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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode1 赤い羊捕獲編

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20/425

20 1-20 油断

赤い羊視点です。

 俺は盗っ人君に連絡を送った。


「何、アイツ……あなたの手下?」

「そうですよ。ですが彼は我々の事を知りませんから。ご安心下さい」


 約束通り、盗っ人君は聖人ちゃんに絡み始め、モテ男君に投げ飛ばされた。

 モテ男君の体育の成績がいいのは知っていたが、これほど強いとは思ってなかったな……


♪♪♪♪♪


 隣で携帯がなった。


「空音? どうしたの?」


 モテ男君が、あの盗っ人君を仕掛けたのは依頼人だと思ったようで、電話をしてきたみたいだ。

 スピーカーにしている訳では無いにもかかわらず、携帯からは怒鳴り声が聞こえ、スコープから見えるモテ男君は、相当興奮しているようだった。


 守れたことに安堵するかと思っていたが、ここまで周りが見えなくなるタイプとは……

 まぁ、ちらにしろ、モテ男君は予定通りにウロウロしなくなり、聖人ちゃんと被らなくなったので問題ない。


 サヨナラ、聖人ちゃん。


 心の中でそう呟き、俺は引き金を引いた。


バーンッ!


 赤い液体を飛び散らせ、倒れる聖人ちゃんをスコープ越しに確認。


「ねぇ、空音。何の事だかわからないわ」


 隣には、双眼鏡で今の光景を見ながら口元を緩ませ、電話をする依頼人。

 そして依頼人の携帯からは、先ほどの怒鳴り声よりも大きな悲鳴が聞こえていた。

 モテ男君は携帯を落とし、血溜まりの中で聖人ちゃんを抱いて泣き叫んでいる。

 依頼人の携帯はまだ通話中のようだが、そこからこちらの声がモテ男君に聞こえる事は無いだろう。


「終わりましたよ」

「えぇ、そうね。ありがとう」 


 嬉しそうに感謝の言葉を口にする依頼人。

 俺は仕事完了の達成感と共に、後片付けを始めようとした、その刹那……


ドガッ! 


「がはっ!」


ドサッ……


 猛烈な痛みと共に、自分の体が浮いているような感覚に襲われ、気がついた時には壁にぶち当たり、空を仰いでいた。

 何が起きたのか分からない……

 動かない体で辛うじて確認できるのは、こっちに歩いてくる依頼人だけ……

 自分が依頼人に蹴り飛ばされたのだと分かるまで、時間がかかった。


「不意討ちが卑怯なのは分かってるわ。でも、油断大敵って事で……ごめんなさいね?」


 追い付かない思考回路。

 痛みで動かない体。

 何を言うべきなのか、何をするべきなのか、何も分からない……


 そんな俺に対し、今この状況の全てが分かっている依頼人は、着々と行動に移っていた。


「どういうことだっ!」


 やっと発せた言語はそれだけ……

 すでに俺は縛れていた。

 もちろん依頼人が縄等を持っていたら俺は気付いていたが、コイツは自分が着ていた上着を使い、俺を縛ったんだ。

 流石に上着の素材が、こんなにも伸縮性のいいものだとは思わなかった。


 そして警察のサイレンの音も近づいて来ているこの状況。

 何もかも理解できなかった。

 何故俺が裏切られたのか……いや、そもそも裏切られたのか?

 元からこの依頼自体が警察の囮捜査だったのか?

 俺は確かに聖人ちゃんを撃ったのに……?


 だが、不敵に笑いながらこちらに歩いてくる聖人ちゃんを見た時、やっと全てを理解する事が出来た。

 俺は、負けたんだと……

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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