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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編

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202/425

ファンサービス

副社長視点です。

「失礼します。これ、お願いしますね」

「おう」

「あとこっちも」

「おー」

「それからここに、これとあれと……」

「多くね?」

「昨日副社長がいなかったのが、ここに響いてるんですよ」

「ったく……」


 スノーフレークでいつも通りに仕事をしていると、今日はいつも以上に紅葉が仕事を持ってきた。

 いなかったからって言われても、昨日だって俺は仕事をしていたんだが……


「そういえば、財前家の方は放っておいていいんですか?」

「あぁ、ほかっとけ」

「ずっと外に副社長を出待ちしてるファンの方がみえるんですけど?」

「俺は塩対応で有名だからな、ファンサービスなんてしないんだ」

「そうですか」


 見張りだなんてご苦労な事だ。

 俺はこのスノーフレーク本社から出ない生活をしているんだから、どれだけ待ったところで俺と会えるなんて事はないのにな。

 可哀想にすら思える。


「それより、凛緒はどうだ?」

「どう、とは?」

「働きぶりだよ」

「んー、正直やる気だけって感じですね。今、2件お願いしていたんですが、どちらも手応えなしです」

「3件目は?」

「指輪探しですね。どう思います?」

「まぁ、見るけるだろうな」

「なるほど?」


 手応えなしの奴に何度もチャンスを与えるほど、紅葉は優しくはない。

 こいつは切り捨てると判断したら、情け容赦のない奴だからな。

 つまり、この探し物を見つけられなけば、凛緒のスノーフレークで働きたいという道は絶たれる事になる。


「お前は?」

「ちょっと厳しいと思いますが、おそらく見つけていただけると思ってますよ」

「そうか……根拠は?」

「んー、直感としか言えませんね。あの方、おそらくですが……」


ガチャ!


「あら、紅葉」

「奏海! おかえりー」

「お前、帰ってきたならこれやれよ」

「何で私が?」

「もとはお前の仕事だろ!」


 紅葉と話していると、奏海が帰ってきた。

 今日は別件の仕事があったはずだが、早めに終わったみたいだな。


「葵は? 一緒じゃなかったの?」

「休暇にしといた」

「ふーん。最近皆に休みとらせるの、好きみたいだね」

「紅葉も休みたいの?」

「私は結構休んでるから」

「それ、皆言うんだけど……?」


 だろうな……

 誰もろくに休んじゃいねぇが、こいつ等はそういう奴等だからな。


「私より副社長を休みにしてあげたら?」

「紅葉?」

「馬鹿言うな」

「ごめん、ごめん。冗談だって」

「まぁいいわ。それより、外のあれは何?」

「あー、ほらあの財前のだよ」

「いつまで放っておくつもり? 目障りなんだけど」

「あっちが動くまではほっとくぞ」

「やめてよ」


 なんだかんだ言いつつも、奏海は自分の机に着いて書類を見始めた。

 お蔭で俺の仕事量も減っていく。

 もともとが奏海の仕事なんだから、ありがたいとも思わんが。


「そういえば奏海。凛緒はお前のファンらしいぞ」

「ふーん」

「もうちょっと反応してあげなよ」

「ファンサービスの仕方が分からないから。それは私に出来ない事ね。私に出来ない事は、あなた達がやってくれるでしょ?」

「そうだね。でも、覚える努力はしてほしいな」

「そこにメリットは?」

「多分だけど、優秀な人材が増える」

「……なら、一応考えておく」


 今の紅葉の発言……やっぱりな。

 凛緒の事、紅葉も気付いているんだろう。


ガチャ!


「奏海ちゃーん!」

「乃々香!」


 3人で静かに落ち着いていたというのに、急に1人のガキが部屋に入ってきた。

 こいつは外の奴等の見張りをしていたはずなんだが……

 久しぶりに奏海を見た事で、嬉しくなって仕事放棄してきたな……


「乃々香、仕事は?」

「えへへ~」

「乃々香、仕事」

「わー、聞こえなーい」

「はぁ、じゃあ仕方ないから私が乃々香の代わりにいってくる」

「えー」

「嫌なら仕事に戻って」

「はーい」


 素直に戻って行ったか。

 本当に騒々しい奴だ。


「ファンサービスを覚えれば、今のにも対応出来るよ!」

「じゃあ早急に覚える事にする」

「では私が講師を」

「お願いするわ」


 下らん茶番劇を繰り広げつつも奏海は仕事を減らしていく。

 右手で書類を書きながら、左手はキーボードで文字入力。

 そして視線は別の書類で、紅葉と会話までしている……

 いつもの事だが、こいつの目はどこをどう見てるんだろうな?

 

 見てると言えば凛緒もか……

 今頃凛緒は、指輪を見つけられているだろうか……?

 まぁ、問題はないだろうが。

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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