休息
凛緒視点です。
洗面所にキッチンと、共に30分づつ探してみたけれど、指輪は出てこなかった。
そう簡単に見つかるとは思っていなかったけど、もう2時間探していることになるので、流石に焦ってくる。
……お腹、空いてきたな……
時計をみると15時だ……
よくよく考えたら、お昼ご飯を食べていなかった。
依頼を失敗した事で落ち込んで、食欲がなかったというのもあるけど。
「エリ、少し休憩して、食事にしましょう?」
「そうだね」
「申し訳ございませんが、少し抜けますね」
「はい。ありがとうございます」
依頼人の女性に断りを入れてから、一度家を出させてもらった。
「エリ、ごめん……もっと早くにご飯の事も言うべきだったのに……」
「私の事は気にしなくていいんだよ」
エリンさんは私に合わせてくれていたから、エリンさんだって何も食べていない。
それなのに何も言わないで……
「エリは何が食べたい?」
「なんでもいいよー」
「じゃあ、コンビニとかでもいいかしら?」
「私はいいけど、凛緒ちゃんはそれでいいの?」
「えぇ。一度行ってみたいと思っていたの」
皆が当たり前に出来る事が、私には出来ない。
1人で生きていけるだけの生活力はある方だと思っていたけど、社会への適正能力はなかった。
経験が足りていないから失敗するのならば、何事も経験あるのみだ。
誰もが一度は行った事のあるコンビニにだって、まだ行った事がないし、こういう小さな事からでも初めてに挑戦していこうと思う。
「ここがコンビニだよー」
「コンビニおにぎりを食べてみたいわ」
「なら、こっち」
エリンさんに案内してもらって、コンビニおにぎりの前まできた。
結構色んな種類があるのね……どれにするか、迷ってしまうわ……
「細巻きタイプもあるし、サンドイッチとかもあるからね。レンジで温めると完成するスープとかも、結構クオリティが高くて美味しいよ」
「そうなのね」
エリンさんはホテルに閉じ込められているような感じだから、コンビニには来たことがないかと思っていたけど、意外と詳しいみたいだ。
「これにするわ」
「うん。私は納豆の細巻きにする」
「エリ、納豆とか好きなのね」
「ふふっ、好きじゃないよ。日本に来て初めて食べた時、日本人って頭おかしいと思ったくらい」
「え、じゃあ、どうして?」
「あの人が、好きだから……かな? じゃあお会計してくるねー!」
エリンさんは少し照れたように笑いながら、私の買おうとしていた梅とおかかのおにぎりも一緒に持って、レジへと行ってしまった。
あの人っていうのはきっと、あの支配人の事なんだろうな……
近くにあった外のベンチに座って、初めてのコンビニおにぎりを食べる……
無理に三角形になっているし、もっとご飯も硬いものなんだろうと勝手に思っていたけれど、全然そんな事はなかった。
やっぱり何事も経験だ。
「うぅ……やっぱり凄いにおい……ねばねば……」
「そう思うのなら、違うのにすればよかったじゃない」
「たくさん食べていれば、いつかは慣れるかなって……」
「支配人が納豆好きだからって、何も自分まで好きにならなくても」
「えっ! あ、うん……」
照れてるエリンさん……
普通に可愛いな。
「凛緒ちゃんにはいる? 相手が望んでいないと分かっていてでも、追いかけてしまいたくなるような人……」
「いないわね。だから、羨ましいわ」
「そう……」
私を真っ直ぐに見つめながら、エリンさんはそうとだけ呟いていたけど、何を思っていたんだろう?
読んでいただきありがとうございます(*^^*)




