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スノーフレーク  作者: 猫人鳥
episode7 開かずの蔵と記憶編

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企業理念

凛緒視点です。

 草むしりに買い物と、依頼を2つとも失敗してしまった……

 全然立ち直れなくて、近くの公園のベンチで座る私に、エリンさんが冷たいお茶を買ってきてくれた。


「お疲れ、凛緒ちゃん……」

「……エリンさん。私、この仕事に向いていないのかしら……?」

「そんなことは……いえ、そうかもしれませんね……」


 流石のエリンさんでも、こんな私を励ます言葉はもう思いつかないみたい……と、思っていると、


「でも私も、この仕事には向いていないんですよ?」


と、エリンさんは苦笑を浮かべた。


「向いてないって……でもエリンさんは、スノーフレークで働いているじゃない?」

「えぇ。でも、あのホテルだけです。草は根っこから抜かないといけないなんて知りませんでしたし、野菜を見分けた事もありません」

「そうなのね……」


 私にやらせるために、敢えて何も言わずに見守ってくれているのだと思っていたけど、そういう訳ではなかったみたいだ。

 エリンさんも本当に何も知らなかったんだ。

 昨日言っていた、"このホテル以外の仕事は出来ません"というのは、謙遜でもなんでもなく、ただの事実だったという事ね……


「誰しも、仕事の得意不得意というものはあるものです」

「それは、そうだけど……」

「まだ凛緒様に合った仕事が見つかっていないだけですよ?」

「私に合った仕事なんてあるのかしら……」


 自分がどんどん卑屈になっていく……


「凛緒様は、スノーフレークの企業理念というものをご存知ですか?」

「企業理念? いいえ、聞いたことがないわ」

「ふふっ、スノーフレークの企業理念はですね、"出来ない事はやらなくていい"なんですよ?」

「えっ……」


 なに、それ……

 出来ない事はやらなくていいって、なんでもやると豪語している何でも屋としては、あり得ない企業理念なんじゃないかしら?


「おかしいでしょう? でも本当なんです」

「そんな事を企業理念にしていては、企業として成り立たないわ」

「はい。だから、続きがあります」

「続き?」

「"出来ない事はやらなくていい。だから、自分に出来る事をやれ!"というものです」

「出来る事を……」


 草むしりと買い物は、私には出来ない事だった。

 何より、やった事がなかったのだから。

 やった事もないことを自信過剰にやれると思い込み、その結果として出来なかった……

 スノーフレークでいうところの、やらなくてもいい出来ない事に手を出してしまっていたんだ……


「これは、奏海さんが仰った言葉から作られた企業理念だそうです。正確に言うと、奏海さんが仰ったのは、"あなた達に出来ない事は私がやる。だから、私に出来ない事を皆がやって!"ということらしいです」

「言ってる事が無茶苦茶ね……」


 出来ない事をやると言っておきながら、自分の出来ない事をやらせようだなんて……

 出来ない事がないから、皆の出来ない事をやると言っている訳ではないのでしょうし、皆が自分の不足を補ってくれると信じているからこその発言ね……

 本当に凄い人だわ。

 奏海さんも、奏海さんにそう言わさせる皆という人達も……


♪♪♪♪♪


 携帯がなった。

 四之宮主任からだ……


「はい」

「お疲れ様です。報告は受けました」

「本当に、申し訳ございませんでした……」

「いえいえ、初めてですものね。大丈夫ですよ」


 そう、初めてなんだ……

 初めてやる事に対して、もっと警戒するべきだった……


「これから、どうされますか? まだお仕事のお手伝いをされますか?」


 こんな私を、まだ見捨てないで下さるんだ……


「……はい、是非お願いします。でも、今度はもう一度、ちゃんと仕事を選ばせてもらってもいいですか? 自分に出来る仕事をやりたいんです!」

「分かりました! と、言いたいところなのですが、申し訳ございません。凛緒さんにお願い出来る依頼は、1つしか残っておりません」

「そ、そうなんですね……」

「最初にお選びいただけなかった、紛失物捜索の依頼です」


 時間がかかりそうだからと、私が省いた……


「どうされますか?」


 探しものをしたことがない訳じゃない。

 ただ、見つけられないかもしれないという、失敗するリスクの高い依頼だ。

 私に、出来るだろうか……?


「……やります! やらせて下さい!」

「はい! では、手続きをしておきますので、張り切ってお願いしますね!」

「ありがとうございます!」


 エリンさんも笑ってくれている。

 私も、私に合った仕事をみつけないと!

 

読んでいただきありがとうございます(*^^*)

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