったと思う。


 最近は少し落ち着いてきたので、流石に校門前で私を出待ちしている人はいなくなったけど、まだ校内では有名人なままなんだろう。

 だからああいう告白もくる……

 先輩、後輩、職員、男性、女性に関係なく、ここ最近だけでも沢山の人に告白をされた。

 本当に申し訳ないとは思うけど、正直うんざりだ……


「はぁ……奏海も、こんな気持ちなのかしら?」

「あ? 何が?」

「空音が毎日告白してた頃の話。奏海もうんざりだと思ってたのかってね」

「なっ! バカ! 奏海がそんな事思う訳ねぇだろ! 俺の告白だぞ!」

「沢山の人じゃないんだから、確かに思わないかもしれないけど、毎日は鬱陶しいでしょ?」

「だ、だから、最近はもう、毎日は言ってないだろ……」

「じゃあ最近言ったのいつ?」

「き、昨日……電話で」

「やっぱり言ってるんじゃない。で、反応は?」

「無言で切られた」

「でしょうね。やっぱりうんざりなのかもね」

「まじか……」


 空音は頭を手で押さえて、落ち込んでいるような姿勢をしている。

 でも、実際にはそこまで落ち込んではいない。

 奏海が空音の事を好きなのは間違いないから。


 本当に早くくっつけばいいと思うのに、奏海も頑なだから……と、思っていると、


「刀川、すまないが職員室に来てくれないか? 君にお客様がみえているんだ」


と、先生に声をかけられた。

 先生のこの雰囲気……そういう事ね。


 全く、紅葉も面倒事を押し付けてくれるものだ。

 今まで何人にも言ってきた通り、私は暇ではないというのに……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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